〜埋め立てによる「三番瀬の再生」はまやかし〜
千葉県自然保護連合
●三番瀬は“命をはぐくむ海のゆりかご”
ひろびろとした干潟をもつ遠浅の東京湾は、昔から江戸前の魚やノリ、アサリ、イワシ、カレイなどを供給してきたゆたかな海です。その面影をとどめるのが、船橋、市川両市の沖に広がる1200ヘクタールの三番瀬です。
ここは、日本有数のスズガモ、シギ、チドリの飛来地として国際的にも重要な渡り鳥の中継地です。県の補足調査で13万人分の下水処理能力を持つことが明らかにされたように、東京湾の浄化にも大きな役割を果たしています。三番瀬はまた、釣りや潮干狩りなど、市民のレクリェーションや憩いの場としても重要です。
東京湾沿岸で9割の干潟が失われたなか、三番瀬は、貴重な“都会のオアシス”あるいは“命をはぐくむ海のゆりかご”となっているのです。
●「埋め立て白紙撤回」の世論広がる
三番瀬を埋め立てようとしている県は1999年6月、自然破壊や“税金ムダづかい”への反対の世論におされ、埋め立て規模を740ヘクタールから101ヘクタールに大幅縮小しました。縮小案では、市川側は約90ヘクタール埋め立てて下水処理場や再開発用地などを、船橋側は約11ヘクタール埋め立てて港湾施設用地や第二湾岸道路用地などをつくるとしています。
この縮小案についても、自然保護団体などがはげしく反対運動をすすめてきました。そして今年(2001年)1月、川口順子環境大臣が三番瀬を視察し、「埋め立ての必要があるのか疑問がある。計画自体を全面的に考え直すべきだ」と述べ、埋め立て計画に反対する意向を表明しました。
3月の県知事選挙では、三番瀬埋め立てが大きな争点になりました。朝日、読売、毎日の3紙が埋め立てに関する県民世論調査をおこなった結果、いずれも、県民の半数以上が埋め立てに反対か、見直しを求めています。選挙では、埋め立て計画の「白紙撤回」を公約した堂本暁子氏が当選しました。
●環境保全は世界の流れ
堂本知事は「白紙撤回」の意思を貫いていますが、県企業庁は相変わらず埋め立ての必要性を主張しています。また、県議会では、多数を占める自民党が埋め立て推進の立場をとっています。
地元の千葉光行市川市長は、下水処理場や都市再開発用地は必要ないとしたものの、「海の再生」のためには埋め立てが必要としています。市川市は三番瀬のラムサール条約登録を求めていますが、それは、埋め立て計画地以外の海域を登録湿地にすべきというものです。
市川市の行徳、南行徳両漁協も、「漁場環境改善」のためには大規模な埋め立てが必要として、堂本知事に埋め立て推進を要望しています。
藤代孝七船橋市長は、浦安、市川両市と「三番瀬保全再生連絡協議会」を設置したものの、船橋側に計画されている11ヘクタールの埋め立てについては「そのままやってほしい」(毎日、4月25日)と述べ、県の埋め立て計画を支持しています。
また、第二湾岸道路の建設も問題です。この道路が県の計画どおりに高架でつくられれば、大型道路が船橋海浜公園前の頭上を横切ることになり、景観や鳥の飛来、市民の海への親しみなどに大きな影響を与えます。大気汚染や振動、騒音などによる環境破壊も心配です。
こうしたことから、「三番瀬を守る会」や「千葉の干潟を守る会」「三番瀬を守る署名ネットワーク」「千葉県自然保護連合」などの自然保護団体は、「自然は、いったん破壊されたら回復不可能」「環境保全は世界の流れ」「埋め立てによって海域を減らす方向での“再生”ではなく、まず埋め立てをやめ、破壊されたものを元にもどす方向で真の復元・再生を試みるべきだ」との立場から、三番瀬を守るためにひきつづき運動を強めています。船橋側の11ヘクタール埋め立てについても、「大型船が年間に0〜2隻しか入港しないのに、莫大な金を投入して施設をつくるのは税金のムダづかい」「港湾埠頭は余っており、いまある企業専用埠頭をうまく使えばよい」「これは第二湾岸道を前提とした埋め立てだ」などと、批判や反対の声が高まっています。
(2001年5月)
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