「策定懇直前シンポジウム」を開催
〜 「策定懇継続を」のアピールを採択 〜
写真撮影・岩田孝昭
東京湾の干潟・浅瀬「三番瀬」の保護運動にとりくんでいる県内の市民団体は(1999年)12月11日夕方、市川市教育会館で「三番瀬の評価と保全〜あなたはどんな三番瀬を子供たちに残したいですか?」というテーマで、「策定懇直前シンポジウム」を開きました。これは、三番瀬埋め立て計画の見直し案について話し合う第4回目の千葉県の「計画策定懇談会」が12月25日に開かれるのを前に開催したものです。参加者130人でした。
シンポジウムの概要は次のとおりです。
●日 時:1999年12月11日(土) 17:15〜20:15
●会 場:市川市教育会館 多目的ホール
●テーマ:三番瀬の評価と保全
〜あなたは、どんな三番瀬を子供たちに残したいですか?
●パネラー:
松川康夫……補足調査委員、水産庁中央水産研究所室長
中村俊彦……環境調整検討委員、千葉県立中央博物館生態学研究科長
開発法子……策定懇談会委員、日本自然保護協会研究担当部長
●主 催:「策定懇直前シンポ」実行委員会
●後 援:日本湿地ネットワーク、世界自然保護基金日本委員会
日本自然保護協会
●協力団体:市川の空気を調べる会、市川緑の市民フォーラム、江戸川自然観察クラブ、
外環反対連絡会、行徳野鳥観察舎友の会、三番瀬を守る会、三番瀬を守る
署名ネットワーク、しのばず自然観察会、千葉県自然保護連合、千葉県野
鳥の会、千葉の干潟を守る会、真間川の桜並木を守る市民の会、野鳥の会
三番瀬グループ(50音順)
県の補足調査委員を務めた松川康夫さん。松川さんは、三番瀬に生息する生物の種類や生態系を説明したうえで、「(猫実川河口は)泥っぽいからといって埋め立てると、三番瀬に重大な影響がおきる」「東京湾の干潟や浅瀬は、もうこれ以上埋め立てるべきではない」などと話した。
計画策定懇談会のメンバーである開発法子さん。開発さんは、県が示している埋め立て案については、土地利用計画など多くの問題点があると指摘し、市民が海とふれあう三番瀬を活かした街づくりの必要性を強調した。そして、「策定懇での議論は始まったばかりであり、もっと議論が必要」と話した。
策定懇での論議の経過や「三番瀬の評価と保全」などについて熱心に論議するパネラー
熱気むんむんの会場
★ 策定懇直前シンポジウム
ア ピ ー ル
三番瀬は多くの人に様々な贈物をもたらす干潟と浅瀬です。このことは、「東京湾の重要な浅海域である」と県が行った補足調査でも立証しています。東京湾の干潟の9割以上の埋め立てを許してしまった今日、残った三番瀬は貴重であり重要であることは言うまでもありません。
過日行われた「'99 国際湿地シンポジウム in 東京湾三番瀬」において、開発をしてしまってからの修復は、いかに困難であるかを私たちは海外の方々からも学びました。今ある干潟・浅海域の保全に勝るものはありません。
そんな折、私たちは、この25日に第4回計画策定懇談会が開催され、この回で最終会合にしたいとの県の意向を耳にしました。急いでことを運んでは取り返しがつかなくなります。
本年6月、県は三番瀬埋め立て計画の見直し案を発表しました。
101ha の埋め立てと13haの人工干潟の造成が本当に必要かどうか、その手法は妥当かどうか、第2東京湾岸道路、流域下水道などの土地利用計画は正当なものなのか、都市環境・公害問題はどのように検討されたのか、海の利用のあり方と地域計画の将来展望は、など見直し案をめぐって多くの問題が残されています。また第2湾岸道路の事業主体である建設省からは、道路の必要性の根拠が正確に伝えられておりません。更に都市計画、交通工学の研究者からの検討も外部に示されておりません。この面こそ、市民生活や文明のあり方への反省も含めて、住民の意思の尊重と研究者のさらに広く深い考察が望まれます。全ての議論が緒に就いたばかりだと言えます。私たち市民もこれらの問題に就いて議論を深めつつあります。決定を急いでは取り返しがつきません。
第4回の策定懇談会で決定を下すほど問題はやさしくありません。
急いでことを運ばないで下さい。取りかえしのつかないことをして21世紀の幕開けをしてはなりません。
私たちが東京湾から受けてきた恩恵を子や孫の代まで引き継ぐことが出来るよう、十分慎重に審議をしてください。
このことを私たちは強く要望します。
1999年12月11日
「策定懇直前シンポジウム」参加者一同
★ 報告
「策定懇直前シンポ」を終えて
私たちは、「策定懇直前シンポジウム」を12月11日、市川市の教育会館で開催した。収容人数120名のところ130名の参加者を得て、主催者として喜びにたえない。
はじめに、県の補足調査委員を務めた松川康夫水産庁中央水産研究所室長から、「これまでの開発中心の政治の結果、東京湾からハマグリ、アオギス、イカナゴは絶滅した。しかし、ノリ、アサリは全国でも屈指の生産力を誇っている。シャコ、アナゴは首都圏の大半をまかなう重要な漁場であり、これ以上の開発は控えるべき。また、三番瀬の脱窒作用は下水処理場にすると13万人分に相当する。泥質があって、生物の多様性が維持される」などと話された。
次に、県立中央博物館生態学研究部長の中村俊彦さんは、次のような話をされました。
「三番瀬とその周辺地域は、穏和な気候と豊かな水環境、関東ローム層を基盤とした肥沃な土壌環境にあり、約3万年の昔から多くの人々の暮らしが築かれてきた地である。考古学や歴史学の見地からみても、人々の生きる場としてこれほどめぐまれた自然環境の地は、世界でも他に類例をみない。人間の生活においては、身の回りの自然を傷つけなければならないこともある。しかし、第2湾岸道路は人々に本当に大きな幸せをもたらすものなのか。そういったことを、私は、都市計画の研究者や国の責任者から聞いたことがない。本当に必要なら埋め立てても仕方がないが、もっと必要性について検討してもらいたい」
策定懇のメンバーであり、日本自然保護協会の開発法子さんは、「策定懇はやっと議論が始まったばかり。もっと市民との対話をすすめることによって、埋め立てによらない方策が考えられるのでないか」と結んだ。
アンケートには、「シンポは、策定懇直前でタイミングがよかった。策定懇はもっと議論をしてほしい」「策定懇を4回で終わらせるな。今ある干潟を守ってほしい。アサリ採りだけが海と遊ぶ方法ではない。埋め立てによらない楽しみ方もあるはず」など、たくさんの声が寄せられた。
アピール文と同じような声が返ってきて、みんなの考えは同じと、二重の喜びを感じた。
(シンポジウム実行委員・牛野くみ子)
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