根本問題を棚上げしたまま事業が進む

〜第28回「三番瀬再生会議」〜



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 (2009年)9月2日、三番瀬再生会議の第28回会合が船橋市のきららホールで開かれました。主な議題は、平成22年度の三番瀬再生事業の方向性についてです。
 とくに印象に残った点を2つ紹介します。


◎自然環境に関する評価を棚上げしたまま
  人工干潟化をめざす事業が進む

 ひとつは、三番瀬の自然環境に関する評価を相変わらず棚上げしたまま、猫実川(ねこざねがわ)河口域(三番瀬の市川側海域)を人工干潟にする事業がどんどん進んでいることです。
 県が提示した「平成22年度 三番瀬再生事業の方向性(案)」の「1.干潟的環境(干出域等)形成の検討・試験」の項にこんなことが書かれています。
    《三番瀬では、埋め立てによる干潟の減少や地盤高の低下による浅海域化の進行、汽水的な環境の場の減少等、自然環境が単調化しています。そこで市川市塩浜2丁目護岸前面における干潟的環境(干出域等)形成の試験案や他の場所での干潟的環境(干出域等)の形成及び淡水導入の試験計画の検討を進めます。》

 「干潟的環境(干出域等)形成」というのは、猫実川河口域に土砂を入れて人工干潟をつくるというものです。県はこれを三番瀬再生事業の柱と位置づけています。
 この記述について、傍聴席から大浜清さん(「千葉の干潟を守る会」代表)が疑問を呈しました。
 以下は、大浜さんと県、大西隆会長のやりとりです。

◇大浜清(千葉の干潟を守る会代表)
     「『埋め立てによる干潟の減少』と書かれているが、これは三番瀬を埋め立て以前の環境にもどすということなのか。いまの三番瀬海域に手を加えることによって埋め立て以前の三番瀬をとりもどすことはできない。これは根本的な問題だ」
     「それから『地盤高の低下による浅海域化の進行』とも書かれているが、これは調査結果で否定されている。最近の県の委託調査結果(平成20年度三番瀬深浅測量調査結果)では、三番瀬海域は堆積傾向にあるとなっている。このように調査で否定されていることを事業の前提にしていいのか」
     「さらに、三番瀬の自然環境の総合解析はこれからおこなわれる。それをまたないで事業をどんどん進めていいのか」

◇県(三番瀬再生推進室)
     「いまの三番瀬再生事業は、平成18年度に策定した事業計画にもとづいて進めている。今後の事業展開の中で、見直すべきものがあれば見直すことになる」

◇大西隆(東京大学大学院教授)
     「(三番瀬再生のあり方については)再生会議の委員の間で共通した理解になっていない。(土砂を入れて)昔のような干潟にもどすべきという意見と、現状でも(豊かな)一つの自然なので、今のまま維持すべきという意見の2つに分かれている。再生会議では、これについて詰めた議論はしていない。いろいろな試験をやったり、モニタリングをおこなう中で、三番瀬の将来像を考えていくことにしている」
 要するに、三番瀬の自然環境がどうなっているかという評価は、意見が分かれるので議論しない。そういう議論は棚上げにし、海をつぶして石積み護岸をつくったり、砂付けの実験を進めるなど、事業をどんどん進める──というものです。
 これが三番瀬再生事業の実態です。こんなのアリでしょうか。


◎重大な弊害要因を放置

 つぎは、いまの三番瀬でいちばん問題になっていることは何かということです。
 それは、青潮の襲来と、台風時の行徳可動堰開放による江戸川放水路からの淡水・汚泥の一挙流入です。この被害を受けると、三番瀬のアサリ漁は大打撃です。今年のアサリ漁はヒドい不作ですが、その原因は昨年の青潮襲来と行徳可動堰開放です。
 ですから、三番瀬の環境を本当によくしようと思ったら、これをなんとかすべきなのです。しかし、県も再生会議も、この点については、まったく消極的です。
 今回の再生会議で、船橋市漁協組合長の大野一敏委員がこの点をつきました。

◇大野一敏委員(船橋市漁協組合長)
     「三番瀬の保全・再生を大きく左右するのは、貧酸素塊と行徳可動堰の問題である。行徳可動堰についていえば、これを放置すれば、いま我々が努力していることがすべて水泡に帰することになる。この問題についてやる気があるのかないかが問われている。可動堰が開放されると、突然、真水や土砂が一挙に三番瀬に流れ込む。今回の総選挙で政権が交代になり、(可動堰を管理している)国交省の大臣も代わることになる。我々が本当にやる気があるのなら、新しい大臣に陳情しなければならないのではないか。」
 しかし、この問題についての議論はされませんでした。
 以上の2つは、三番瀬再生会議の根本的問題を如実に示していると思っています。










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