〜「国際湿地シンポジウム in 和白干潟」に参加して思う〜
千葉の干潟を守る会 牛野くみ子
●「和白」は「三番瀬」と同じ構造
「国際湿地シンポジウム in 三番瀬」も盛況裡に終了し、(1999年)10月2日、国際湿地シンポジウムツアーの最終地である和白干潟に、大浜清さん、大浜和子さん、田久保晴孝さんの4人で向かいました。
和白干潟は駅から近いところにあり、それこそ都市の真ん中に位置しています。高級住宅地、マンション、別荘地に囲まれていますが、堤防がなく、面積は80ヘクタールと小さいですが、アシ原があり、塩性植物がありで、変化に富んだところです。クロツラヘラサギとミヤコドリが同時に見られるとのことです。干潟の前面で人工島(401ヘクタール)の工事が95年からはじまり、アオサがすごく茂っていて、その下は還元状態で真っ黒でした。
人工島は何のために造るかというと、(1)コンテナ埠頭としての大規模港湾。(2)サイエンスパークという名の研究・産業施設。(3)住宅用地──ということです。
(1)の港湾についてみれば、福岡市は港とともに発展していて、他市とは違って需要は増えている。また、この推進役は博多港運輸協会で、その会長は福岡市長である。水深13メートルの航路浚渫を行うため、面積は1000ヘクタールを超える、──とのことです。
(2)のサイエンスパークは企業誘致のための用地ですが、以前に埋め立てた「香椎パークポート」は売れ残りがあり、売れ残った土地でミニゴルフ場を造っている、とか。
(3)の住宅用地ですが、近くに操車場跡地や九州大学跡地があるので、これまでに計画戸数を7500戸減らしたが、5000戸は造る予定である、ということです。
この話を聞いて、三番瀬とまったくおなじ構造だなと感じました。つまり、“はじめに埋め立てありき”なのです。
●鳥や自然環境を守ることは、人間も守るということ
法政大学の五十嵐教授は、「臨海副都心開発はなにを教えているか」というテーマで、東京都の臨海副都心と和白の人工島の相似点を、財政面から話して下さいました。人工島造成は財政危機をいっそうきびしくし、財政破綻へと導くものなのに、そういう危機感を持たないということが危機であると話されました。
そもそも、人工島の工事費用は4600億円です。これに施設関係の費用を加えると、1兆円を超えるビッグプロジェクトです。工事費用は借金でまかない、埋め立て地を売却することでその借金を返済するという計画です。しかし、すでに「香椎パークポート」では売れ残りがあるのです。
さらに五十嵐さんは、平成9年度で3300ある自治体のうち、1800が「イエローカード」で、そのうちの200は「レッドカード」と言いました。これは、自治省がつくった企画に絶対的に従わねばならない準禁治産者といえるとのことです。
話をきいていて、これは臨海副都心とか和白の問題ということでなく、日本全体の問題であり、緊急性のある公共事業を除いては、いますぐストップをかけることが、21世紀を生き延びるための条件だと感じました。借金につぐ借金で子や孫を食う公共事業を許してはいけません。そして、鳥や自然環境を守ることが、結局は同じ生きものとしての人間も守ることなのだと、財政問題をとおして実感しました。
(1999年10月)
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