地裁判決を受け入れ、埋立工事を中止せよ

〜三番瀬保全団体などが泡瀬干潟緊急報告会〜



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 千葉の干潟を守る会などの三番瀬保護団体(8団体)と日本湿地ネットワーク(JAWAN)は(2009年)6月20日、「沖縄の海を守ろう!〜サンゴの海 泡瀬干潟」と題した緊急報告会を開きました。沖縄出身の大学生も参加してくれました。
 概要は次のとおりです。


  日時 2009年6月20日(土)13:00〜17:00
   場所 アイリンクルーム(市川市内)
  報告 (1)泡瀬干潟埋め立て事業について……水野隆夫
     (2)沖縄大問題ツアーに参加して………織内 勲
     (3)泡瀬に行って思ったこと……………伊藤昌尚
     (4)特別報告・沖縄辺野古から…………竹下信雄
     (5)三番瀬に危機迫る…………………竹川未喜男




◆沖縄最大の干潟で埋め立て工事が進行中

 泡瀬(あわせ)干潟は、沖縄市の目の前に広がる沖縄最大の干潟です。マングローブ、泥干潟、砂干潟、藻場、珊瑚礁と、さまざまな環境をあわせ持っていて、それぞれの環境に合ったさまざまな生き物が生息しています。
 その干潟でいま、内閣府沖縄総合事務局と県による埋め立て事業が進んでいます。この事業は、沖縄市がバブル時代に策定したリゾート計画をもとづき、干潟(約265ha)の一部と周辺の浅海域をあわせ187haを埋め立てるものです。


◆那覇地裁が公金支出差し止めを命じたが、県と市が控訴

 ホテル進出などの利用計画は白紙の状態です。それでも、埋め立て工事だけが進んでいます。そのため、埋め立て事業の必要性を疑問視する声が高まっています。
 2005年、住民約580人が公金支出の差し止めなどを求めて行政訴訟を起こしました。この訴訟で、那覇地裁は昨年11月、事業に経済的合理性は認められないとして、県と市に公金支出差し止めを命じました。
 ところが、県と市はこの判決を不服として控訴しました。また、内閣府は今年1月15日、計画区域に土砂の投入を開始しました。


◆「内閣府の官僚は不感症ではないか」

 20日の緊急報告会では、泡瀬干潟の自然の豊かさや埋め立て事業の問題点などを水野隆夫さんが話してくれました。水野さんは、かつて環境省自然保護官をしていて、いまは「泡瀬干潟大好きクラブ」の代表を務めています。
 水野さんの話で印象的だったのは、埋め立て事業を進める内閣府や沖縄県、沖縄市の官僚たちの姿勢でした。水野さんはこんな話をしました。
     「泡瀬干潟の埋め立て事業は、沖縄振興計画がいかにデタラメであったかを証明している。内閣府の官僚たちは、信念をまったくもっていない。楽なことしかやろうしない。要するに、利用計画(リゾート計画)が破綻していることはわかっているが、そのまま埋め立て事業を進めた方が楽ということだ」

     「内閣府の官僚は不感症ではないか、バカではないかと思う。どうしたらこの人たちは、事業の見直しに動いてくれるのかと、あせりもでてくる」

 那覇地裁が公金差し止めを命じたのは、誰が見ても、バブル時代に策定した大風呂敷のリゾート計画が破綻しているからです。
 それでも、官僚たちはそういう事実や判決を認めようとしません。だから水野さんは、彼らに対して「信念をまったくもっていない」「不感症」と言ったのです。


◆千葉県の官僚も同じ

 参加者の多くは、この言葉にうなずきました。というのは、千葉県の官僚もまったく同じだからです。
 たとえば、エコテック産廃処分場の許可取り消しを求める住民訴訟では、千葉地裁(一審)と東京高裁(二審)による許可取り消し判決を認めず、最高裁に上告しました。
 地元の住民たちが県庁を二度も訪れ、「産廃処分場ができると、汚染によって優良農地がダメになる。風評被害も確実だ」「飲み水や農業用水も大きな影響を受ける」「高裁判決を尊重し、上告しないでください」と切々と訴えました。しかし、県の官僚たちはまったく聞く耳をもちません。その姿勢は、泡瀬干潟と同じように、「信念をまったくもっていない」「不感症」「バカではないか」と言いたくなるようなものでした。
 ラムサール登録など三番瀬の恒久保全に関する県の姿勢もまったく同じです。「どうしたらこの人たちは事業の見直しに動いてくれるのかと、あせりもでてくる」という水野さんの気持ちが痛いほどわかりました。

◇             ◇

 以下は、この報告会で採択された宣言文です。宣言文は、要請書として内閣総理大臣や沖縄県知事、沖縄市長、内閣府沖縄振興局などに提出しました。



宣 言 文





1.那覇地裁判決を受け入れ、埋立工事を中止せよ
     東京湾三番瀬を愛し、その保全に取り組む私たちは、泡瀬干潟の埋め立てを憂慮して、緊急集会「沖縄の海を守ろう! サンゴの海、泡瀬干潟」に参加しました。
     平成20年11月19日、那覇地裁は、泡瀬干潟埋立事業において「経済的合理性は認められない、判決以後、沖縄市、沖縄県は一切の公金を支出し、契約を締結し、または債務その他の義務を負担してはならない」との判決を下しました。国、沖縄県、沖縄市は司法の判断を尊重し、埋立工事を中止しなければなりません。
     国と沖縄県、沖縄市は判決に従わず、福岡高裁へ控訴をし、本年1月15日、国は「護岸補強」の名目で浚渫土砂の投入を始め、5月20日、国はさらなる工事を再開しました。わたしたちは、この工事再開などに強く抗議し中止を求めます。

2.泡瀬干潟の保全計画こそ今日の課題です
     美しい泡瀬干潟に真っ黒な浚渫汚泥が投入されて行く有様を、私たちは胸がつぶされる思いで見つめました。護岸による囲いこみと土砂の拡散により、既にサンゴ類も海草藻場も被害を受けています。干潟本来の規模と自然の形状の喪失によって、環境悪化の一途を辿ることは、私たちが40年来、東京湾で目のあたりにしてきたことです。控訴理由の「干潟の80%が残る」というのは数字のトリックにすぎません。
     泡瀬干潟の砂、泥、礫、サンゴ、海草藻場が織りなす底質環境の多様性、それに育てられたゆたかな生物多様性、それは全国に比類のない宝石のような存在です。渡り鳥、特にシギ・チドリ類にとって泡瀬干潟は、種の存続を支える渡りの中継地、越冬地であり、その保護は国際的な責任を負っています。
     来年10月には第10回生物多様性条約締約国会議が名古屋市で開かれます。この会議にあたり、貴重な泡瀬干潟にふさわしい保全計画こそ必要です。国、県、市の協力により泡瀬干潟をラムサール条約の登録湿地とすること、それに見合った保護区指定を早急に行うことを私たちは要望します。

3.社会・経済の実情を直視し、計画を根本的に立て直そう
     三番瀬では、埋立中止を求める30万人署名や千葉県環境会議の提言をバックにして、平成13年(2001年)に埋立計画が白紙撤回されました。
     今日、三番瀬は、東京湾を代表する自然として人々に愛され、「江戸前」漁業のブランドとして育ちつつあります。困難は今なお尽きませんが、漁業者自身が三番瀬をラムサール条約登録地とする要求を掲げるまでに至っています。
     泡瀬地区の海洋リゾート計画は、埋立ではなく、泡瀬干潟の自然そのものを享受する方針に改めるべきです。泡瀬干潟の自然環境こそ、世界の人々を魅了する力を持っているのです。はるか祖先から受け継いだ大切な宝、サンゴの海、泡瀬干潟を破壊してはなりません。
 以上、宣言いたします。

 2009年6月20日
緊急集会「沖縄の海を守ろう!サンゴの海、泡瀬干潟」
参加者一同
於:千葉県市川市I−Linkルーム












泡瀬干潟緊急報告会





泡瀬干潟のめずらしい貝類に見入る参加者





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