事前漁業補償は許せない!

〜市川市行徳漁協への「転業準備金」43億円融資問題〜


三番瀬を守る署名ネットワーク

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 三番瀬埋め立て計画をめぐり、県企業庁が市川市行徳漁業協同組合に対して、「転業準備金」の名目で金融機関から約43億円を融資させていたことが、昨年(1999年)、明らかになりました。マスコミも「県が実質漁業補償」などと報道しています。
 融資の利息は約56億円に膨れあがっていて、その全額を企業庁が肩代わりすることになっています。同庁は利息分56億円を今年度2月補正と来年度当初予算案に計上するとのことですが、この問題は、埋め立て計画が定まっていない段階ですでに漁業補償が行われたということを示しており、重大です。
 私たちはこの問題で2月7日、この問題で企業庁と交渉し、真相究明と不当性の追及などをおこないました。今後も、追及をおこなう予定です。






●事前漁業補償問題とは
   〜埋め立て計画が定まらないのに“漁業補償”〜

 県企業庁は1982年、三番瀬に漁業権を持つ市川市行徳漁業協同組合(平野寅蔵代表理事組合長)に対して、埋め立て決定後に正式な補償金に切り替えることを前提に、転業準備資金の名目で金融機関(県信用漁業協同組合連合会=信漁連、千葉銀行)から約43億円を融資させました。
 企業庁は、融資の利息をすべて負担することを漁協と金融機関の三者で合意文書を交わしていて、利息の合計額は、現在までに融資額を上回る約56億円に膨らんでいます。
 この問題について県企業庁は、県議会や新聞、私たちとの交渉などで次のように説明しています。
  1. 浦安沖の埋め立てによって漁業環境が悪化し、離業する人もでてくるので漁漁補償をしてほしい旨の要請が、行徳漁協からあった。
  2. 当時、同漁協が有する漁場評価額は約45億円と算定された。借りなかった人の分を除き、43億円を融資させることにした。
  3. 融資の形をとったのは、埋め立てが決定していない段階では漁業補償金を支払えないため。決定後に正式な補償金として相殺することにし、「転業準備金」の名目で融資させた。その際、企業庁が半額に相当する二十数億円を金融機関に預け入れ、融資の最終的な利息分も負担することになった。その利息は、今年度末までで約56億円にのぼる。
  4. 当初は千葉銀行も融資機関に加わっていたが、1991年3月に手を引いた。同銀行にかかる累積利息と元本は信漁連が全額肩代わりした。
  5. 利息分56億円は、今年(1999年)度2月補正と来年度当初予算案に計上する。


●こんなことが許されるのですか?

 昨年11月の県議会決算委員会で、「議会へ説明し、同意は得たのか」と問われたのに対し、同庁は「昭和57(1982)年7月の常任委員会で報告している」と答えました。しかし、報告したという内容の記録はいっさい残っていません。また、金融機関と漁協の三者で締結したという文書の公開も拒んでいます。予算や決算書にも明示されておらず、会計上の取り扱いも不明朗です。
 そもそも、融資をきめたという1982年は、三番瀬埋め立て計画はまだ凍結中でした。企業庁が埋め立て計画の調査を再開したのは1984年になってからです。こうした経過をみただけでも、1982年に「事前漁業補償」をおこなったことの不当性は明白です。
 企業庁は、私たちとの交渉で、「漁業補償ではなく、あくまでも漁場の環境悪化に伴う融資」だと言いました。しかし、融資(貸し付け)する際に、返済期限は決めていません。そして、議会答弁や新聞報道などでは「埋め立て決定後に正式な補償金として相殺することにしている」と述べているのです。これをみれば、事前補償であることは明らかでしょう。
 仮に今年度2月補正と来年度当初予算での56億円利息を予算が承認されても、融資の返済は一銭もされないのですから、今後も利息は雪だるま式に増え続けていきます。
 私たちは、“埋め立て先にありき”のこんなデタラメを許すことはできません。



《参考》
   三番瀬埋め立て計画をめぐる歴史
1972- 73年  自然保護団体が「東京湾の埋め立て中止と干潟保全」請願を国会に提出し、
       採択される。
1973年    オイルショックがおきたこともあり、県が大規模埋め立て続行を断念し、
       三番瀬の埋め立て(京葉港二期・市川二期)計画を凍結。
1984年    県企業庁が市川二期計画の調査を再開。
1987- 92年  県が「埋め立て計画に係る環境現況調査」を実施。
1990年7月  県が京葉港二期・市川二期計画の基本構想を発表。
1992年6月  千葉県環境会議が設置される。
1993年3月  県が「市川二期・京葉港二期埋め立て基本計画」を発表。三番瀬埋め立て
       計画が全容を現す。県は環境会議に基本計画を諮問。環境調整検討委員会
       で検討開始。
1995年11月  県環境会議が、生態系に関する補足調査、土地利用の必要性吟味、専門委
       員会設置を県に提言。
1999年6月  県が見直し縮小案を発表。

 以上の経過をみれば、1982年に埋め立てを前提として「事前漁業補償」をおこなったことは問題であることが明らかではないでしょうか。




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