コククジラの東京湾回遊と三番瀬

〜環境は改善に向かっている〜

千葉県自然保護連合事務局



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 東京湾を何日間も回遊して人気を集めたコククジラは、(2005年)5月11日、千葉県の富山町沖で定置網にかかって死にました。


●クジラ回遊が示す漁業復興の兆し

 このコククジラの東京湾回遊では、『日本経済新聞』(5月12日)のコラム「海ほたる」が印象的でした。コラムの見出しは「鯨が示す漁業復興の兆し」です。こう記しています。
     「東京湾を回遊し、連休中から大勢の見物客を楽しませたコククジラが気の毒なことに死んでしまった。『江戸東京湾くじらと散歩』などの著書がある推算総合研究センター理事(前水産庁漁場資源課長)小松正之さんによると『定置網に絡まり、5分も浮き上がれないでいると窒息してしまう』のだという」
     「東京湾にクジラが迷い込んでくるのは珍しいが『コククジラがエサを探す沿岸域の水質が悪ければ、迷い込みもしない』(小松さん)ので漁業復興のためにはよい兆しか」
 そのとおりだと思います。環境省の調査でも、近年は、東京湾の水質は改善傾向にあると言われています。
 東京湾の奥部に残された貴重な干潟・浅瀬「三番瀬」も、環境や漁業資源が改善傾向にあるようです。その事例を3つあげます


●アサリの豊漁

 ひとつは、アサリの豊漁です。三番瀬は2003年、アサリの豊漁に沸きました。新聞も次のように報じています。
     「漁場の環境悪化が指摘される船橋市沖の三番瀬で、十数年ぶりといわれるほどのアサリの豊漁が続いている。船橋漁港では18日早朝も、大量のアサリが次々に荷揚げされていた」(『東京新聞』2003.9.19)
     「東京湾・三番瀬でアサリが大発生し、船橋市漁協をはじめ、市川、浦安各市の漁協は、8月に入ってから連日約40−50トンの水揚げを続けるなど、十数年ぶりの豊漁にわいている」
     「三番瀬では稚貝放流はしておらず、大発生の原因について漁協幹部は『全くわからない。豊かな自然の力としか言いようがない』と首をひねっている」(『読売新聞』2003.9.22)


●カキも大繁殖
  〜三番瀬の豊かさを再確認〜

 今年の三番瀬は、天然のカキも大繁殖しています。
     「船橋市沖の浅瀬、『三番瀬』で、天然のカキが大量に増殖し、漁業関係者を驚かせている。砂利交じりの海底に、びっしりとすき間なく並ぶほどで、付近の漁業権を持つ船橋市漁協(岩田常雄組合長)は8日、漁獲の対象となるかを探るため、資源調査を始めた」
     「海底を埋め尽くすほどの増殖ぶりに、同漁協専務の石井隆さん(73)が『漁獲の対象にできるかどうか確かめたい』と、生息場所一帯を調べて回り、サンプルを採取した」
     「調査にあたった石井さんは、『もったいないほど繁殖している。漁獲の対象にしても出荷ルートの確保が難しいが、三番瀬の豊かさを再確認できた』と話していた」(『読売新聞』2005.4.9)
     「三番瀬と言えばノリ、アサリ、ボラ。ところが今年は純天然ガキがよく採れるらしい。『漁師も驚いている』という」
     「長年、海底で盛衰を繰り返し海水を浄化してきた純天然ガキ。『海は裕福。捨てたものじゃないよ』と石井理事は言った」(『朝日新聞』、同)〈注〉

〈注〉『読売新聞』と『朝日新聞』がとりあげている「天然ガキ大繁殖」は三番瀬の船橋側海域です。猫実川河口域(市川側)に広がる約5000平方メートルのカキ礁ではありません。


●新種のゴカイも発見
  〜東京湾はまだまだ生命満ちている〜

 さらに、三番瀬では昨年、92年ぶりに新種のゴカイも発見されました。
 昨年4月21日の『東京新聞』(夕刊)は、「東京湾まだまだ生命満ちている/三番瀬に新種ゴカイ」という見出しをつけて、こう報じています。
     「東京湾最奥部の浅瀬・干潟の三番瀬で、ゴカイの新種が発見された。西栄二郎横浜国立大助教授が仏、韓国の専門家と共同研究で新種と確認、和名を『サンバンゼツバサゴカイ』と付けた。西助教授によると、東京湾奥部でのゴカイの新種は、1912年に品川沖で確認されて以来という」  「西助教授は『東京湾にもまだ知られていない生物がいること、干潟に生物多様性が残されていることをアピールするきっかけになるのではないか』と話している」


●1985年以降、埋め立てのないことが三番瀬の環境を良くしている

 以上の出来事をみれば、東京湾や三番瀬の環境が改善に向かっていることがわかるでしょう。それは、環境悪化の最大の原因であった埋め立てが、最近はあまり進んでいないことと関係あると思います。
 たとえば、三番瀬は、1985年以降は埋め立てがまったくありません。これが、三番瀬の環境を改善に向かわせているのです。


●「再生」という名で大規模改変の動きも

 しかし一方で、「三番瀬の環境は、放っておけば今後さらに悪化する」という危機感が煽(あお)られ、猫実川河口域に土砂を入れて人工干潟をつくるべきという主張が声高にさけばれています。そのうたい文句は、「再生」や「環境保全開発」などです。
 そこでは、アサリ豊漁や天然カキの大繁殖、新種ゴカイの発見、さらには、三番瀬市民調査で確認されている猫実川河口域の自然の豊かさなどはまったく無視です。
 東京湾や三番瀬の現状をどうみるのか、そして、今なにが必要なのかをきちんと検討し、保全のあり方を積極的に提起していくことが必要だと思います。そうでないと、「自然再生」などの名によって大規模な改変が再開され、改善に向かっている環境が再び悪くなります。

(2005年5月)






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