公共事業と環境を考える会
■猫も杓子もエコ、エコ、エコ…
洞爺湖サミットが開かれたこともあり、日本の新聞やテレビは“エコ”の大合唱です
行政も「地球温暖化対策」や「生物多様性」を盛んに宣伝しています。まさに、“猫も杓子もエコ、エコ、エコ”という感じです。
しかし、実際はどうなっているのでしょうか。それは、泡瀬干潟(沖縄)や三番瀬をみればよくわかります。
泡瀬干潟は週刊誌『SPA!』(2008年7月15日号)の「史上最悪! 沖縄リゾート開発の全貌」が伝えるとおりです。
泡瀬干潟は、多種多様な生き物が豊富に生息する貴重な干潟です。“新種や希少種の宝庫”とも呼ばれています。ところが、そんな大切な干潟を埋め立てて、ホテルや多目的広場、住宅、マリーナ、ビーチ、人工干潟などをつくる「泡瀬海洋リゾート開発計画」がどんどん進んでいるのです。この開発計画は誰が見ても破綻していることが明らかなのに、です。結局のところ、「すべてはカネのため」なのです。
■ホンネは“生物多様性よりも道路”
三番瀬も、「生物多様性の回復」とか「埋め立て前の環境をとりもどす」「ハマグリやアオギスなどの失われた生物を復活させる」などをキャッチフレーズにして、三番瀬の一部(猫実川河口域)を埋め立てて人工砂浜(人工干潟)にする動きが着々と進んでいます。
その本当のネライは、三番瀬で中ぶらりんになっている「第二湾岸道路」(第二東京湾岸道路。有料高速道路)をつくることです。
ホンネは、“生物多様性よりも道路”です。「生物多様性の回復」などは詭弁でしかありません。
人工干潟をつくれば、本当にハマグリを復活させたり、埋め立て前の環境をとりもどせるのでしょうか──。そんなことはありえません。
というのは、三番瀬や東京湾に流入する膨大な汚濁負荷は無視されているからです。また、埋め立て地もいっさい手をつけようとしません。
そんな弊害要因を放置したまま、「自然再生」(=人工干潟造成)の必要性が声高に叫ばれているのです。本当にマンガチックです。
そもそも、三番瀬のように湾に開いた海域での人工干潟の成功例はひとつもありません。無理に造成しても、それを維持するために永久的に砂を補給せざるを得ないなど、莫大な経費が必要となります。
他方で、覆砂によって、いま生息する生き物は全滅です。造成後も砂補給をつづけるため、生き物があまり育ちません。結果として、将来の大きなツケをもたらすことになるのです。
■泥質干潟とカキ礁をボロクソに批判する本
この4月、『海辺再生─東京湾三番瀬』という本が築地書館から刊行されました。書いたのは、あるNPO法人です。
内容は、猫実川河口域に土砂をいれて人工干潟を造成すべきというものです。この海域に広がる泥質干潟をボロクソ批判です。
また、天然のカキ礁については、こんなことを書いています。
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《「カキ礁」は、青潮被害を一層大きくする危険性をもっている。青潮が「カキ礁」を襲えば、カキはすぐに死ぬだろう。そうなると、死んだカキによって海水は一気に汚れてしまい、青潮で弱ったほかの生物にさらに深刻な影響を及ぼすことになる。》
この論理でいえば、アサリもハマグリもないほうがいいということになります。青潮が襲えばアサリなども大量に斃死するからです。
こんなばかげたことを主張する本を名のある出版社が刊行したりしています。
これが、いまの日本の実態です。
■従来型の環境破壊を続けながら「自然再生」を叫ぶ
国民が熱狂的に支持した小泉「構造改革」は、日本をメチャクチャにしました。格差拡大や拝金主義の横行です。
日本経済もヘタってしまいました。世相も乱れに乱れ、人心の荒廃も急速に進みました。凶悪な殺人・強盗事件の多発、政治家の金銭疑惑、官僚汚職、企業の不祥事が連日のようにマスコミで報じられています。
これらは、小泉「構造改革」がもたらしたものです。
干潟や浅瀬も同じです。泡瀬干潟のように、一方で従来型の環境破壊を進めながら、片方では、三番瀬のように、「自然再生」や「生物多様性回復」などという名で生態系を破壊する事業が進んでいます。
そんな自然破壊に、“環境派”の学者や専門家、一部環境NGOも荷担しているのです。
このままでは、日本の干潟・浅瀬はよりいっそうメチャクチャにされるのではないかと、私たちは危惧しています。
(2008年7月)
★関連ページ
- 破綻必至でも強行 泡瀬干潟埋め立て開発〜週刊誌『SPA!』の記事より(県自然保護連合、2008/7)
- 三番瀬を“第二の諫早湾”にするな!〜猫実川河口域の人工干潟化は愚行(県自然保護連合、2008/7)
- 三番瀬問題のウラにあるもの〜公共土木事業は“金のなる木”(公共事業と環境を考える会、2008/2)
- “自然再生とは何か”が問われている三番瀬〜『中学校社会科のしおり』付録(県自然保護連合、2008/4)
- 霞ヶ浦人工砂浜の惨状をえぐる<〜TBS「噂の!東京マガジン」(2008/3/30)
- 人工干潟は期待はずれの結果に〜三河湾の人工干潟と天然干潟を見学(2007/1/14)
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