千葉県環境会議にたいし、
三番瀬埋め立て計画案の審議に関する要請書
〜県内の5団体〜
東京湾奥部に残る貴重な干潟・浅瀬「三番瀬」の一部を埋め立てる計画に反対している千葉県内の5団体は(2001年)1月25日、埋め立て計画案を審議中の千葉県環境会議に対して、埋め立て計画案の審議に関する要請書を提出しました。
今回の要請書は、90ヘクタール埋め立て地の先に計画されている人工海浜(13.2ヘクタール)に関するものです。
5団体による要請書 |
2001年1月25日
千葉県環境会議
委員長 林雄二郎 様
各 委 員 様
千葉の干潟を守る会
三番瀬を守る署名ネットワーク
三番瀬を守る会
市川緑の市民フォーラム
千葉県自然保護連合
三番瀬埋め立て計画案の審議に関する要請書
日ごろ、千葉県の環境保全に関してご尽力いただいていることに感謝申し上げます。
下記の点について、さらに検討を深めてくださるようお願いします。
貴委員会による審議は、三番瀬のみならず、全国の干潟・浅瀬の保全、ひいては自治体の環境行政に重大な影響を与えると思われますので、諸問題を多角的、かつ慎重に審議してくださるようよろしくお願いします。
記
人工海浜造成の問題点について
三番瀬の埋め立て計画の縮小案には、埋め立て地先に13.2haの人工海浜の造成が盛り込まれている。この計画案についての問題点を指摘したい。
1.造成そのものが自然破壊
自然に似せて造った人工海浜であっても、浅瀬・干潟を埋め立てて造成することは、自然を破壊することであり、三番瀬の多様な生態系を損なうことは明らかである。補足調査の結果も、市川側の浅瀬は泥質ながら魚類の生育のための重要な場所と結論づけられている。そこに人工海浜を造成するという計画を立案すること自体、補足調査の結論を無視するものであり、暴挙と言わざるを得ない。
2.必要性からの計画か?
千葉県は当初、市川の猫実川河口の海域は澱んだ場所であり、そこを埋め立てても人工干潟をつくることで代償措置となる、と主張していた。しかし、補足調査の結果は、市川側の海域も三番瀬の多様な生態系の一部として重要であると報告し、また名古屋の藤前干潟の問題で環境庁が、人工干潟は技術的には未完成であって代償措置にならないと発表するに及んで「パブリックアクセス」を持ち出してきた。そのような県の姿勢を見ていると、少しでも多く埋め立てることが目的であり、必要性は二の次なのではと思いたくなる。
3.「パブリックアクセス」について
市川の塩浜先では垂直護岸が障壁となって、市民が海に触れられないから人工海浜が必要だと県と市川市は声をそろえて主張しているが、それ以外に市民的利用の方法はないのであろうか。そのための議論を尽くしたのかは疑問である。「市川緑の市民フォーラム」は階段状の親水護岸にすれば水際まで降りられるし、行徳漁協先の旧潮干狩り場を利用すれば海を傷つけることなくアクセスが可能だという代替案を提出している。
4.レジャー海岸一辺倒は短絡的
さらに問題だと思われるのは、「パブリックアクセス」とはレジャー海岸を指すという、これまでと変わらない県の開発志向である。東京湾の奥には稲毛、幕張、葛西と人工海浜がすでに造られているが、維持管理に多額の費用がかかるという共通の問題点を抱えている。幕張は砂の補充に年間2000万円かけていたのを中止にしたし、葛西も同じく砂を補充しなくなったために浜が痩せてきて底からコンクリート塊が露出しているのが現状である。
海に触れ親しむということは、レジャー海岸の利用のみを指すのではない。求められているのは多様性に富んだ豊かな自然の海である。10万羽に及ぶスズガモが飛来する海域は日本の中でも三番瀬だけであり、その自然に触れられることは、三番瀬でしか味わえない市民的利用の特徴ではないだろうか。
5.市川側三番瀬の保全について
塩浜先の垂直護岸が崩壊しかかっていて危険である点については、応急処置が必要であるが、短期的な展望からは階段状の親水護岸として補修するのが望ましい。その理由は海を傷つけることなく、仮に将来的に計画が変更になっても後戻りできる方法だからである。
中長期的に見て、大きな障害になるのは青潮の発生であろう。漁業上の被害も甚大であり、貴重な自然に対しても脅威となっている。その発生源である浚渫跡の埋め戻しは、20世紀の高度成長時代の負の遺産として解決しなければならない。
しかし、悲観的になる必要はない。船橋市、市川市は三番瀬という貴重な財産を抱えているのであり、それをどのように活かしていくかという観点から街づくりを考えればいいのである。その発想の転換が、今迫られている根本的な課題ではないだろうか。
6.環境教育の場としての活用を
日本有数の水鳥の飛来地である現在の三番瀬は、社会教育、環境教育の場として他に類のない貴重なものである。東アジア・太平洋地域においてシギ・チドリ類渡来地ネットワークやガンカモ・ネットワークなどの交流が進んでいるが、三番瀬も青少年が国際交流をしていくための舞台となる可能性を秘めているのである。消費志向のレジャー海岸よりもはるかに重要な役割だと言わざるをえない。
そのためにも、「埋めない」という消極的な姿勢ではなく、積極的に「残した」という歴史を残すことである。それは次世代の地域社会に対する誇りとなり、また実践を伴った環境教育の原点となるであろう。私たちの世代は将来の世代に対しても責任を担っていることを自覚すべきである。
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