★三番瀬埋め立て縮小案で毎日新聞が再び社説


諫早の愚は繰り返すまい

〜1999年6月27日付け毎日新聞の社説〜




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 水鳥が飛来し、生物の多様性に富む干潟や、亜熱帯の干潟にできるマングローブ林をこの1力月ほどの間に幾つか見て回った。
 ヤンバルクイナなど貴重な動物がすむ沖縄本島北部・東村(ひがしそん)。そこの慶佐次(げさし)湾に広がり・国の天然記念物になっているマングローブ林は幻想的な美しさだった。
 東村のほかのマングローブはダム建設の影響などで消滅し、「残った慶佐次のマングローブを守ろう」と住民は強く思う。
 那覇市の干潟「漫湖」は都市の真ん中にある。5月のラムサール条約第7回締約国会議で重要湿地として登録された。マングローブが増え続ける中で干潟には空き缶・などのごみが目立ち、上流からの土砂流入も問題になっている。
 博多湾にただ一つ残る干潟の和白(わじろ)干潟(福岡市)では水鳥が目立った。沖合には福岡市が造成中の人工島の堤防が見える。海の汚染や渡り鳥の減少が指摘され、干潟保全の住民運動が起きている。
 「開発か保全か」で焦点の東京湾最奥部の干潟「三番瀬」(千葉県市川市、船橋市)とその数キロ東にある同条約登録湿地の谷津干潟(習志野市)にも足を運んだ。
 干潟は生物の宝庫で水質浄化能力にも優れているのに、埋め立てには便利な場所だ。東京湾の干潟の9割は埋め立てられ、瀬戸内海も干潟の埋め立てで漁業に大きな影響が出た。今でも開発にさらされる干潟は少なくない。
 そんな干潟を見る国民の目が一気に変わった。2年前に国内最大級の干潟である長崎県・諫早湾の湾奥部が干拓事業で閉め切られたことがきっかけだった。そして名古屋港・藤前干潟の埋め立て計画は今年1月に撤回された。
 千葉県はここにきて、三番瀬埋め立て計画の大福縮小案を発表した。だが今や縮小で済む話だろうか。環境庁が縮小案の再検討を指示したのは当然のことだ。
 締約国会議では干潟保全が決議された。環境影響評価法の施行で公共事業などの環境破壊に厳しい目が光る。今後、国民が干潟を身近に感じることが何よりも保全に結び付く。環境NGO(非政府組織)の活躍に期待したい。
 干潟に触れてみて、開発の美名のもとでいかに大切なものを失ってきたかと改めて感じた。「諫早の愚」は繰り返したくない。
 同時に各地の干潟が置かれた状況はそれぞれ違うことが実感できた。漫湖や谷津干潟は都市化の中で孤立し、三番瀬の市川市側は直立護岸で市民は干潟で憩えない。状況に応じた保全の方法を見いだすことが課題だろう。
 日本の干潟保全運動の高まりを世界にも広げたい。








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