三番瀬埋め立て見直し案で
日本野鳥の会が千葉県知事に要望書
自然保護団体「日本野鳥の会」は（1999年）６月17日、三番瀬埋め立て計画の見直し案について、千葉県知事に要望書を提出しました。
内容は「101ヘクタールという規模の埋立はあまり過大であり、どうしても三番瀬の海域でないと行えない事業なのか、また新しく埋め立てないと確保できない用地なのか、既存の土地ではどうしてもまかなえないのか、といった検討が十二分になされているとは思われません。検討にあたっては最新のデータに基づき、現在の社会状況に即して検討を行われることを要望します」などというものです。
要望書の内容は次のとおり。
日野鳥発第４２号
平成１１年６月１７日
千葉県知事 沼田 武 様
財団法人 日本野鳥の会
会長 黒田長久
三番瀬の埋立計画見直しと保全に関する要望書
拝啓 時下益々ご清祥の事とお慶び申し上げます。日頃は環境保全についてご尽力のこと、厚く御礼申し上げます。
さてこのたび、貴県より「市川二期・京葉港二期計画」の見直し案を公表されたことについて、本会の意見と要望を申し述べます。
本会は、貴県が干潟・浅海域の重要性を認識された上で見直しを行われていることについては歓迎いたします。本会は、東京湾の干潟・浅海域の90％が埋立により消失した現在において、残った干潟・浅海域が渡り鳥などの生息環境として重要であり、地域の生物多様性を担つている現状を踏まえて、三番瀬において不要な埋立は一切すべきでないと考えております。貴県の実施された三番瀬の環境に関する補足調査でも、三番瀬が国際的にも重要な湿地としての価値を持つことを改めて証し、その広がりと環境の多様性により、高い水質浄化機能や生物多様性の保全機能が保たれていると結論づけられています。
本会は今回、貴県が見直し案を議論のたたき台として出されたことで、埋立事業の必要性の見直しと事業の環境への影響について、具体的な議論に入るスタートラインに立ったと考え、第３回の計画策定懇談会とそれに続く検討を前に、三番瀬の自然環境の重要性を踏まえその保全を実現すべく、以下のことを要望いたします。
１．〈事業の必要性と埋立回避の検討の優先〉
事業の必要性について、三番瀬の重要性を踏まえ、埋立を最大限回避するための検討を徹底的に行うべきです。見直し案においても、101ヘクタールという規模の埋立はあまり過大であり、どうしても三番瀬の海域でないと行えない事業なのか、また新しく埋め立てないと確保できない用地なのか、既存の土地ではどうしてもまかなえないのか、といった検討が十二分になされているとは思われません。検討にあたっては最新のデータに基づき、現在の社会状況に即して検討を行われることを要望します。
２．〈環境への影響の評価の観点と道路計画の評価について〉
環境への影響の評価については、事業の必要性及び埋立の回避に関する論議を経てから検討すべきです。その際に、事業の必要性に関して前提の異なる740ヘクタールの埋立計画と比較すべきではなく、あくまで現時点の環境への影響をできるだけ小さくするという観点からの議論を行うべきです。検討の材料には、直接的な改変だけでなく、潮流の変化や下水道処理水の流入等の物理的環境の変化や、食物連鎖等の生物的環境の変化に伴う、間接的な影響も対象にすべきです。
また、補足調査の結果からは、第２東京湾岸道路の与える環境への影響はまったく評価できません。見直し案に掲げられたこの道路計画は、その構造を地上式とするならば、三番瀬の野鳥等の生息や、景観、人と自然とのふれあい活動へ与える影響はあまりにも大きいことは容易に推察されます。この道路計画がもし必要不可欠という結論が出たとしても、地上式にした際の影響を十分に調査検討し、生態系への影響が小さくなる地下式にするべきです。
３．〈公開した議論の必要性〉
市川二期地区・京葉港二期地区計策定懇談会の場で、有識者の間で徹底した議論をするのはもちろんのことですが、情報と資料を県民に公開して、広い立場の意見を集め討論し、事業の是非を問うべきです。
４．〈環境の改善の検討について〉
垂直護岸の改善や、漁場環境の改善といった三番瀬の環境改善については、埋立を前提にする必要はなく、埋立事業の必要性とは別の段階で検討を行うべきです。またその検討は、科学的・客観的な根拠に基づいた議論とすべきです。
貴県が全国に先がけて設置された環境会議、計画段階での事業の検討という先進的な制度を生かされ、貴県の貴重な自然環境というかけがえのない財産を将来の世代に引き継ぐことを見据えた検討と議論を確保されることを、重ねて強くお願いいたします。
敬具
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