流域下水道の問題点
東京の水を考える会 和波一夫
1.流域下水道とは
2つ以上の市町村にまたがり、都道府県が管理する下水道を流域下水道という。
下水道法では、次のように定義している。
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「もっぱら地方公共団体が管理する下水道により排除される下水を受けて、これを排除し、及び処理するために地方公共団体が管理する下水道で、2以上の市町村の区域における下水を排除するもので、かつ、終末処理場を有するものをいう。」
2.三番瀬埋め立て計画案における下水処理場用地
三番瀬の埋め立ての見直し計画案において埋立地使用目的の中心としてうたわれているのが、下水処理場(終末処理場)用地。
市川市側の90ヘクタール埋め立てのうち20ヘクタールが下水処理場用地で、江戸川左岸流域下水道第一処理場の建設地を確保するとしている。(第一処理場の予定用地は、現計画では市川市妙典・本行徳にあるが、用地取得がむずかしいという理由で三番瀬埋立地に確保することに。)
江戸川左岸流域下水道は、関宿町、野田市、流山市、松戸市、市川市、浦安市などの下水をまとめて処理するもので、全体計画の処理対象面積は210キロ平方メートル、幹線管渠の総延長は125キロになる。
市川市福栄にある第二処理場は1981年から稼動。現在は1日平均で約20万立方メートルの下水を処理している。
3.第一処理場の下方修正
千葉県は当初の740ヘクタールの埋め立てを101ヘクタールに縮小した見直し計画案を示した。下水処理場用地は48ヘクタールを20ヘクタールに、一日最大処理能力も107.5万立方メートルから31万立方メートルに下方修正した。しかし、それでも過大である。
4.千葉県の見直し計画案の検証
〜必要性が無ければ、三番瀬の埋め立ては不要〜
流域下水道全体の最大処理水量は77.4万立方メートル/日。
このうち、第二処理場は今後の拡張で46.6万立方メートル/日になるが、残りの31万立方メートル/日が不足するので第一処理場が必要ということになっている。
この77.4万立方メートル/日という数字は、処理人口143万人に、1人1日最大処理水量480リットルという計画値から算出している。
処理人口を検討する。江戸川左岸流域下水道全体計画の対象地域の人口は約130万人。今後の人口増加で140万人程度は予想されるが、人口分散地区が除かれている下水道法事業認可区域の計画処理は約90万人である。これに認可区域から除かれている人口集中地域を加えても合計約100万人。見直し案の143万人は過大。
5.1日処理水量も過大
第二処理場の1人1日最大処理水量の実績からは、概ね370リットル(過去10年平均)で、将来余裕をみても420リットルでよいはず。これに100万人を乗じると42万立方メートル/日となる。これに対して第二処理場の将来の最大処理能力は46.4万立方メートル/日。東京の水を考える会の試算では、第一処理場は不要となる。
6.そのほかの問題点
下水処理場の能力は、敷地面積では決まらない。東京都区部の下水処理場と比べ、現在使用されている第二処理場は敷地面積に余裕がある。処理施設をコンパクト(2階式、深槽曝気式など)に設置すれば現計画以上の処理能力が可能。下水処理技術の革新(例えば、包括固定化微生物処理法、膜ろ過処理など)で、さらに敷地面積を有効に活用できる可能性が高い。第一処理場が必要という千葉県の主張は、20年、30年後のことである。既存の処理方法・施設を前提にすることはない。
人口密度の低い農村部まで流域下水道を普及させることは非現実的である。流域下水道は、巨大管渠と大規模処理湯の建設が必要なため、費用と時間がかかる。小型分散処理方式を選択すべきである。
各市町が建設する支線管渠の建設費を含めた総事業費は、普及人口1人あたり約100万円にもなる。それに対して、戸別合併処理浄化槽やコミュニティプラントなどの小型分散処理方式は20万円〜30万円程度。下水道の普及もはやくなる。
千葉県全体の人口はあと10年程度でピークを迎える。計画人口はさらに下方修正されることが予想される。
節水対策を推進すれば、水使用量はもっと削減でき、処理水量も減る。
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