三番瀬円卓会議はこれからが本番

〜一傍聴者の感想〜

千葉の干潟を守る会 竹川未喜男



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 「三番瀬を守れ」の世論が産み落とした「円卓会議」は、これまで3回開催され、何をめざし、どんな手順で「再生計画」を検討していくかについて、ひと渡りの論議が行われました。
 これと並行して、2月には学識経験者による「専門家会議」も開かれました。いずれも、三番瀬の現状はどうなっているのか、何から手をつけるべきなのか、円卓会議参加者の共通認識を得るための論議でした。
 各論を検討する2つの小委員会の設置もようやく決まりました。三番瀬の現状調査と緊急対策などをテーマにして、まず4月下旬、「海域小委員会」での論議も始まりました。5月は、26日に第4回の円卓会議、15日は2回目の「海域小委員会」、そして21日には第1回の「護岸・陸域小委員会」といったスケジュールで本格的な活動が予定されています。この間の経過について、一傍聴者として感じたことを述べたいと思います。


●開かれた円卓会議」をめざして

 「徹底した情報公開」「住民参加」という画期的な運営方式は、曲がりなりにもこの円卓会議に参加者が信頼を寄せている源となっています。こうした成果は、円卓会議や小委員会の委員構成、傍聴者発言、会議事務局体制、会議運営などについて、その都度、大浜さん、牛野さん、田久保さんたち、それに環境団体や一般市民から強い働きかけが続けられ、それに岡島会長が応えようと努力された結果だと思います。これに比して、肝腎の会議の目的に関してはまだ釈然としない点があります。
最初から問題とされたのが「里海の再生」という言葉でした。「埋め立て計画が中止になった後始末」が再生の意味として語られたり、「住民参加による公共事業」ありき、という傾向がチラホラ見え、疑念を強くしました。
 なぜこのように曖昧な言葉が使われたのでしょう。まずは、想像以上の社会的経済的インパクトでしょう。現実に、「白紙撤回」、「埋め立て中止」と、政策の大転換が行われてみれば、今までのしがらみもあるでしょう。時代の様変わりな変化や、過去の大きな過ちに気づいていたとしても、です。
 また、役所の、一度決めたら簡単に舵は切り替えられないという頑固な体質のこと、埋立推進派が圧倒的多数をしめる県議会のことを考えたに違いありません。かくして政治的な表現としての「里海の再生」が使われたのではないでしょうか。それだけに私たちは大勢の県民の声を集めて、円卓会議を監視し、それをサポートしてきたのだと思います。


●未来指向でみんなの三番瀬を

 覚醒の時代になりました。人々はようやく、かけがえのない自然の価値にめざめ、豊かな働き場所を奪われたことに気づき、それが「三番瀬を守れ」の世論になったのです。
 しかし、先日の円卓会議でも、「計画は27年来進んでいない。最後のとりで470f……」とか、「工事は一日も早く」と発言された臨海部企業を代表する委員の方もおられました。これが円卓会議の現実です。
 しかし、いま円卓会議で大切なことは、過去の過ちは置いておいて、いかにして冷静に議論しあう土俵(共通の認識)づくりに互いに努力することではないでしょうか。市川ではそうした芽が出てきているそうです。願わくば、行政、企業、漁業、そして一般市民もそれぞれが共通の目標に向かって、背負わされた義務を果たしていただきたいと思うのです。


●鮮明になってきた争点と傾向

 会議でいつも浮かび上がってくる主な争点などを確認してみたいと思います。
  1. 「三番瀬は死に瀕している」「一刻も猶予ならない重症だ」「一年も何もしないで放置してはおけない」という見方に対して、「一応環境はそれなりに安定している」「手をつける前に時間をかけて十分な調査をすべきだ」「1年と期限をきって進めるのは問題だ」という見解があります。(私は後者の考え方です)
  2. 「市川寄りの海域(猫実川河口域)はヘドロで、悪臭を放ち、ここの停滞域が環境悪化をもたらしている」「この河口域はアサリやノリの養殖に悪影響を及ぼす、漁業にとって価値のない場所である」という主張に対しては、「補足調査でも、最近の市民調査でも、ヘドロなどではなく、豊かな底生生物、稚魚が発生している安定した生きている干潟・浅海域で、浄化力もある」と反論しています。
  3. 「再生計画は、干潟・浅海域に砂を入れ、藻場、人工干潟などを考えている」との構想にたいしては、「現在ある干潟・浅海域を残し、できる限り埋め立て地を利用し、内陸性湿地などに戻していく」という考えが表明されています。
  4. これは争点というよりも、傾向といった方がよいと思います。国(とくに国土交通省)が進める「都市型公共事業」「都市再生」を源流とした自然再生型公共事業構想の落し子「自然再生推進会議」への姿勢です。そこの方針として、海域における「人工干潟」「藻場」「覆砂」などの土木的工事にたいして予算づけが行われています。現実に、行政、NPOなどのルートからさまざまな働きかけがきているようです。
 私たちは、「三番瀬再生」が国に振り回されることなく、円卓会議による自主的な計画にそって、むしろこちらから国に働きかけてほしいと思います。「予算取り」指向の計画づくりにならないよう望みます。何をぐずぐずしている、何も決まらないではないかと、事を急ぐ人たちや、これに同調したり、人工干潟などを大きくとりあげるマスコミの動きなども要注意です。


●まずは総合的な調査を

 次に、会議の中でさらに明確にしてほしい個別問題をあげたいと思います。
  1. 「開発重視の時代」の遺物である第二湾岸道路や、終末下水処理場計画は三番瀬、東京湾の環境改善とはまったく調和するものではありません。結論を先送りせず放棄すべきです。
  2. 当面の最重点を、自然資源保護を柱にした三番瀬の大計づくりのための住民・行政参加型の総合調査に置くことです。とくに、計画の核心にふれてくる、海水、河川水関係の対策、漁業の現況と、将来に資するための調査、そして臨海企業の立地に関する調査は大切だと思います。
  3. 干潟・浅海域の「自然再生推進」の技術面での保証となっている人工干潟、覆砂、藻場づくりの技術アセスメントの実施はぜひともやってほしいと思うのです。
  4. 海域小委員会で問題になっている「市川航路浚渫」(県実施)と「覆砂事業」 は、三番瀬海域の環境改善と関係が懸念され、しかもリスクの大きいことも指摘されています。過去のデータを公表し、予定されている、必要かつ慎重な調査の結果(公開予定)をもとに、科学的な見地から円卓会議の場で検討し、結論を出していただきたいと思います。

(2002年5月7日)   



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