★講演会「宇井純と語ろう−流域下水道と市川三番瀬」


■主催者あいさつ

三番瀬埋め立てはなんとしてでも食い止めたい

〜 流域下水道の処理場建設と三番瀬埋め立て計画 〜

千葉の干潟を守る会  大浜 清



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 1998年7月25日、千葉の干潟を守る会、市川緑の市民フォーラム、千葉県自然保護連合など6団体は、共同主催で講演会「宇井純と語ろう−流域下水道と市川三番瀬」を市川市文化会館で開きました。
 以下は、大浜清さん(千葉の干潟を守る会代表)による主催者あいさつです。


 


 きょうは暑いのによくおいでくださいました。ただいまから宇井さんをお招きし、江戸川左岸流域下水道および三番瀬の問題を考える集会を開きたいと思います。

 きょうの催しは、「千葉の干潟を守る会」が呼びかけて、市川の「市川緑の市民フォーラム」をはじめ、いろいろなグループが大変な力を出して協力して下さいました。まず最初に、このことにお礼を申しあげたいと思います。それから、今日の話をして下さいます宇井さんと高柳さんにも、お礼申し上げたいと思います。

 ところで、本日こういう催しを開く動機になりましたのは、一つは、市川の環境問題として、流域下水道と東京外郭環状道路が非常に大きな問題となっていることです。市川の市民生活にとって、果たしてこの流域下水道が良いのかどうか、ということです。これは、真間川の問題を中心にして、真間川の水害とたたかい、あるいは真間川の水をきれいにするために運動してこられた方たちが一番大きく問題意識としてもっておられることです。

 それからもう一つ、市川で新しく埋め立てが予定されている三番瀬の西側の「市川2期」という部分、ここには流域下水道の第一処理場を造るという計画になっています。

 私たち「千葉の干潟を守る会」は、東京湾をこれ以上破壊させないということで、25年あまり活動してまいりました。しかし、何でもジャマなものは海に持っていってしまう。ゴミも、海に持って行って埋めさえすればよい。公害を出す工場も海に持っていって造ればよい。住宅問題の解決も、埋め立てればよい。−−そういうやり方がまかりとおっています。

 それから、最近では、道路も空港もそうです。なんでも海を破壊してすませてきた。そういうやり方がこのまま通ってよいのだろうか。そういう疑問を投げかけて、どうにかこうにか千葉県の大規模開発をこの20年間食い止めてきました。

 しかし、この三番瀬埋め立て計画、つまり京葉港2期と市川2期がバブルに乗っかって出てきました。この計画は、実際のところ、本当に一つひとつの土地利用計画が必要なのか。また、こんなことをやっていたんでは、千葉県の財政は破滅するんではないか。──そういう問題を、環境問題と同時にはらんでいます。

 是非これを食い止めたい。そういう海の立場から、埋め立ての理由の非常に大きな目玉となっている江戸川左岸流域下水道についても是非とりあげたいと思いました。そういうわけで、市川の市民運動と海を守る自然保護運動とが手を結びあって、本日、宇井さんのお話を伺うということになったわけです。

 水をきれいにするということは、何か非常に一番大事なことのように言われてきています。けれども、下水処理をしさえすればよいのか。それはもう1回考え直していかなければならない問題です。本日の講師である宇井さんもずっとそれをテーマとして考えてこられたわけです。

 私自身も、個人的な体験ですが、流域下水道のことを考えるのに非常によい例と思うものをひとつだけ紹介したいと思います。

 私は習志野市に住んでいます。習志野の東の方に実籾小学校という小学校があり、そこではオオクマ式と言いましたか、合併式浄化槽を学校に造って、給食の水もトイレの水も、全部自校内で処理をしていました。処理した水をどうしたかというと、下水に出してしまうのではなく、それをパイプで周りの斜面に導いて斜面林を育てていました。ですから、実籾小学校から出る水というのは一滴もなかかったのです。全部自分のところでキレイにし、自分のところで林を育てるために使っていたのです。こうなると、普通の下水ですと、リンとかチッソが邪魔になって一生懸命再処理しなくてはいけないということになりますが、ここではリンもチッソも全部肥やしとして周りの緑を育てている訳です。

 こういう水の循環こそ、なんて素晴らしい水の利用なんだろうか、と思っていました。実籾小学校は、環境教育の指定校にもなっていたのです。ところが3、4年前、印旛沼流域下水道の処理区域に編入されているものですから、今までそうやって素晴らしい働きをしてきた自分のところの合併浄化槽の施設を全部そのまま廃棄にし、生下水のまま流域下水道に出すことになりました。

 これはどういうことでしょうか。そこに流域下水道の思想が典型的にあらわれていると思います。つまり、人間が使った水はまとめて廃棄してしまう。そのまま埋立地の海岸にある終末処理場に持って行って、そこで終末処理をして海に出してしまう訳です。今まで土を潤し、あるいはそうでなくとも川を潤してきたはずの水が、まとめて廃棄物になってしまうわけですね。ここに流域下水道の根本的な問題があるんじゃないかと私は思いました。

 多かれ少なかれ、そういうやり方をどこの地域でもやろうとしています。江戸川左岸下水道は8市1町の水を扱うのですが、流域下水道が完成するまでは、それぞれの市では何もやらなくて済むんでしょうか? そんなことはないのです。一生懸命水をキレイにしようとしているはずです。そういう仕事も含めて、水をキレイにする施設さえも廃棄物にしてしまおうというのが流域下水道ではないでしょうか。そういうもののために、どうして三番瀬を埋め立てる必要がありますか。そこのところを私は申し上げたいと思います。

 それで、宇井さんが、昨年の7月から9月に、NHKの人間大学で「日本の水を考える」という話をされました。テレビをご覧になった方もあると思いますが、この話は本として出版されていますので、是非読んでいただきたいと思います。

 宇井さんは、私たちのような立場とは違って、水を処理する技術者あるいは科学者から出発して、日本の公害の問題を考えに考え抜いてこられました。また、公害運動のリーダーとして水俣病を廃絶する運動にかかわってこられました。そして、今では沖縄大学で沖縄の環境を守る仕事をしていらっしゃいます。

 “水は生命の源”だと、そういうのが宇井さんの思想でいらっしゃると思います。また、水は循環している、そこに水の本当の命がある。−−ここに、宇井さんの思想の本当の核があるんではないかと私は勝手にそう思っております。

 最後に、私たちも昨年ほぼ1年間、三番瀬計画について土曜学校という講座を開きましたが、その中で流域下水道の問題をとりあげました。その資料が受付においてありますのでご覧ください。

 それから、私たちは三番瀬の埋め立てを是非やめさせたいと思って運動を続けております。三番瀬だけでなく、この数年、日本のすべての湿地が大きな危機にあります。その最たる例は、昨年の諌早湾です。それから、名古屋の藤前干潟も埋め立てられようとしています。こういうわけですので、三番瀬を守るための署名を是非周りの方に広めていただきたいと思います。

 もう一つ、「日本湿地ネットワーク」という、湿地を守る運動を手をつないでやっている団体がありますが、そこが新たに日本全体の湿地を守る署名運動をはじめました。この署名も受付にありますので、是非お持ちになって周りに広めていただきたいと思います。

 来年(1999年)の5月にコスタリカでラムサール条約の締約国会議が開かれます。そこで、日本の湿地の運命が非常に大きな問題になると思います。それをめざして運動を盛りあげたいと思っていますので、是非よろしくお願します。







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