三番瀬円卓会議の「中間報告」に対する見解を発表
「三番瀬署名ネットワーク」は(2003年)1月23日、三番瀬円卓会議が発表した「三番瀬の再生に向けての中間とりまとめ(中間報告)」に対し、以下のような見解を発表しました。
見 解 |
「三番瀬の再生に向けての中間とりまとめ」についての
三番瀬を守る署名ネットワークの「基本的見解」
2003年1月23日
三番瀬を守る署名ネットワーク
代表 竹 内 壮 一
私たち「三番瀬を守る署名ネットワーク」は、千葉県が計画した三番瀬埋立計画(「市川2期地区計画」、「京葉港2期地区計画」)に反対し、千葉県知事宛に「埋立計画の撤回を求める署名」を行うことを目的にして1996年7月に結成された団体です。趣旨に賛同して署名活動に協力してくれた個人と団体は600を超え、この600を超える個人と団体が三番瀬を守る署名ネットワークの会員となっています。
1998年4月14日の「干潟を守る日」に12万人分の署名を知事宛に提出して以後、7回にわたり30万7347人の署名を提出し(2002年2月20日)、三番瀬埋立計画の中止を求めて運動を続けてきました。
海外を含めて、30万人以上の市民が三番瀬埋立計画の撤回を求める意志を署名によって示したことは、堂本知事の「埋立計画白紙撤回」の意思決定にも、そして市民の参画による三番瀬の保全・復原を検討する会議の立ち上げにも少なくない影響を与えたものと思っています。
昨年(2002年)12月25日、三番瀬再生計画検討会議(三番瀬円卓会議)は「三番瀬の再生に向けての中間とりまとめ」を知事に提出しました。私たちは円卓会議の委員のみなさんが「中間とりまとめ」をまとめられたご努力に対して敬意を払います。
そして三番瀬円卓会議が三番瀬の未来を決める重要な役割を担っていると考え、発表された「中間とりまとめ」に対して三番瀬の埋立計画反対運動を続けてきた市民団体として、以下のような「基本的見解」を述べます。
- 「円卓会議」は2つの小委員会、専門家会議も含めて、すべて公開で行われ、またきわめて限られた時間ではありましたが、傍聴者の会場発言も認めるという、これまでの千葉県では見られない会議方式を採用したことは高く評価できると思います。
しかし、会議の開催が、1年間(昨年12月まで)に円卓会議9回、海域、護岸・陸域小委員会それぞれ8回、専門家会議3回など、きわめて過密な会議日程の設定で、時として委員の欠席も見受けました。結果を出すことを先行させたため、議論を重ねてより良い合意形成を図るという円卓会議本来の目的への配慮を欠いた会議日程の設定であったと指摘せざるを得ません。
もちろん、ただ時間をかければいいということではありませんが、三番瀬の未来に関わる重い使命を担った会議ですから、拙速だけは避けなければなりません。東京湾における三番瀬の位置と役割を考えれば、禍根を残す「決定」はなんとしても避けなければなりません。
前の会議で議論された事柄が整理され、配布された資料を十分に検討する時間があってはじめて、会議の積み重ねが生きてくると思います。そういう視点から考えますと円卓会議、各小委員会、専門家会議などの会議の開催は少なくとも2週間程度の間隔をあけて開かれるべきであると思います。つまり円卓会議関連の会議の開催は月2回程度が限度ではないかと思います。過密な会議日程は、委員の欠席などにより委員間の認識の不一致をもたらし、合意形成の上でマイナスになると思います。
- また、会議日程が急に設定されるため、広く県民の参加を呼びかけると言いながら、県の広報紙『県民だより』に一度も会議日程が掲載されたことはありませんでした(昨年12月まで)。「千葉県三番瀬プロジェクトチーム」のインターネット上のホームページなどでの会議日程の掲示と参加呼びかけはありますが、これだけでは限られた人びとにしか会議の日程は伝わりません。
はたしてこれで全国に誇りうる市民参加型の会議と決定方式、「千葉方式」と言えるのでしょうか。円卓会議委員はもとより、傍聴などに参加する市民も資料に基づいた検討ができるような、ゆとりのある会議日程の設定が望まれます。そして円卓会議ではいまどんな問題を議論しているのか、という情報と資料の入手がインターネット以外でも可能な広報活動が、求められていると思います。
東京湾と千葉県の、そうして渡り鳥を視野に入れれば地球的規模において、かけがえのない「資産」、三番瀬の未来を検討する会議であれば、情報開示の不十分なままでの会議日程の設定は改めるべきだと思います。
なお、最近設置された「三番瀬サテライト・オフィス」も積極的な試みとして大いに歓迎いたしますが、立地場所(可能ならば、千葉市、船橋市、市川市、浦安市の4カ所の利便性の良い場所)、オフィスのスペース、備えるべき資料・機器などについても市民団体などと協議して拡充・強化されるよう希望いたします。
- 三番瀬再生計画検討会議という名称に示されているように、会議の名称から「保全」をはずした点において、出発の時点から危惧を感じていました。いまある三番瀬の干潟・浅海域をまず保全するという根本原則を最初に示し、ある委員が求めたように円卓会議として「三番瀬保全宣言」を採択し、2005年のラムサール会議に向けての登録を目標として設定すべきであったと思います。
三番瀬のいまある環境をどう保全するかという課題を最初に設定し、そのための手だてを議論しないで、人工干潟や護岸堤防の形状を議論しても的はずれの感を否めません。順序が逆であると思うからです。
- 三番瀬の環境悪化を強調しながら、悪化の原因についてあたかも自然現象のようにとらえ、最大の原因である埋立についてほとんどまともに議論していません。三番瀬の自然環境を壊したのは紛れもなく埋立です。高度経済成長期、干潟・浅海域の埋立によって陸と海との連続的なつながりを、三番瀬の自然環境を破壊してしまったのです。
もちろんごく少数の人々を除いて、私たちの多くも三番瀬の環境破壊を「容認」してしまったのです。この苦い経験を検証しておかなければならないと、私たちは考えます。
船橋市、市川市そして千葉県が行った三番瀬の埋立の歴史に対する反省、埋立の「功罪」についての議論を避けずに、なぜ干潟・浅海域を埋立て、工業用地や企業用地として売却したのか、この点についての検証が必要だと考えます。
今さら、過去のことを問題としても「生産的」ではない、というような考え方があるとすれば、「過去を直視し、そこから教訓をくみ取ることによって、未来への展望が開かれる」という言葉を示しておきたいと思います。
- 三番瀬の海と陸に決定的に影響を与える第2東京湾岸道路、外郭環状道路とのジャンクション建設問題(外環道路問題)についての議論を避けるべきではないと思います。さらに、江戸川可動堰問題、江戸川左岸流域下水道終末処理場問題などについても同様です。
つまり三番瀬の保全を問題とするなら、海域と周辺陸域の重要な影響要因について、困難であったとしても回避せずに取り組む姿勢が基本的に必要なのではないでしょうか。「三番瀬の再生」を論ずる前に、三番瀬の現在の環境を激変させる恐れのある問題について議論し、これらの問題に対して円卓会議としての見解を示してもらいたいと思います。
- 三番瀬に関わる科学的な調査がまず、十分になされるべきであると私たちは主張します。保全・復原計画をつくるには三番瀬の環境や生物誌などの現況を十分に調査する必要があります。
私たちに科学的調査の重要性を教えてくれた「補足調査」は740haの埋立計画の影響を調査することを主たる目的としていました。三番瀬の埋立計画が消滅した現在、保全と復原という新たな視点に立った調査がぜひとも必要です。この調査は東京湾の「環境学」に新たな知見をもたらすことになるでしょう。その際、調査内容の検討の時点から、調査に市民の参加を呼びかけて下さい。
そしてこの調査では三番瀬の埋立地についての調査も必要となります。埋立地がどのように利用されているのか、土地利用についての現況調査もぜひ実施して欲しいと思います。
- 「中間とりまとめ」の中で、一番問題となる点は「三番瀬の再生」という基本概念をめぐる問題だと思います。
「中間とりまとめ」では、「2.再生の基本的な考え方」の項で「…再生の概念を決めました」と「見出し」に書いてあります。しかし、「再生の概念を決めました」と言うからには「三番瀬の再生とは何か、どうのような状態を三番瀬の再生というのか」ということをまず定義しなければならないのではないでしょうか。
その「再生」の定義がここでは記述されていません。書かれているのは「再生」の概念ではなく、「再生」のための手だてだけです。くり返しますが「再生とは何か」ということと「再生のための手段」ということは異なります。「再生の概念」というからには、「再生」とは何かをまずもって定義しなくてはなりません。それが欠けています。
また「再生」の概念をめぐって円卓会議で各委員の意見表明はありましたが、それをめぐって十分な討論が行われ、「再生の概念」について円卓会議で合意した事実はなかったと思います。
したがって、「…再生の概念を決めました」という「見出し」は適切ではないと思います。それは同じ項の最後の文章に「再生」の内容について、「円卓会議にも提示されました」と書かれているだけで、円卓会議で合意・承認されたとは書かれていないことからも明らかです。もし円卓会議で「再生」の概念が合意・承認されたのであれば、「円卓会議にも提示され、合意されました」とか「承認されました」とか記述されるはずです。
「再生」の定義がなされず、「再生」の手段を記述して「再生の概念」とすることにまず無理があり、さらにはその「再生の概念」を円卓会議で合意・承認したという事実もない。とすれば、「…再生の概念を決めました」と言い切ることには無理があると思います。
- また、同じ「2.再生の基本的な考え方」のところで「三番瀬の再生においては、まず埋立計画が行われなくなったことの影響に対する手当を行う」という記述があります。この文章を読むと、「埋立計画がなくなったことによって悪い影響が出ているのでそれへの手当が必要だ」というようにも読みとれるのですが、もしそうだとすると、埋立計画の中止によって悪い影響も出ているとすればどのような点が悪い影響なのか、を明らかにしていただきたいと思います。
さらには、まさかそんなことはないとは思いますが、円卓会議は埋立計画の中止は三番瀬にとって悪い影響を与えている、と評価しているのか、というもっとも根本的な点での疑問が生じます。
- 三番瀬の「再生」にとって陸域ではどのような課題があるのかを検討するのが陸域問題のテーマであり、主として陸域問題に関わる小委員会を設置するのであれば、小委員会の課題はすでに埋め立てられてしまった土地をどのように湿地や・海として「再生」するか、その可能性などを第一義的に検討課題とすべきであると思います。
海域小委員会の課題に市川航路の埋め戻し問題が課題としてあげられているように、陸域小委員会でも埋立地の「再生」の問題を正面に掲げて議論していただきたいと思います。
- 「中間とりまとめに」に2つの小委員会の「中間報告」が付けられていますが、3回開かれた「専門家会議」の「中間報告」はありません。専門家会議の「中間報告」も出されるべきだと思いますが、この点についての考慮をお願いします。
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