市川緑の市民フォーラムが

 「三番瀬の自然環境の保全と市川市臨海部の

  まちづくりについての市民提案」を発表




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 三番瀬の保全にとりくむ市民団体「市川緑の市民フォーラム」は、(1999年)12月11日開催の「策定懇直前シンポジウム」において、「三番瀬の自然環境の保全と市川市臨海部のまちづくりについての市民提案」を発表しました。
 同フォーラムは、この市民案を12月16日に千葉県へ、17日に市川市にそれぞれ提出しました。
 提案の内容は次のとおりです。


 

市民提案の内容



  三番瀬の自然環境の保全と市川市臨海部の
  まちづくりについての市民提案

      〜 市川緑の市民フォーラム案 〜



はじめに

 三番瀬埋め立て問題(京葉港二期・市川二期埋立計画)について、12月25日に第4回計画策定懇談会が開催され、千葉県が6月に発表した見直し案について検討されることになっている。この見直し案は、船橋側11ha、市川側90haを埋め立て、さらに市川側については、13.2haの人工干潟を造成する計画である。
 千葉県は埋立て計画を上記のように変更することにより、三番瀬の自然への影響は避けられるとしている。また、市川市も市川側の埋立てについて、下水処理場、都市再開発支援用地、湾岸道路などの都市施設のためだけでなく、漁場の改善と市民と海との触れ合いの場の創造のために必要であるとして積極的に賛成する方針を明らかにしている。
 しかし、千葉県が3年という月日をかけて実施した補足調査は、三番瀬が首都東京に接する海でありながら、豊かな自然環境を維持しているとともに、三番瀬のどの海域も生態系として重要な働きを担っていることを明らかにしている。また、青潮などに常に脅かされ、かつての東京湾のように豊かでタフな海でないことも浮き彫りにしている。埋立て計画は縮小されたとはいえ、なお101haという広大な海を埋め立てることを考えれば、千葉県や市川市の主張には根拠がなく、三番瀬の現状について市民に誤った認識を与えるものであると、私たちは考える。
 9月に市川で開催された「国際湿地シンポジウム in 三番瀬」では、参加された外国人ゲストから「三番瀬は、もうこれ以上開発の波にさらしてはいけない」と、まず三番瀬を保全することの重要性が指摘され、「これからは、どうやってかつての浅瀬と干潟の海を回復するか、それを時間をかけて考えるべきだ」との提案がなされている。
 私たち「市川緑の市民フォーラム」は、千葉の干潟を守る会や千葉県自然保護連合とともに、下水道終末処理場など、千葉県や市川市が埋め立ての理由としている都市施設に対する考え方を含め、埋め立て見直し案に対する基本的な考え方を、要望書(千葉県知事宛4月16日及び6月16日付け)という形ですでに明らかにしている。しかし、上記のように市川市が埋め立てに積極的であること、また見直し案においては船橋側に比べ、市川側の埋め立ておよび人工干潟の面積の合計がはるかに大きくなっていることなどから考えて、市川市民が特に市川側の埋立て計画についてどう考えているかを明確にすることが必要であると考えた。そして、私たちは三番瀬の自然環境の保全と市川市臨海部のまちづくりについて、以下のようなコンセプトに従うべきであることを、千葉県と市川市に提案する。
 もちろん、不備な部分があるのは承知している。しかし、あえてこれを公にして、行政、ならびに専門家の方々の批判を仰ぎ、その中から少なくとも現在の「見直し案」よりも21世紀を見据えた案が生み出されることを期待したい。



基本コンセプト


  1. 自然環境が自らの力でその環境を維持し、年々更新していける「たくましさ」を有するためには、ある程度以上の面積と多様性が必要である。そこで、東京湾の広大な浅瀬と干潟の9割以上が失われた現状を考え、今残されている干潟と浅瀬は可能な限り保全することを前提に、三番瀬の自然環境の保全と市川市臨海部のまちづくりを考える。したがって、市川市のまちづくり(都市計画)においては、できる限り既存の陸域内で検討を進め、陸域内の問題(住宅用地、終末処理場用地、公園用地等)を海(三番瀬)に押しつけない。

  2. 現在ある湾岸道路が市民と海とを遠ざけている最も大きな原因であることを考えれば、第2湾岸道路を建設することが、これを一層進めることは明らかである。また、三番瀬の自然環境と調和した市川市の臨海部のまちづくりとの両立も極めて困難である。
     もちろん、第2湾岸道路の必要性は湾岸地域全体の広域的見地からの主張であり、これらについての幅広い議論の必要性は認めるが、一方、現状のようにクルマのみに依存した交通体系や、湾岸地域全体の開発そのものを見直す必要もあると考える。そこで、まずこうしたレベルでの議論を含め、第2湾岸道路そのものが必要な道路なのかどうかを時間をかけて検討する。

  3. 千葉市や習志野市の埋立地の一部は、計画段階では「工業及び業務用地」となっていたものが、現在は住宅や団地などの用地として用途変更されている。このように都市計画及び用途地域を柔軟に考え、市川一期埋め立て地も土地利用を見直し、用途の定まっていない遊休地を含めて整理し、海に戻せる部分は積極的にヨシ原・干潟・浅瀬に復元する。この自然の回復にあたっては、かつての東京湾の原風景を念頭におく。
     したがって、直立護岸についても可能な限り取り除く方法を検討するが、その際、高潮等の防災上の問題も考慮する。

  4. 現在、開発により孤立を強いられている行徳鳥獣保護区、江戸川放水路(人工河川ではあるが、自然回復しつつある入り江)、谷津干潟、および三番瀬は、本来、東京湾奥都の一体の干潟浅海域である。そこで、三番瀬の自然環境の保全にあたっては、これら残された貴重な自然の有機的なつながりを重視し、東京湾奥部全体の自然復元と一体的に進める。

  5. 市川市臨海部のまちづくりについては、行徳鳥獣保護区、一期埋立によってつくられた工業専用地域、および三番瀬を含めて検討する。そして、その計画は鳥獣保護区と三番瀬の自然環境を最大限に生かしたものとする。

  6. 海苔漁、アサリ漁などの様々な漁業にとって、東京湾輿部が今以上に良好な環境となるような三番瀬の自然環境保全計画をたてる。

  7. 三番瀬は、環境教育の場、ハゼ釣り、潮干狩りなどのレクリエーションの場としても今後大いに活用すべき場所であるが、自然環境保全の立場から、そして東京湾の沿岸漁業の立場からも一定の制限は必要である。この三番瀬に関するワイズ・ユースについては、今後、市民参加で広く意見を取り入れながら検討するものとする。

  8. 上記のコンセプトに従い市民案を検討していくが、この市民案が三番瀬の自然環境の保全とワイズ・ユースにおいて十分なものであるかどうかは、新アセス法に基づいて調査し、環境影響評価を行ってから判断するものとする。



具体的な提言


 上記の基本コンセプトに従い、三番瀬の自然環境の保全と市川市臨海部のまちづくりについて具体的に提言するが、臨海部の現状、現在の用途地域の指定、行政の財政状態などから考えて、すぐに着手できる提言、将来的に具体化したい提言など、いくつかの実施期間に分けて提言する。

  1. 超短期的提言(現在〜3カ年の期間内で実現すべき提言)
    • 補足調査の結果だけでは不十分なので、三番瀬の現状について、あるいは東京湾全体における三番瀬の役割について研究調査する恒常的あるいは長期の調査機関を設置する。
    • 市川市民による陸域、沿岸城を含めた臨海部のクリーンアップにより、市民の三番瀬及び臨海部のまちづくりへの関心を高める(すでに今年11月に第1回が成功を納めている)。
    • 番瀬の自然環境の保全と市川市臨海部のまちづくりに関心を持つ市民のボランティア・グループを立ち上げ、上記aの運営に携わりながら、行政や専門家との間に協議機関を設置する。
    • 京葉線沿いの未利用地にこの地にふさわしい樹木を植栽し、トイレや水飲み場を整備して、定期的に市民に開放する。

  2. 短期的提言(3カ年〜5カ年の期間内で実現すべき提言)
    • 行徳の中心街と沿岸部を結ぶバス路線(海の見えるバス路線)を東西線行徳駅と南行徳駅の間で連行する。
    • 京葉線沿いの未利用地を実験的に自然復元して、ヨシ原、干潟、浅瀬をつくる。
    • 直立護岸沿いの澪(みお)を埋め戻し、直立護岸に階段を設置して、大潮時に干潟に降りられるようにする。不自然ではあるがこのようにして市民が三番瀬の水と砂(泥)に触れ合えるようにする。
    • 漁協と協議して、漁協がつくった人工干潟を市民に開放するため、現在崩壊寸前となっている人工干潟にわたる橋を三番瀬にふさわしい形で再整備する。
    • 行徳鳥獣保護区と東京湾との潮の行き来を改善する。具体的には現在の導水路を開渠、拡幅し、できるところは護岸を自然に近い形とする。
    • 京葉線塩浜駅から直接行徳鳥獣保護区に行ける通路を作る。同時に、行徳鳥獣保護区から開渠の導水路沿いに海岸線へ出られる通路をつくる。

  3. 中期的提言(5カ年〜10カ年の期間内で実現すべき提言)
    • 市川市塩浜地区の土地利用の見直しを行い、工業専用地域から「市民が三番瀬の自然環境に触れ、自然体験や環境学習が行えるような用途地域」に変更していく。
    • 上記aを実現するために、塩浜地区の工場や倉庫等の事業者と調整会議を持つ。
    • 市川市及び浦安市の埋立地の一部をヨシ原、干潟、浅瀬等に戻していくために、市川市と浦安市で自然復元調整会議を行う。その際、市川側の直立護岸と浦安側の階段護岸をどのように取り除き、高潮から陸城をどのように守るかを検討する。その際、千葉県企業庁並びに環境庁にも積極的に協力を要請する。

  4. 長期的提言(10カ年〜50カ年の期間内に実現すべき提言)
      《10〜30カ年》
    • 東京湾奥部の自然環境の改善を図るために、神奈川県、東京都、千葉県、環境庁で「東京湾環境保全プロジェクト」を発足、その中で三番瀬の自然環境の保全にとまらず、東京湾全体の環境保全や原風景の回復を考え、実施する。
    • ただし、上記プロジェクトは、東京湾漁業の振興、東京湾と市民の触れ合いなど、ワイズ・エースに関する検討も行う。
    • ある程度自然環境の復元が進んだ塩浜地区に「三番瀬環境学習センタ−」と「東京湾研究所」をつくり、三番瀬と市川市臨海部を「浅瀬と干潟」に関する学習と研究の場とする。

      《30〜50カ年》
    • 自然回復を行った地区で、回復の良好な場所については、新規開発計画が行えないように法的整備を図る。

    以 上










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