三番瀬を守る署名ネットワーク 牛野くみ子
家の前に海がある。東京育ちの私にとって、夢のような思いで習志野市に越してきた。潮の満ち干に関係なく、夢中でアサリ採りをした。夕焼けに染まる富士は一日の疲れを癒してくれた。海を眺めると心が豊かになった。
が、それも束の間、前面の海が埋め立てられると聞き、すぐに千葉の干潟を守る会に入り、「埋め立て反対」と一緒に叫んだ。もう27年も前のことである。
いま、船橋市と市川市地先に三番瀬(さんばんぜ)とよばれる海がある。海の中に字名があり、家康の時代は江戸城の台所を賄う御茶浦(おさいうら)として知られた海である。現在でも漁がされていて、キスやイワシ、アサリなどが採れ、私たちの胃の腑(ふ)を満たしてくれている。
1メートル以浅の浅場や干潟は1200ヘクタールあり、日の光がよく届くので、小さな生きものがたくさんいる。そして、それらは鳥や人間の餌になり、食物連鎖をくり返し、干潟をきれいにしている。
鳥の中でも、特にシギやチドリ類は泳げないので、浅場や干潟が必要で、オーストラリアから渡って来た鳥はここで餌を食べ、繁殖のためにシベリアやカムチャッカに向かう。ここは渡り鳥のガソリンスタンドであり、休息地である。それも国際的である。だから、世界中の人が三番瀬に注目する。
一昨年、オーストラリアのブリスベンで開かれたラムサール会議に参加し、三番瀬の保全を訴えた。オーストラリアで保護しても、日本の干潟が埋め立てられたのでは何もならないからである。
千葉県は三番瀬を埋め立てて港湾や流域下水道、湾岸道路を造る計画をしている。本当にそれらは私たちが必要とするものだろうか。もはや、埋め立ての時代ではない。県の計画を撤回させよう。私たちは、そのために署名行動にとりくんでいる。
(1998年5月)
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