〜永尾俊彦さんが三番瀬再生をレポート〜
石井伸二
自然再生をうたい、市民参加を装って自然を破壊するのが、公共事業の新しい動きである──。ルポライターの永尾俊彦さんはこのように書き、その典型例として東京湾・三番瀬の再生事業をえぐっています。
9月4日の『しんぶん赤旗』に掲載されたレポートです。
■人工干潟賛成の委員を多数選ぶ
〜一見民主的な円卓・再生会議だが〜
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《東京湾の干潟は、すでに8割以上が埋め立てられてしまったが、自然保護運動によって三番瀬の埋め立ては辛くも阻止されてきた。そして、01年に誕生した堂本暁子知事がついに埋め立て計画を白紙撤回した。
その上、住民、漁民に地元企業や自然保護団体の人々など利害関係者が話し合う円卓会議で再生計画をまとめると発表をしたので、新しい公共事業のあり方として注目された。 だが、一見民主的な円卓・再生会議だが、実は事務局を担当した県が、最大の争点になると予想された人工干潟に賛成の委員を多数になるよう選んでいた。》
■堂本知事は第二湾岸道建設に固執
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《堂本知事は三番瀬は保全すると言いながら、県議会で6割以上の議席を占める自民党の要求する第二東京湾岸道路は造るとしている。第二湾岸は、まだ都市計画決定はされていないが、撤回された三番瀬埋め立て計画では埋め立て地を突っ切って浦安市と船橋市を結ぶ予定だったので、既に両市には用地が確保されている。だから、第二湾岸を通すには三番瀬の上を高架で通すか、地下で通すかだが、いずれにせよ生態系や住環境が破壊されるので強硬な住民の反対が予想される。》
■人工干潟化は第二湾岸道の“地ならし”
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《そこで、県が狙っているのが猫実川河口の人工干潟化だ、と自然保護団体は見ている。「自然再生」という名目なら住民の反発も少ないだろうし、あらかじめ人工干潟にしておけば、希少な干潟はすでになくなっているので第二湾岸への反対も弱くなるというわけだ。
それで、円卓会議では堂本知事の意をくんだ会長の意向で第二湾岸は議題にされなかった。また、自然保護団体の委員は、自然の再生とは何かという最も大切な本質論を議論するよう再三提起したが深められず、なぜ人工干潟が自然の再生になるのかについても説得力のある議論は聞けなかった。》
■市民参加の呪縛
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《そして、自然保護団体の委員は、会議を分裂させてはいけないという責任感から妥協し、人工干潟につながりかねない計画案を書いてしまった。それを、別の自然保護団体のメンバーは「市民参加の呪縛(じゅばく)」と言った。
自然再生をうたい、市民参加を装って自然を破壊するのが、公共事業の新しい問題点である。》
(2007年9月)
★関連ページ
- 三番瀬は今(田久保晴孝、2007/9)
- 三番瀬問題の深層をえぐった本〜永尾俊彦著『公共事業は変われるか』岩波ブックレット(「自然通信ちば」編集部、2007/7)
- 三番瀬再生のウラに第二湾岸道あり〜田中康夫長野県知事も見抜いていた(公共事業と環境を考える会、2006/5)
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