宮沢賢治作品に登場する鳥

〜波打ち際をチョコチョコと歩くミユビシギ〜

鈴木良雄

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◆「宮沢賢治と鳥っこ展」

 (2008年)9月7日の三番瀬自然観察会でみたたくさんの鳥の中にミユビシギもいました。

 ミユビシギは全長19cmの小さい鳥です。スズメ(全長14cm)よりちょっと大きい程度です。波打ち際を走り回り、エサ(貝など)をついばんでいました。
 この鳥をみて、「あの鳥だ!」と心の中で叫びました。「もりおか 啄木・賢治青春館」(盛岡市)の「宮沢賢治と鳥っこ展<目で見る賢治鳥類学>」でみた鳥です。
 先月、岩手を旅行した際、青春館に立ち寄ったら、この特別展がひらかれていました。

◆賢治が描いたミユビシギ

 宮沢賢治の詩や童話には、たくさんの鳥たちが登場します。特別展では、鳥が登場する賢治の作品を写真と文中の言葉の引用で紹介していました。
 その中にミユビシギもあったのです。写真が大きかったので印象に強く残っていました。

 賢治は、作品の中でミユビシギをこんなふうに描いています。


  (ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
 5匹のちひさないそしぎが
 海の巻いてくるときは
 よちよちとはせて遁(のが)げ
  (ナモサダルマプフンダリカサスートラ)
 浪がたひらにひくときは
 砂の鏡のうへを
 よちよちとはせてでる

         (詩「オホーツク挽歌」より)



 ここでいう「ちひさないそしぎ」は、標準和名の「イソシギ」ではなく、ミユビシギのことだそうです。

 赤田秀子・杉浦嘉雄・中谷俊雄共著『賢治鳥類学』(新曜社)にはこう書かれています。
    《浜辺の波打ち際で、打ち寄せる波に翻弄(ほんろう)されるように、波よりも早くちょこちょこと走くのはミユビシギの特性である。ゼンマイ仕掛けのオモチャのようにも見える。数羽から数十羽の群れで、打ち寄せる波とともに汀線を進んだり退いたりしているのは、遊んでいるわけではなくハマトビムシなど目当てに餌稼ぎに懸命なのである。》
 賢治の作品は、そういう鳥たちの特性や習性を的確に美しく捉えているといわれています。そういえば、今回の観察会でみたミユビシギの動きもそんな感じでした。いまさらながら、賢治の観察眼と表現力に感心した次第です。

(2008年9月)






ミユビシギ(手前)。後ろはハマシギ。







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