〜第15回三番瀬円卓会議〜
7月24日(2003年)の夜、船橋市内で三番瀬再生計画検討会議(円卓会議)の第15回会合が開かれました。議題は次のとおりです。
(1)小委員会の開催状況
・海域小委員会からの報告
・護岸・陸域小委員会からの報告
・再生制度検討小委員会からの報告
(2)今後の進め方
・目次作成グループからの報告
(3)その他
今後の進め方の議論では、三番瀬再生計画の第一次素案作成作業を8月下旬から進め、9月中旬までに素案のたたき台をまとめて同月25日の円卓会議で検討することになりました。
ここでは、再生制度検討小委員会の報告をめぐるやりとりを紹介します。三番瀬保全条例(仮称)やラムサール条約・国指定鳥獣保護区にかんする議論です。
●公有水面埋立法廃止の提案を
◇吉田正人委員(日本自然保護協会常務理事)
「再生制度検討小委員会での議論の際、鈴木アドバイザーは、公有水面法がある限りは条例で埋め立てをなくすことはできないと言われた。法律を条例が上回るようにするためには憲法を変えなければならないとも言われた。その時は、そういうものかなと思った。しかし、憲法を変えなくても公有水面埋立法を変えればいいのではないかと思う。今は公有水面埋立法の時代ではない。公有水面埋立法は廃止するとか、干潟保護法に変えるとか、そういう方向性が必要だということを円卓会議で提案すべきではないか。そのうえで三番瀬保全条例をつくるようにしたほうがよいと思う」
◇大浜清委員(千葉の干潟を守る会代表)
「吉田委員が述べられたことは全国で問題になっていることだ。公有水面埋立法はいったん廃止し、どうしても埋め立てが必要ならば条例で定めるということが、たとえば日本湿地ネットワークでも基本的な合意になっている。三番瀬でもそういう検討をしていくべきだと思う」
●ラムサール条約登録は、地元の合意形成が先決
◇落合一郎委員(市川市行徳漁業協同組合組合長)
「漁業者としては、この場でラムサール条約の登録に賛成することはできない。漁業へのさまざまな影響が考えられるので、検討が必要だ。漁協の役員会などで検討しなければならない」
◇岡島成行会長(大妻女子大学教授)
「それはそのとおりである。この場で決めることはできない。環境省の方にお聞きしたいが、次回の締約国会議でラムサール条約の登録をしてもらうとすれば、いつまでに何をすればよのか。もうそろそろ意向ぐらいは決めた方がよいのだろうか」
◇環境省職員(オブザーバー)
「ラムサール条約のタイムスケジュールはまだ決まっていない。いま重要なことは、いつまで何をすればよいかということではなく、地元での合意形成をしっかり得るということだ。これができれば、手続きは比較的早く進む。藤前干潟の場合も、地元の協力を得ながら非常に短期間で手続きを進めた。だから、今はいろいろな形で地元の合意を形成することをじっくりとしっかりやってほしい」
◇大野一敏委員(NPO法人ベイプランアソシェイターズ理事長)
「漁業者の合意を得るためには、材料が少ないとやっていけない。総代会などは共通の知識がないと議論したり検討できない」
「埋め立ては大きな問題だ。日本の行政はタテ割りになっている。たとえば三番瀬の場合、環境は環境省、漁業資源は水産庁となっている。わが国の食糧自給を考えると、埋め立てはしてはいけない。こういうことを言っていかなければならない」
◇倉阪秀史委員(千葉大学助教授)
「ラムサール条約の登録については、漁業関係者がいるところで議論すべきだ。再生制度検討小委員会の中には漁業者がいない。したがって、ラムサール条約の問題はこの円卓会議で議論してほしい。それから、漁業者の間で検討していただき、少なくとも9月までにはまとめるようにしてほしい」
◇落合一郎委員
「現在のところ、海岸線の位置も護岸の形状も決まっていない。だから、今は鳥獣保護区の範囲は決められない」
◇水産庁職員(オブザーバー)
「漁業者の言い分はよくわかる。情報はすべて出して、しこりを残さないようにしてほしい。それと、漁業者のほかにも関係者はたくさんいる。そうしたさまざまな関係者の合意も必要になる」
◇環境省職員
「環境省としては、円卓会議の結論がすべてだと思って待っているわけではない。環境省の方からは、次期の鳥獣保護区の設定に三番瀬を含めていいかどうかを千葉県に照会した。県からは、円卓会議で検討中なので、それを見守っていきたいという趣旨の回答をもらった。環境省としても毎回、円卓会議にオブザーバーとして出席しており、様子を見守っている。幅広い範囲で合意が得られれば、より円滑に手続きが進むと思う」
●漁業者と腹を割って話し合うことが必要
◇清野聡子委員(東京大学大学院助手)
「漁業者にとっては、情報公開以前に、みんなが漁業のことをどう考えてくれているのかという不安があるのではないか。漁業者の方々と直接話してみるということを繰り返す必要がある。プレッシャーをかけるのではなく、お互いに腹をわって話し合しあえるような場をつくる必要がある」
◇岡島成行会長
「ラムサール条約の登録はみんないいことだと言うが、心配は心配だ。合意形成の方法としては、再生制度検討小委員会に出てもらうと当時に、何らかの場をつくりたいと思う」
◇大西隆委員(東京大学教授)
「再生制度検討小委員会には漁業者の席が一つあいているが、出席されていない。オブザーバーでもよいから、何らかの形でぜひ参加してほしい」
◇歌代素克委員(市川市南行徳地区自治会連合会会長)
「漁港の移転計画や護岸の改修計画がある中で、ラムサール条約の登録申請はできるのか」
◇岡本孝夫委員(浦安市自治会連合会会長)
「鳥獣保護区の設定範囲によっては、まちづくりもできなくなる。護岸・陸域小委員会で検討していることができなくなるような可能性もある」
◇岡島成行会長
「ラムサール条約に登録されるとなにもできなくなるということはない」
◇環境省職員
「鳥獣保護区の設定範囲を心配される意見がだされたが、国の指定といっても、国が勝手に決めるわけではない。地元のまちづくり計画があれば、それも考慮して設定することになる」
◇岡島成行会長
「世の中の常識の中で考えてよい」
◇落合一郎委員
「大西委員が、再生制度検討小委の席が空いているという話をされた。しかし、4人の漁協委員のうち、病気そのほかで私一人になってしまった。小委員会への参加は、ほかの漁業委員と相談して決めたい」
◇大浜清委員
「ラムサール条約に登録されればいろいろ障害がでるという話がされているが、いい面もある。再生制度検討小委員会では、そういう良い面についても検討し、出してほしい」
◇岡島成行委員
「清野委員と相談しながら、ラムサール条約と漁業の問題を漁業者とじっくり話し合うようにしたい」
◇清野聡子委員
「全国のほかの地域では鳥獣保護区の設定について、もっとシビアな意見がでている。鳥の羽のついた魚は消費者が買ってくれないというような意見だ。そのへんの漁業者のみなさんの心配を一つひとつつぶしていく必要があると思う」
(文責・千葉の干潟を守る会)
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