三番瀬保全で環境相に要望

〜8団体と日本湿地ネットワーク〜



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 (2009年)7月9日、三番瀬の保全問題で環境大臣に要望書を提出しました。提出したのは、三番瀬保全8団体と日本湿地ネットワーク(JAWAN)です。環境省自然環境局野生生物課の小川靖志課長補佐と西野雄一計画係長が応対してくれました。

 8団体による要望内容は次の2点です。
  • ラムサール条約の「湿地復元の原則とガイドライン」に則り、三番瀬の保全に理解と尽力を願いたい。
  • 三番瀬を次回の第11回締約国会議(ルーマニア)でラムサール登録湿地とするために尽力願いたい。

 猫実川河口域(市川側海域の一部)を人工海浜化にする動きが強まっていることや、ラムサール登録などにかんする千葉県、市川市、関係漁協などの姿勢を説明しました。
 また、県の生物調査や市民調査の結果などを示し、この海域は生物相が非常に豊かであり、また東京湾の水質浄化や漁業にとっても重要な役割を果たしているなども説明しました。


◆三番瀬はラムサール登録候補地

 ラムサール登録については、小川課長補佐がこう答えました。
     「次回締約国会議までに最低6カ所を登録することにしており、三番瀬も候補地としている」

     「第1段階として船橋側を登録してほしいという話がでていることは知っているが、環境省としては三番瀬全体を考えている。登録する際は、行徳鳥獣保護区を含めることも考えられる。また、すでにラムサール登録湿地となっている谷津干潟と一体で登録することも可能だ」
 このように、環境省は三番瀬のラムサール登録について前向きです。障害となっているのは千葉県の姿勢であることが改めて浮き彫りになりました。

 以下は、8団体と日本湿地ネットワークが提出した要望書の内容です。



8団体の要望書





三番瀬の保全とラムサール登録について(要望)

 私たちは、東京湾奥部に残された貴重な干潟・浅瀬「三番瀬」を次世代に残すために活動している団体です。
 さて、三番瀬は平成13年9月に埋め立て計画が白紙撤回されたものの、再び開発の危機にさらされています。そこで、三番瀬の保全策として下記の2点を要望させていただきます。


  1. ラムサール条約の「湿地復元の原則とガイドライン」に則り、三番瀬の猫実川河口域の保全にご理解ください。

       市川市は今年5月28日、「三番瀬の再生と行徳臨海部の環境改善に関する要望書」を千葉県知事に提出しました。その中に、猫実川河口域(三番瀬の市川側海域の一部)の人工海浜(人工干潟)化が盛り込まれています。
       市川市はまた、今年6月20日発行『広報いちかわ』の1面において、「自然病む三番瀬を再生し、海辺にふさわしいまちへ」のタイトルをつけて、同海域の人工海浜化を市民にアピールしています。同市がめざしているのは、臨海部(市川塩浜地区)の再開発と絡めて同海域を人工ビーチにし、再開発の採算性を確保することです。
       しかし、猫実川河口域は、いまも水質浄化能力が高く、多種多様な生き物が生息する重要な浅瀬であり、三番瀬の中で最も生物相が豊かな海域です。大潮の干潮時には広大な泥質干潟が現れ、干出域は年を追うごとに拡大しています。県の生物調査では、動物195種、植物15種が確認されています。そのなかには、県レッドデータブックに掲載されている絶滅危惧種も11種が含まれています。
       まさに、ここは、東京湾漁業にとって“いのちのゆりかご”となっているのです。また、砂質を基調とする三番瀬の中に泥質域やカキ礁があるという、この海域の底質環境の多様性があればこそ、三番瀬の生物多様性が高められているのです。
       このような干潟と浅海域に土砂を投入して人工干潟を造成することは、埋め立てと同様に三番瀬の干潟・浅瀬の生態系を大きく改変し物質循環を分断することであり、多様な環境と生物、漁業などが微妙なバランスを保ちながら関係しあい成り立っている三番瀬全域の生態系に重大な影響をおよぼします。
      この点は、たとえば大野一敏・船橋市漁協組合長も、「海にいろいろな生き物がいないと漁業は成り立たない。あそこが埋まったら、ゲームオーバーだ」(『サンデー毎日』2005年7月24日号)と述べています。
       だからこそ、この海域を90ヘクタール埋め立てて、その前面に人工干潟を造成する市川2期埋め立て計画は、平成13年に白紙撤回されたのです。その白紙撤回については、環境省が第二東京湾岸道路を三番瀬に高架で通すことに反対したことや、川口順子環境相(当時)が平成13年1月12日に三番瀬を視察され、埋め立てに強い懸念を表明されたことが大きく影響を与えました。
       市川市の人工海浜化構想は、ラムサール条約の「湿地復元の原則とガイドライン」が明記している「現存する湿地の保全維持の優先」に反するものです。また、生物多様性基本法の趣旨や、生物多様性保全を課せられた地方自治体の責務にも真っ向から反するものです。
       つきましては、猫実川河口域の人工海浜(人工干潟)化の是非について、環境省にぜひとも現地視察をしたうえで、環境省としての見解を意思表明してくださるようお願いします。

  2. 三番瀬を次回締約国会議でラムサール登録湿地とする方向でご尽力ください

       三番瀬のラムサール登録については、環境省も有力候補地の一つにあげているところです。また、三番瀬再生計画検討会議(通称:三番瀬円卓会議)が平成16年1月に千葉県知事に提言した「三番瀬再生計画案」でも、登録促進が盛り込まれています。さらに、三番瀬再生会議が平成20年12月に知事に提出した意見書でも、「ラムサール条約への登録推進に対して、県のリーダーシップを発揮されるよう要望します」と明記されています。ところが、千葉県は登録手続きを延々と引き延ばしています。
       県はこれまで、登録の合意が得られない理由として、漁業者の反対や三番瀬転業準備資金融資問題の未解決をあげていました。しかし、平成20年3月、船橋市漁業協同組合がラムサール登録に賛成する議案を臨時総会で採択しました。また、転業準備資金融資問題も同年11月に解決しました。ところが県は、相変わらず「利害関係者の合意を得るために努力する」を繰り返し、登録手続きをしようとしません。
       今年6月12日の三番瀬保全団体と県自然保護課長の会談では、課長は「ラムサール登録に反対しているところはどこもない」としながらも、「今後も合意形成に努力しつづける」と答えました。
       つきましては、貴省におかれましては、次回締約国会議において三番瀬を登録湿地にできるよう、ご尽力ください。よろしくお願い申し上げます。

 以上です。






JAWANの要望書



2009年7月9日 

 環境大臣 斉藤鉄夫 様

日本湿地ネットワーク
代表 辻 淳夫


東京湾三番瀬のラムサール条約登録促進の要望

 拝啓 時下益々ご清栄のこととお慶び申し上げます。日頃、環境保全に関してご尽力いただいていることに感謝申し上げます。
 さて、東京湾三番瀬を次回第11回ラムサール条締約国会議に条約湿地として登録されますことを下記の通り要望します。


 東京湾三番瀬の埋立計画が平成13年9月に白紙撤回となり、「三番瀬再生計画検討会議」及び後継組織とされる「三番瀬再生会議」において「保全と再生」について検討がなされてきました。
 第27回三番瀬再生会議(平成21年6月11日)において、千葉県は、「三番瀬のラムサール条約湿地の登録に反対する団体はない」と発言し、今般の千葉県議会においても同様の質疑がなされています。
 三番瀬は、千葉県による生物調査(市川塩浜地区)においても千葉県レッドデータブック掲載種11種を含む動物195種、植物15種が確認され報告されている干潟・浅海域です。三番瀬は、ラムサール条約登録基準を満たしており、環境省からも登録地の有力候補と明言されてきました。また長年懸案であった「転業準備資金」問題も解決しました。さらに平成20年3月、船橋市漁業協同組合は、ラムサール登録に賛成する議案を総会で採択しました。漁協の組合員に漁業の操業や漁港の整備にラムサール条約が障害とならないことが理解されたものと考えます。今後、三番瀬をラムサール条約に登録する条件を一層整えていかねばなりません。
 つきましては、貴省におかれましては、利害関係者に働きかけ、次回第11回締約国会議に「東京湾三番瀬」を登録湿地にできるようご尽力をお願い申し上げます。

以上







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