猫実川河口域は「重要な場所」

〜平成22年度三番瀬自然環境総合解析報告書の評価〜


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 千葉県は2011年(平成23)年3月、『平成22年度三番瀬自然環境総合解析報告書』を発行しました。報告書はとても分厚いものです。A4判で1200ページもあります。「概要版」は68ページです。

 報告書は、2006(平成18)年度から2009(平成21)年度におこなわれたさまざまな調査の結果をもとにし、総合的に解析したものです。また、県が1999(平成11)年にまとめた「市川二期地区・京葉港二期地区計画に係る補足調査報告書」や、前回の総合解析(「平成15年度三番瀬自然環境総合解析(三番瀬の現状)報告書」)の結果との比較検討もしています。

 対象は、三番瀬の地形、流況、水質、海生生物、鳥類です。とても内容の濃いものです。三番瀬の自然環境の現状がよくわかります。
 全国の干潟でこれほど内容の濃い調査や解析をやっているところはほかにはないとのことです。

 報告書の中から、猫実川(ねこざねがわ)河口域に関する記述を転載させていただきます。この海域は、保全と開発(人工干潟化)の攻防が何年も続いている海域です。
 結論として、こうまとめてあります。
     「三番瀬海域には泥質の浅場環境を有する区域は他にはなく、生物の生息環境の多様性という面で重要な場所である」
 これは真っ当な評価です。




「平成22年度三番瀬自然環境総合解析報告書」より抜粋

         ・報告書 第W編 海生生物 165ページ
         ・報告書(概要版)      37ページ

(6)その他
 1) 猫実川河口海域
     猫実川河口海域は、流入量はわずかではあるが淡水の流入する汽水環境となっている。底質は、他の浅海域に比べてシルト・粘土分や強熱減量の値が高く、酸化還元電位が低い。そのため生物群集も他の浅海域と異なり、砂泥質から泥質の環境を好む種が優占している。小倉ら(2009、注7)によると、嫌気的で有機汚濁の進んだいわゆる「ヘドロ(※1)の海」ではなく、江戸川左岸流域下水道終末処理場の放流水により一時的に有機汚濁が進んでいたものの、放流先が旧江戸川に変更され、現在は改善している。
     また、猫実川河口海域にはカキ礁(※2)が形成されている。航空写真から画像解析を行った結果、1980年まではカキ礁の形成は確認されず、1998年以降に確実にカキ礁と判定できるようになり、2006年7月には4,010m2であった(環境省、2007、注8)。
     猫実川河口周辺のみに高密度のアナジャコ類等の生息孔やヤマトオサガニ等の希少種が確認され、アサリの確認は比較的少ない等、泥質の浅場に対応した生物相が形成されている。三番瀬海域には泥質の浅場環境を有する区域は他にはなく、生物の生息環境の多様性という面で重要な場所である。


 ※1:東京湾で「ヘドロ」とは、強熱減量10%以上、微細泥率99%
    以上、酸化還元電位は通年にわたりマイナス数百mVの値の
    底質を示す。

 ※2:カキ礁とは、内湾や河口域に発達し、マガキ等のカキが層状
    に積み重なって発達した礁で、一般的に水質浄化の機能を持
       ち、様々な生物が生息場所や産卵場所として利用することに
       より、沿岸汽水環境を保持していることが知られている。

 注7  小倉久子、鯉渕幸生、中村裕樹、青山一(2009):東京湾三
    番瀬猫実川河口周辺部の底質環境、用水と廃水、Vol.51、
    No.11、39−44

 注8 環境省自然環境局生物多様性センター(2007):第7回自然
    環境保全基礎調査生物多様性調査種の多様性調査(千葉県)
    報告書







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