三番瀬埋め立てによる

 下水処理場建設計画は再検討を


  〜江戸川左岸流域下水道計画の根本的見直しを求める〜


千葉の干潟を守る会





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 三番瀬の保全にとりくむ市民団体「千葉の干潟を守る会」は(1999年)12月24日、千葉県が三番瀬埋め立て予定地に流域下水道の終末処理場建設を計画していることについて再検討を求める意見書を、「計画策定懇談会」の委員に提出しました。
 なお、「計画策定懇談会」は、三番瀬埋め立て計画について学識経験者らの意見を聞くために千葉県が設置したものです。


 


1999年12月24日

 計画策定懇談会委員 様

千葉の干潟を守る会
代表 大 浜  清


 日頃は、千葉県民のためにお役目ご苦労様です。
 同封しました資料は、下水処理場に対する私たちの見解です。
 ご参考していただいて様々な議論を展開していただきたく思います。


見  解



三番瀬埋め立てによる下水処理場建設計画は再検討を

〜江戸川左岸流域下水道計画の根本的見直しを求める〜


千葉の干潟を守る会 代表 大浜 清



1.はじめに

  私たちは下水道法の精神と都市計画中央審議会基本政策部会の「水・緑・環境小委員会」の検討内容をふまえて、下水道計画の根本的な見直しをここに求めます。


2.三番瀬埋め立てによる処理場建設は環境破壊

  県の補足調査によれば、三番瀬の水質浄化能力は下水処理場に換算すると13万人分の生活排水浄化力に相当するという。“天然の下水処理場”となっている三番瀬をつぶして下水処理場をつくるのは愚かなことである。
  また、猫実川の水がノリ漁に悪影響を及ぼした時期は1981〜91年の10年間、即ち、流域下水道第2処理場の処理水が猫実川を通じて三番瀬に放流されていた期間であって、最近、全国で下水道処理水とノリのバリカン病の関係が問題とされている(『水情報』99年9月号)。三番瀬における下水処理場建設は二重の環境破壊を起こすこととなる。


3.第2処理場だけでも10年以上は処理可能

  稼働中の江戸川第2終末処理場は現在、増設工事中で、2000年度には464,000トン/日の処理が可能となる。2010年頃には、570,000トン/ 日の処理が可能になるといわれている。これに対して、江戸川左岸流域下水道の現在の処理水量は237,020トン/日(平均)である。今後の汚水流入量の見込みをみても、例えば、幹線管渠のうち松戸幹線と市川幹線は、あわせて約20万トンの下水処理が見込まれているが、その全線完成はかなり先になり、少なくとも10年以上はかかる。というのは、この2つの幹線は、外環道路や市川市都市計画道路の道路下に設置が計画されているが、両道路とも工事着工の見通しがないからである。こうしたことを考えると、江戸川左岸流域下水道の下水処理は、現在の第2終末処理場だけでも10年以上は処理が可能である。期間に余裕があるので、三番瀬埋め立てによる処理場建設は見送り、下水道計画の根本的な見直しを進めるべきである。


4.三番瀬に処理場をつくらなくても、下水の高度処理は可能

 三番瀬に第1終末処理場をつくらなくても、下水の高度処理は十分に可能である。
 県の予測数値を前提にし、第2終末処理場以外で処理が必要な量を30万トンとした場合でも、次のような様々な方策が考えられる。
  • 既設の処理場(市川市の菅野処理場、松戸の金ヶ作、新松戸両処理場)を存続させれば、5万トン/日が処理できる。
  • 都市計画決定されている第1処理場予定地の北半分は現在更地同様になっており、ここだけで20ヘクタール確保できる。三番瀬につくろうとしているのと同面積である。
  • 浦安市の埋立て地にある県企業庁管理の未利用地を利用する。
  • 市川市臨海部の工場などは次々と撤退しつつある。この工場跡地や浦安市の鉄工団地を買い上げて処理場をつくる。
  • 県は江戸川左岸流域下水道と印旛沼流域下水道の連絡幹線の建設を計画しており、間もなく工事が始まる。この連絡幹線を利用して、江戸川左岸の一部の下水を印旛沼流域下水道の花見川終末下水処理場で処理する。


5.流域下水道計画の根本的見直しを

  以上は現在の流域下水道方式を前提にしての代案だが、流域下水道計画そのものの抜本的な見直しが必要である。私たちは次のような検討事項を提案する。
@ 小地域でリサイクルすること
 流域下水道方式の今後の推進は原則としてストップし、人口密度の高い都市部では小規模の公共下水道あるいは簡易下水道で、逆に人口密度の低いところでは各戸に合併浄化槽をつけるというような、地域の条件に応じた様々なものを地元の責任で作る方式に切り替える。このことは国の「水・緑・環境小委員会」の検討内容と合致するものである。
                 
A 地域の里山、森、水田、小川、池などを組み合わせた下水道
 自然がもつ浄化力を最大限に利用する。例えば里山や森、水田(特に休耕田)、小川、池、干潟などが持っている浄化力を活かし、これらと組み合わせた下水道づくりを進める。

B 自然の持つ浄化力を最大限利用すること
 強大な浄化力を持つ三番瀬を全面的に残してしっかり管理し、三番瀬の浄化機能と遊水池などを利用した浄化を組み合わせれば、費用も安くなり、水質もより浄化される。また水循環という点からも理にかなっている。
                   
C 新しい下水処理のあり方を、市民、研究者、行政などを含め協議の場をつくる
 新しい下水処理のあり方を、市民、研究者、行政などを含め協議の場をつくることが必要である。




《参考》

 都市計画中央審議会基本政策部会の「水・緑・環境小委員会(第3回)議事概要」より

〇下水処理のあり方
  • 水がきれいであればという前提で、積極的に「漏らす=地中へ還元(以下「地中還元」)する」下水道も考えられるのでは。
  • 下水処理システムのランニングコストを低く抑えるため、発生源対策を規制部局がしっかりとやるようにすべきである。
  • 流域下水道方式は下流部で一括して処理・放流を行うが、これからはローカルに、あるいはリージョナルな単位で小規模化して処理をすべきでないか。
  • 下水処理をローカルにするべき(簡易浄化)。下流で処理し上流へポンプアップするのは無駄である。
  • 分流式下水道の雨水管渠は地中還元することを原則とすべき。
  • わが国の下水道整備の中で環境への目配りがまだ十分でない点がある。

  (注) 出典は建設省のホームページ







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