江戸川第一下水処理場は

 2000億円もかけて建設する必要はない

   〜江戸川第一下水処理場建設計画の見直しを求める要望書〜



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 江戸川左岸流域下水道・第一終末処理場は三番瀬埋め立て予定地に計画されていました。しかし、埋め立て計画が白紙撤回になったため、当初の予定地である市川市本行徳の石垣場・東浜地区に建設する方向で検討が進められています。

 県はこの地区を1973年に第一下水処理場予定地として都市計画決定して以降、30年も放置してきました。都市計画の網がかかり土地利用が制限されたままなので、地権者は適切な土地利用を図ることができません。そのため、「行徳富士」とよばれる大量の残土が不法に積み上げられたりしています。砂ぼこりや排水不良などで、周辺住民も苦難を強いられてきました。こうした状態を一日も早く改善してほしいというのが、周辺住民の願いでもあります。
 県はこうした周辺住民の願いを逆手にとって、2000億円もかかる下水処理場をなんとしてでも建設したい構えです。そのウラには、莫大な公共事業費に群がるゼネコンなどの強い意向があるとも言われています。

 しかし、この大規模下水処理場はつくる必要のない施設です。既設の第二処理場を機能アップすれば、第一処理場は必要ありません。また、県や関係市の財政破たんに拍車をかけるものです。水循環にも逆行します。

 こうしたことから、千葉県自然保護連合や千葉の干潟を守る会など4団体は9月24日、江戸川第一下水処理場建設計画の見直しを求める要望書を県に提出しました。


 

要望書



2003年9月24日

 千葉県知事 堂本暁子 様

千葉の干潟を守る会 代表 大浜  清
千葉県自然保護連合 代表 牛野くみ子
三番瀬を守る会 会長 田久保晴孝
三番瀬を守る署名ネットワーク 代 表 竹内壮一


江戸川第一下水処理場建設計画の見直しを求める要望書

 三番瀬埋め立て計画の白紙撤回にともない、江戸川左岸流域下水道・第一終末処理場の建設は、当初の予定地である市川市本行徳の石垣場・東浜地区で検討が進められています。しかし、ここに大規模下水処理場を建設することは、財政面や水循環、防災面などからみて大きな問題がありますので、さらなる検討を求めます。


 ●既設の第二処理場を機能アップすれば第一処理場は不要

 江戸川左岸流域下水道は、野田市、流山市、松戸市、鎌ヶ谷市、市川市、船橋市、柏市、浦安市の8市の下水をまとめて処理するものです。全体計画の処理対象面積は210平方キロメートル、幹線管渠の総延長は116キロメートルにもおよびます。
 この計画はもともと過大であることが指摘されており、三番瀬埋め立て計画の規模縮小にあわせ、計画人口は175万人から143万人に、一人あたりの一日最大処理水量は720リットルから480リットルに下方修正されました。
 しかし、この修正でもまだ過大な予測と考えられます。その理由は次のとおりです〈注〉
  1. 計画人口は143万人となっていますが、下水道法による事業認可区域の計画処理は約90万人であり、これに認可区域から除かれている人口集中地域を加えても合計約100万人にしかなりません。
  2. 一人あたりの一日最大処理水量は480リットルとなっていますが、過去の実績からいえば 370リットルで十分であり、将来の余裕をみても420リットルでいいのではないでしょうか。
  3. この420リットルに100万人を乗じると、一日あたりの処理水量は42万立方メートルとなります。これに対し、現在稼働中の第二処理場の将来の最大処理能力は一日あたり46.4万立方メートルです。
  4. 処理施設を二階式や深層ばっき式にするなどのコンパクト化をはかれば、現計画以上の処理能力が可能になり、さらに下水処理技術の革新が進めば(包括固定微生物処理法、膜濾過処理など)、敷地面積を有効に活用できると考えられます。
 つまり、第一処理場そのものの建設が不要となっているのです。



  〈注〉2000年7月開催「三番瀬を守るシンポジウム」における和波一夫氏(東京の水を考える会)
     の講演「流域下水道の問題点」より。



●水循環の視点から下水道計画の根本的見直しを

 21世紀は水危機の時代と言われています。関宿から延々60キロメートルも管渠を通して市川の埋め立て地に持ってくるということは、管渠という名の新たな大河川をつくることになり、既存河川の水量を減少させます。
 このように、大切な水を一度使っただけで海に流してしまっていいものでしょうか。下水といえども貴重な水資源です。きれいに処理して、くりかえし利用することが求められています。私たちはこうした視点から、下水処理場は内陸部に分散して設置すべきと再三にわたって県に要望しました。この要望に対し、かつて県は次のように答えました。
 「処理場を内陸部につくって処理水を河川に放流すれば、上水道に処理水が入ってしまう。皆さんは下水が入った水を飲むのですか」
 これは県民をバカにした回答としか言いようがありません。なぜなら、すでに群馬県、埼玉県、茨城県が下水処理水を利根川に放流しており、その水を千葉県民が飲んでいるからです。私たちは自分が出した水を飲むということに心して、捨てることに気を配りたいものです。水はそんなに豊富ではないのです。
 ちなみに2001年6月、野田市の根本市長が「市南部を流れる利根運河の水質改善のために、運河上流域に下水処理場をつくてほしい。周辺には休耕田が多くあるので、用地は確保できる」と県に提案しました。このことは、水循環の観点から、処理場を内陸部に分散して設置し、処理水を河川にもどすということが現実的な課題になっていることを示しています。地域で発生したものは地域にもどす。こういった地域の実情にあった方法を探るということが、いま求められているのです。
 県は現在、印旛沼流域下水道の花見川第二終末処理場の処理水を延々24キロメートルにわたってポンプアップし、市川市内の大柏川や船橋市内の海老川上流に還元するという工事をすすめています。その理由は、流域下水道の整備にともない、海老川などの水量が減少し水質が悪化しているからです。下水処理場の処理水を莫大な金をかけてポンプアップするなどというムダづかいはやめて欲しいものです。最初から内陸部に処理場を分散してつくるべきです。
 さらに、(1)人口密度の低いところでは各戸に合併浄化槽を設置する、(2)将来は廃止することになっている既設の下水処理場(市川市の菅野処理場など)を改修し存続させる、(3)江戸川左岸・印旛沼・手賀沼の3つの流域下水道の連絡幹線を整備・利用して一部区域の下水をほかの終末処理場で処理する、などの合理的な方策を講じるようにすれば、費用も安く、整備の期間も短縮できます〈注〉。また、里山や森、水田(休耕田)、小川、湿地などがもっている浄化力を活かし、これらと組み合わせた下水道づくりを進めて欲しいものです。




  〈注〉これらの方策についてくわしくは、私たちが2000年4月21日に千葉県知事に
     提出した「三番瀬埋め立てにかかわる江戸川左岸流域下水道計画についての
     質問及び要望」(添付資料)をご覧ください。



●財政面や防災面からみても見直しが必要

 阪神・淡路大震災のときのことを思い出してください。この大震災では、神戸市の下水処理場が大きな被害を受けました。そのため、直接被害を受けなかった地域でもトイレが使えず困ったという話を聞いています。このことは局部的被害が全体におよぼす影響を物語っています。防災面から見ても処理場の分散が必要なのです。
 さらに、江戸川左岸流域下水道計画は、面整備率が50%にも達していないにもかかわらず、すでに2400億円の事業費を費やしています。その後見直しがされて全体事業費は3820億円となりました。大規模処理場を本行徳に建設すれば、事業費はさらに大きくふくらみます。関係者の試算では、この第一処理場の建設は約2000億円もかかるとのことです。
 いま、関係市は流域下水道に巨額の負担金を支出させられ、財政圧迫の一因になっています。また、国も県も、財政は破産寸前の状態です。大規模下水処理場を新たに建設することは、こうした傾向に拍車をかけることになります。
 このような理由から、私たちは第一下水処理場の建設や流域下水道計画の抜本的見直しを求めます。


●予定地はただちに環境保全策を講じるべきです

 第一終末処理場予定地ではいま、48ヘクタール全域を対象に土地利用の検討がおこなわれています。
 県はこの区域を1973年に第一下水処理場予定地として都市計画決定して以降、30年も放置してきました。都市計画の網がかかり土地利用が制限されたままなので、地権者は適切な土地利用を図ることができません。そのため、大量の残土が不法に積み上げられたりしています。砂ぼこりや排水不良などで、周辺住民も苦難を強いられてきました。
 県は、こうした放置を反省し、ただちに環境保全策を講じるべきです。それは、第一処理場建設の検討ときりはなしておこなうべきです。
以上

















稼働中の江戸川左岸流域下水道第二終末処理場。現行の流域下水道計画は過大であり、これを見直すとともに、第二処理場の技術革新や節水対策などを講ずれば、大規模下水処理場の新設は不要である。








都市計画決定されている第一下水処理場の予定地。県はここを1973年に第一下水処理場予定地として都市計画決定して以降、30年も放置してきた。都市計画の網がかかり土地利用が制限されたままなので、地権者は適切な土地利用を図ることができない。そのため、「行徳富士」(写真右側の山)とよばれる大量の残土が不法に積み上げられたりしている。砂ぼこりや排水不良などで、周辺住民も苦難を強いられてきた。
 県は、第一処理場建設の検討ときりはなし、ただちに環境保全策を講じるべきである。









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