環境7団体が

「三番瀬保全への要望」を堂本県知事に提出

〜「三番瀬の自然それ自体の力に依存した保全・復原計画の策定」などを求める〜




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 三番瀬の「埋め立てによらない保全」や後背埋め立て地の湿地復原などを求めて活動している千葉県内の7団体は2001年10月10日、「三番瀬保全への要望」を堂本県知事に提出しました。
 要望書では、101ヘクタールの三番瀬埋め立て計画中止決定に対して賛意を表明するとともに、「ラムサール条約登録湿地をめざし、三番瀬の自然それ自体の力に依存した保全・復原計画の策定」などを求めています。





 

7団体による要望書



2001年10月10日

 千葉県知事 堂本暁子様

千葉の干潟を守る会
三番瀬を守る会
市川三番瀬を守る会
千葉県自然保護連合
市川緑の市民フォーラム
千葉県野鳥の会
三番瀬を守る署名ネットワーク


101ha埋立計画中止決定に対する賛意と三番瀬保全への要望

 9月26日の県議会における「あいさつ」で知事は、三番瀬は東京湾に残された貴重な自然であり、その干潟を守り、そして自然を再生すべきである、と述べたのち、101haの埋立計画の中止を正式に表明されました。三番瀬埋立計画、「市川2期計画」・「京葉港2期計画」はなくなりました。
 戦後四十数年にわたる臨海開発政策は、環境悪化のあまりの大きさにひきかえ、経済的社会的利益はとっくの昔に不採算状態におちいり、歪みばかりが目立つものとなっていました。三番瀬計画が座礁状態に陥ったのは歴史の必然です。
 今、知事が三番瀬埋立計画の「白紙撤回」という公約を「101haの埋立計画は行わない」と議会において明確にされたことは、海の犠牲において経済的利益を図った四十数年にわたる臨海開発政策に終止符を打ったものと私たちは考えます。これは私たちが集めた30万の署名や、堂本さんの公約を信じて知事として選んだ選挙民の多くが期待してきたことです。種々の障害をのりこえ、策動を排してこの転換を貫かれますよう賛意を表明いたします。私たちが知事に送る署名は歴史的転換点を支える国民の意思表示とお受け止めください。そして、三番瀬保全へ向け、次のことについて再度提案いたします。


●下水道および工場移転用地について

 下水処理施設を陸域で解決する、という方向性は私たちも賛成です。第一終末処理場予定地の地権者や地域市民の意志を的確に受け止めて十分に検討を加えることは最初の課題ですが、これに関しては私たちがすでに提案している需要の過剰を見直し、現存施設能力の拡充、さらに分散処理方式と自然利用の導入の検討を加え、水システムの中に水循環と再利用の理念を確立していかれるよう要望します。
 工場移転用地については、未利用地の活用を含め、旧来の工業用地造成から生じた都市形成の種々の歪みを解消していかれるよう望みます。


●第2湾岸道路について

 ところで第2湾岸道路問題については「三番瀬の自然環境と調和のとれた計画」により計画の具体化に向けて働きかけを行う、とされていますが、「三番瀬の自然環境と調和のとれた」道路建設計画がどのような内容のものかが不明なので、この点について知事の具体的なお考えを示していただきたい。
 三番瀬や谷津干潟や行徳の特別保護区などの鳥類を視野にいれれば、また景観上の問題を考えれば、高架方式の道路建設は重大な問題があり、とても「三番瀬の環境と調和のとれた計画」にならないことは明らかです。
 また、地下トンネル方式の場合は、県企業庁自体が認めているように、建設工事それ自体による自然破壊、換気塔建設や外環道路とのジャンクション建設に伴う自然破壊が想定され「三番瀬の環境と調和のとれた計画」にはとうていなり得ないことも明らかだと思います。
 さらに陸域の建設ルートの設定は住宅地域や工場群に関わる公害、都市分断など大きな問題をはらみ、建設費問題と併せて考えれば、これまた重大な環境破壊を引き起こします。
 こうした観点から考えれば、第2湾岸道路は「三番瀬の環境と調和」のとれた計画とはなり得ないので、第2湾岸道路計画それ自体を白紙に戻し、再検討する必要があると思います。
 知事選挙立候補時に私たちに回答した「三番瀬問題アンケート」で知事は、第2湾岸道路については、どうしても建設するということになれば地下方式を検討するべきと答えたうえで、「車優先社会からの脱却が必要」だと回答されています。また、巨大な公共事業については、「埋め立て・道路建設など、多大な財政支出を伴う公共事業は、抜本的に見直さざるをえない」と回答されています。
 私たちは東京湾岸や首都圏の道路交通問題では、知事のいう「車優先社会からの脱却」こそが基本的視点に据えられ、自動車専用道路建設の「抜本的な見直し」がもっとも求められている課題であると考えています。また、輸送一辺倒でなく「住まいの空間としての道路」の概念確立を提案します。


●修復・再生について

 さらに、修復および「里海の再生」について提案します。
 私たちは埋立とそれにともなう浚渫の害をもっとも早くから指摘してきました。
 1973年の〈東京湾の干潟保全と埋立中止〉請願(採択)、入浜権集会における青潮被害アピールにはじまり、今まで一貫して浚渫跡の埋め戻しを要求しています。航路の拡大にもこの見地から反対して制限を要求してきました。
 将来の環境保全のためにもこの2点はまず第1に必要です。さらに工場地帯の動向と陸上輸送への転換を見て、市川航路の埋め戻し要求が漁民の間にあることも留意すべきです。
 三番瀬への環境破壊のもう一つの大きな原因として、行徳可動堰の大量放水ならびに拡大問題にも対処を要望します。
 しかし、「里海の再生」に関しては次の点の考慮が必要です。「再生」とは死んでしまった自然、あるいは死にかけた自然に対して修復の手を加えることを意味します。「再生」しようとする対象ははたして死んでいるのか、の確認が必要です。次に環境悪化をもたらす要因を、外部要因と内部要因に分けなければなりません。その上で、今ある自然に手を加えようとするなら、まずいかなる点でそれが必要で、現存する生態系を損なうことにならないか、手を加えた場合のあらゆる影響、成功の見通し、不成功の場合の原状回復の可能性などについて綿密な予備調査とモニタリングが必要であり、非可逆的な方法、自然の力と時間に適さないやり方をとるべきではありません。埋立に類する工事はその最悪の例です。
 また「再生」の主体はあくまでも自然の側にあり、人間の行為はあくまでも破壊の修復(復原)あるいは自然の作用の補助にすぎないことを銘記すべきです。「自然を創生する」といった思い上がりに陥らないようにと念願いたします。
 次に、残されたわずかな海域に手を加えることで「再生」を考えるのは、視野の狭いことであり、これまでの埋立開発を絶対とすることにつながります。回復すべき干潟や湿地の原風景は埋立地の土の下にあります。これを干潟や湿地に戻していこうと努力することこそ、かつての工場立地一辺倒の都市計画の歪みを正すことであり、もっとも積極的な環境拡大策です。


●国際湿地シンポジウムに関して

 私たちは9月15・16日、知事からも集会成功を祈念する「メッセージ」をいただき、「2001 国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬」集会を開きました。そして、この集会で次のような「三番瀬保全に関する特別宣言」が採択されました。すでに知事のもとにもこの「特別宣言」が届けられていると思いますが、私たちの理念が示されていますので、再度お伝えします。
  1. 目的のいかんを問わず全国の湿地、干潟の開発を凍結、中止、廃止させよう。
  2. 埋立を目的とする「公有水面埋立法」を廃止し、「湿地保全法」(仮)を制定させよう。
  3. 三番瀬の保全問題を東京湾全体の中で検討するため、専門科学者、NGO、一般市民を中心とした東京湾会議を設置し、十分な時間をかけて諸案を検討し、企画段階より環境影響評価の調査を行わせよう。
  4. 三番瀬のラムサール条約登録の手続きを直ちに進めよう。
  5. 三番瀬の当面の保全対策について専門家、市民などの考えを尊重して、浅海・干潟の埋立は行わず、早急に青潮の発生源である浚渫跡など、傷だらけの海底を埋め戻し、海岸線後背地の湿地化などの修復工事を着手させよう。


●結び

 私たちは三番瀬埋立計画を「白紙撤回」した知事の決断に拍手を送ります。そしてラムサール条約登録湿地をめざし、拙速をさけた、三番瀬・東京湾の自然それ自体の力に依存し信頼した保全・復原計画の策定に取り組むよう要望いたします。


《補足》

 私たちの提案として、「三番瀬の自然環境の保全と市川市臨海部のまちづくりについての市民提案」(市川緑の市民フォーラム、1999.12、県および市川市に提案)、「市川の海と海辺のまちづくり」(行徳野鳥観察舎友の会、2001.6)、その他を収めた『三番瀬提言集―“生き物の宝庫”三番瀬を未来の子どもたちに』(千葉の干潟を守る会等7団体、2001.9)をご参照ください。



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