第二湾岸道も三番瀬円卓会議で議論すべき

〜三番瀬を通る高速道路の棚上げは許されない〜

公共事業と環境を考える会


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 千葉県や自民党県連などは、第二湾岸道の推進にずいぶんと力をいれています。この道路は三番瀬を突っ切るかたちで計画されていることから、その受け皿づくり(つまり、猫実川河口域の人工海浜化)が円卓会議の議論に大きな影響を与えています。


■第二湾岸道の概要

 この道路は、東京都大田区城南島と千葉県市原市廿五里(ついへいじ)を結ぶ延長約50kmの高速道路です。建設費は、地上式(高架式)で1兆円を超すと見られています。
 1967年に国の第6次道路整備5カ年計画で構想が浮上しました。3つの環状線、9つの放射線を持つ高速道路網の一部で、三番瀬埋め立て地の上を通って市川市高谷で東京外郭環状道路とつながる計画です。1994年12月には地域高規格道路の候補路線に指定されています。










■「第二湾岸道は三番瀬の保全とは関係なく絶対に必要」
   〜財界や地元自治体が建設推進〜

 財界は第二湾岸の早期建設を国や県などに働きかけています。たとえば、千葉県経済同友会は2000年2月、早期建設促進を求める要望書を県と国、日本道路公団に提出しました。
 要望書では、(1)東京と千葉を結ぶ京葉道路や東関東自動車道が慢性的に渋滞し、経済の隠れた足かせになっている。(2)渋滞に伴う排ガスは環境面にも悪影響を及ぼしている。(3)災害時の緊急輸送路としても不可欠──などとしています(千葉日報、2002.2.25)
 首都圏中央連絡自動車道(圏央道)の促進運動を進めている「圏央道建設促進県民会議」(県、市町村会、企業など138団体が参加)も、第二湾岸道の建設促進を県などに盛んに働きかけています。同会議の代表世話人をしている吉成儀・京葉銀行会長は、第二湾岸道と三番瀬についてこう述べています。
「交通渋滞で経済交流・物流・人の流れすべてが停滞してしまう恐れがある。第二湾岸道を造ることは、三番瀬を埋め立てるとか保全するとかの問題と関係なく絶対に必要
「(堂本)知事には初志を貫徹し公約は守りながら、理想論ではなく現実路線で第二湾岸は割り切って造ってもらいたい」(毎日新聞、2001.10.11)
 地元自治体も建設促進です。浦安、市川、船橋、習志野、千葉、市原の湾岸6市は「第二東京湾岸道路建設促進協議会」を組織し、早期事業化を要望しています。
 千葉県議会で圧倒的多数をしめる自民党の県連も同じです。堂本知事に対し、「円卓会議は1年でメドをつけ、第二湾岸道路の検討に早く入れ」などと要求しています。

 こうしたなか、堂本知事や県は、第二湾岸道の建設促進に躍起となっています。県が今年6月10日に発表した「来年度の政府予算編成に対する重点要望事項」には、東京外郭環状道路、首都圏中央連絡自動車道、東京湾口道路(第2の東京湾アクアライン)などとともに、第二湾岸道の建設促進がしっかり盛り込まれています。
 また、7月26日に開かれた「第二東京湾岸道路建設促進協議会」の総会では、白戸章雄副知事が「第二湾岸道の早期事業化に向けて積極的に働きかける」と述べ、建設促進の姿勢を改めて強調しました。


■「地下式は非常に困難」

 第二湾岸道は三番瀬を通る計画になっています。高架式にすれば野鳥の飛行を妨害したり景観を損ねるなどとして、環境省が千葉県に対し、地下式の検討を要請しました。しかし県は、地下式は「非常に困難」としています。県が「市川二期地区・京葉港二期地区計画策定懇談会」に提出した報告は以下のとおりです。

 〈県の報告〉
   第二湾岸道の道路構造について
  1. 本線及び外環道からのジャンクション部のすべてをシールド工法で実施することは、大深度における分岐・合流の施工性、止水の困難さなどの問題に加え、地震時におけるトンネル接合部の挙動における安全確保が解明されていないことなどから、現時点では、施工は非常に困難である。
  2. このため、高架・地下(一部開削)いずれの構造であれ、三番瀬に影響を与えることになるが、影響を極力小さくするために千葉県で想定したルートの基づき、高架構造、地下構造(一部開削)の両案について次のとおり課題の整理をおこなった。


(1)掘削土量・残土
  高架構造……掘削土量約70万m3
        残土  約50万m3 
  地下構造……掘削土量約1100万m3(高架の16倍)
        残土  約 700万m3( 〃 14倍) 
(2)施工期間
  高架構造……約10年
  地下構造……約15年
(3)構造上の主な課題
  高架構造……特になし
  地下構造……a.分岐合流部の広幅構造に対する安全性
        b.軟弱地盤における構造変化部の地震安全性
(4)施工上の主な課題
  高架構造……特になし
  地下構造……締切工における大規模施工の事例がない
        (薬液注入、施工の連続性確保などの大深度施工の盤膨れ対策)
(5)環境上の主な課題
  高架構造……a.鳥類に対する影響
        b.浅海域に橋脚を設置するため、締切工による環境への影響
  地下構造……a.開削施工による三番瀬生息環境への影響
        b.地盤改良・薬液注入による浅海域の環境への影響
        c.大量の残土の処分方法
        d.換気塔による影響
(6)概算事業費
  工事費については、東京湾アクアラインの事例をベースに想定した。これによると、
 アクアライン木更津側の橋脚部分の施工単価と川崎側トンネル部の施工単価を比較し
 ても約3倍の開きがあり、当該地区の地下ジャンクションなどを加えると、さらに、
 その差が拡大するものと考えている。
  以上から、地下構造は高架構造の約3〜4倍の費用がかかる。




■猫実川河口域の埋め立てを急ぐ

 こういうことから、県は、高架式での建設をめざしています。
 その場合、猫実川河口域の埋め立てが必須要件になります(下図参照)。そのため、同海域の人工砂浜化を強く主張しているメンバーを多数、円卓会議や小委員会の委員に選びました。逆に、埋め立てや人工砂浜化に反対するとわかっているメンバーは、小委員会の新規委員選考で全員落選にしました。「海域小委員会」は、定数15人のうち2人を欠員にしたままですから、埋め立て反対派の排除は徹底していました。

 したがって、円卓会議や小委員会での議論は、最初から猫実川河口域の人工砂浜化が中心です。
 堂本知事は、「年内に再生計画のアウトラインをつくってほしい」と盛んに急がせています。三番瀬現況調査の結果がでるのは来年春以降になりますから、年内にアウトラインなどだせるはずがないのに、呆れてしまいます。「何が千葉モデルか!」と言いたくなります。












■三番瀬の自然環境や景観を大破壊

 第二湾岸道は、三番瀬にさまざまな悪影響をあたえます。
 計画では、この道路は船橋海浜公園の頭上や行徳鳥獣保護区前を通ることになります。高さは確定されていませんが、船舶の行き来のため、船橋航路では海面から約50mほど、市川航路上では36m以上にする必要があるとされています。こんなに高度の高い道路は、三番瀬から谷津干潟や行徳保護区へ移動するシギ・チドリ類、カワウ、カモメ、カモ類など多数の野鳥の障害となります。
 また、三番瀬の市川側では猫実川河口域のど真ん中を通ることになります。(1)浅海域を高架で通す。(2)埋め立てて道路をつくる。(3)埋め立てて高架にする──の方法が考えられますが、いずれの方法も、三番瀬の自然に大打撃を与えます。

 さらに、巨大道路が船橋海浜公園などの頭上を横切るわけですから、美しい景観はだいなしになってしまいます。市民を心理的に海から遠ざけることにもなります。

 一方、高架式でなく、地下式にした場合は、凝固剤の大量使用による三番瀬の生態系破壊や、大量の残土処分、地下水への影響などが問題になります。


■膨大な財政負担

 財政面や採算面でも大きな問題をかかえています。
 第二湾岸道は、高架式の場合で建設費は1兆円を超すことが予想されています。地下式にすれば、さらにそれを大きく上回ります。国・地方自治体が財政赤字で破産寸前の状態にあり、また、日本道路公団が約25兆円という気の遠くなるような赤字をかかえているなかで、こんな膨大な金がかかる事業はやめるべきです。

 この道路は、全国的な幹線道路ネットワークである「高規格幹線道路」ではなく、「地域高規格道路」です(注)。ですから、建設費は相当の部分を地元自治体が負担することになります。いまの県や関係自治体の財政状況でこんな道路がつくれるとはとても考えられません。
 仮にできあがっても、通行料金はアクアライン並みかそれ以上といわれています。そうなると、どれくらいの車が利用するか、大いに疑問です。
(注) 地域高規格道路は、全国的な幹線道路ネットワークである高規格幹線道路と一体となって、地域発展の核となる都市圏の育成や地域相互の交流促進、空港・港湾などの広域交流拠点との連結等に資する路線とされています。


■大気汚染をいっそう悪化

 大気汚染などをますます悪化させることも確実です。
 第二湾岸道が予定されている地域は、いまでさえ全国屈指の大気汚染地域です。新たに巨大道路ができれば、大気汚染や振動、騒音などの公害をいっそうひどくします。


■第二湾岸道は必要ない

 そもそも、必要性に疑問があります。
 県や関係自治体・企業などは「渋滞解消のためにどうしても必要」と言っていますが、現実をみれば、高速道路をつぎつぎにつくっても交通渋滞はいっこうになくなっていません。反対に、道路建設が車を呼び込んで渋滞を加速するという悪循環を生んでいます。

 一方、千葉県内の車の通行量は減りつつあると言われています。人口をみても、県人口は9月17日に600万人を突破しましたが、国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、2015年に609万人まで増加を続けるが、その後は減少すると予測されています。

 こうしたことを考えると、1兆円以上も費やして新たな高速道路をつくる必要はありません。
 そもそも、東京湾横断道路(アクアライン)の一つの目的は、湾岸道路や都心道路の渋滞緩和でした。アクアラインの公式ホームページは、この横断道の効果について次のように書いています。
 「首都圏の南回りバイパスとして、同地域の道路ネットワークを強化します。これによって都内を通り抜けるクルマが減り、都心の渋滞が緩和されます」
 しかし、実態をみると、そんな効果はまったく現れていません。それは、アクアラインの通行料金が高すぎ、産業用の車がほとんど利用しないからです。

 新日鉄はかつて、アクアラインを推進した「日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)」や「東京湾横断道路研究会」の中心にすわり、「横断道ができると物流がたいへん便利になる。東京湾岸道路の渋滞も緩和される」と盛んにブチ上げていました。そして、横断道の木更津側をムリヤリ橋脚方式にさせて自社の鉄を100パーセント使わせたり、木更津市などで広大な土地の買い占めを子会社にやらせるなど、アクアラインの建設で大儲けしたといわれています。たとえば、ジャーナリストの久慈力氏は、自著『東京湾アクアラインの検証』(緑風出版)の中で、「東京湾横断道路は、新日鉄のための『夢の架け橋』といってよかった」と書いています。

 しかし、アクアラインができあがると、同社の君津製鉄所の幹部は「(料金が高いので)活用するすべがありませんよ」(朝日新聞、1997.12.16)とヌケヌケと言い放ちました。2000年10月21日付けの『日本経済新聞』はこう書いています。
 「千葉県君津市にある新日鉄君津製鉄所。鋼材を載せた大型トレーラーが土煙を巻き上げ通り過ぎる。館山自動車道に乗ればアクアラインまでわずか15キロ程度。しかしトレーラーはアクアラインを横目に館山自動車道を直進し、東京方面に向かっていく」
 アクアラインの旗振り役がこの道路をまったく利用せずに湾岸道路を利用しているのです。こうした問題を無視し、湾岸道路渋滞緩和のためにこんどは第二湾岸道を造るべきと主張しているのですから、「オイオイ」です。
 フリーライターの清水草一氏は、自著『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(講談社)の中で第二湾岸道についてこう述べています。
 「千葉県には、もう1本東京湾アクアラインというルートが存在する。そちらが有効利用されるようにすれば、第二湾岸建設の必要度は低くなるはずだ。1兆4000億円を海に沈めたままで、また新たに1兆円を東京湾に投入すべきかどうか」
 「千葉県─神奈川県間の輸送量は、千葉県−東京都区部のそれの約4割にあたる。首都高の統計を見ても、東関東道から首都高に流入する交通量のうち、約2割が神奈川方面へ抜けている。それが全部アクアラインを通ってくれれば、現在の渋滞はほぼ解消する。ところが、アクアラインの通行台数は、上下線合わせて1日1万台にも満たない。一方、東関東道の宮野木─湾岸千葉間は、1日11万台以上のクルマが通過する。どうしてこれほど差がつくのか。言うまでもなく、アクアラインの料金が高すぎるからだ」
 そして、試算を示し、「料金を1000円にすれば、アクアラインは1日4万台が通るようになる。同時に千葉の湾岸地区の慢性的渋滞が相当解消される」と述べています。

 この提起は傾聴に値すると思います。料金を1000円に下げれば、アクアラインの赤字はさらに膨らみます。しかし、環境を大規模に破壊する湾岸道路を新たに1兆円以上もつぎこんで造るよりはいいでしょう。もちろん、これは、第二湾岸道がどうしても必要ということを前提にしての話です。

 ちなみに、三番瀬円卓会議の委員をしている大野一敏さん(ベイプランアソシエイターズ理事長、元・船橋市漁協組合長)も、第二湾岸道についてこう述べています。
 「せっかく造った東京湾横断道路(アクラライン)も、十分利用されているのか疑問。新しい道路をつくる予算があるなら、横断道を無料にすれば渋滞も解消される」(毎日新聞、2001.10.16)


■三番瀬円卓会議で第二湾岸道を議論すべき

 第二湾岸道が建設されれば、三番瀬に大きな影響を与えます。そのため、円卓会議では、第二湾岸道計画も円卓会議で議論すべきという意見が何人かの委員からだされています。
 しかし、県は、「三番瀬再生計画案が策定された段階で、県としてはその計画をベースにして第二湾岸道の具体的プランをつくりたい」と回答し、円卓会議での議論を拒否しつづけています。
 県は、第二湾岸道が抱えているさまざまな問題を円卓会議で明らかにされることを恐れているのです。
 この道路は、浦安市では住宅密集地のど真ん中を通ります。ですから、浦安市民の多くはこの道路に批判的です。円卓会議や小委員会には浦安市民が何人も委員になっていることから、道路の必要性そのものがきびしく問われることになります。完全公開の場でそんな議論がおこなわれたら、たいへんです。

 千葉県自然保護連合は9月12日、三番瀬「護岸・陸域小委員会」に対して2回目の意見書を提出し、次のように要求しました。
 「県が第二湾岸道の建設促進に躍起となっている中で、第二湾岸道を棚上げして三番瀬再生計画を検討するのは納得できません。第二湾岸道の必要性も含め、この高速道路計画も円卓会議できちんと議論してください」
 9月28日に開かれた第6回「三番瀬円卓会議」では、「三番瀬を守る会」の田久保晴孝会長が、会場から、次のように発言しました。
 「円卓会議で再生計画を論議しているが、片一方では、県が国に対して第二湾岸道の促進を働きかけている。そういったことがあるので、円卓会議で第二湾岸道も議論してほしい」
 これに対し、磯部雅彦委員(東京大学大学院教授)と倉坂秀史委員(千葉大学助教授)が次のように答えました。
 「この意見は前回の円卓会議でもだされた。しかし今は、円卓会議は三番瀬の再生について集中して議論している。そもそも、メンバーに道路の専門家がいない。だから、第二湾岸道と三番瀬再生計画がリンクするというのはわかるが、今は三番瀬の再生に労力を集中すべきではないかと思う」(磯部雅彦委員)
 「磯部委員の意見に賛成だ。第二湾岸道路については、第2回と第3回の円卓会議ですでに議論されている。第3回円卓会議においては、県から『第二湾岸道路については三番瀬の再生計画の実現に影響のないように検討する』という回答がされている。だから、円卓会議としては、具体的な再生計画をつくるということが使命ではないかと思う」(倉坂秀史委員)
 両委員は、円卓会議ですでに議論されていると言っています。しかし、議事録をみればわかるように、何人かの委員が県に考えや対応などの説明を求めても、県はそれを拒否しつづけています。これが実態です。
 倉坂委員の発言に対し、大野一敏委員が次のように質問しました。
 「『影響を与えない』というのがどういうものなのか、第二湾岸道をどのように考えているのか、そのような説明を聞く権利はあると思う。我々が議論してどうこうではなくて、詳細な説明をしていただきたい」
 大野委員の意見はごもっともです。しかし、倉坂委員などはこの質問にまったく答えませんでした。

 第二湾岸道は三番瀬を突っ切る形で計画されています。県は、その高速道路の建設促進を国に対し盛んに働きかけています。そうしたもとで、円卓会議で第二湾岸道をまったく議論しないのはおかしいと思いますが、どうでしょうか。

(2002年10月)











浦安市の埋め立て地には50メートル以上の幅をもつ第二湾岸道の用地が確保されている。








浦安市の第二湾岸道用地は猫実川河口域の護岸につきあたる。








猫実川河口域の護岸からみた第二湾岸道用地。








第二湾岸道用地がつきあたる護岸からみた猫実川河口域。第二湾岸道が建設されればここを通ることになる。









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