第二湾岸道路を考える

〜三番瀬フェスタで三橋福雄さんが報告〜


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 2003年の8月6日(水)から3日間、「豊かな自然をとりもどそう」をテーマにした「三番瀬フェスタ」が船橋市内で開かれました。
 そのうち、最終日(8日)に行われた報告会「第二湾岸道路を考える」の報告要旨を紹介します。レポーターは三橋福雄氏(NPO法人不動産コンサルティング協会理事長、三番瀬円卓会議「護岸・陸域小委員会」委員)です。




報告要旨





第二湾岸道路を考える



NPO法人不動産コンサルティング協会
理事長 三橋福雄


 きょう第二湾岸道路の話をするにあたって、三番瀬円卓会議の事務局(県)から、「現在の円卓会議や県、そしてあなたたちの立場はちゃんと分かっているね」という指摘があった。
 さきほど佐野さんが話されたこと〈注〉は、私の解釈では、堂本知事の意向をふまえたうえで岡島成行会長(円卓会議の会長)がそういう話をされたと思っている。
 私は第二湾岸道について賛成とか反対とかいう立場で話するものではない。この道路がどういうものかということについて話をするものであって、その中から何かがみえてくると思っている。


〈注〉円卓会議の委員をしている佐野さんは次のように話しました。   「第二湾岸道は三番瀬再生計画にとって非常に重要な問題なので、円卓会議の中で   検討しようという議論もされた。しかし、円卓会議では、第二湾岸道はとりあえず   脇において、今は三番瀬の自然再生を中心に議論しようということになっている」

●ラムサール条約登録を選挙公約にかかげた市長が
  第二湾岸道を積極推進

 関係6市で構成する「第二東京湾岸道路建設促進協議会」が活発な活動をしている。昨日の学習会(「三番瀬の再生とラムサール条約」)で大野一敏氏は、「船橋市長はラムサール条約の登録を公約にかかげて再選されたから、登録も順調にいくだろう」と言われた。
 しかし、同じ船橋市長が、市川商工会議所の会頭(円卓会議の委員)に対し、第二湾岸道の推進に協力していただきたいたいという要望書を出している。これはどういうことなのか、私には理解できない。たぶん、よりよい解決方法があるのだろう。


●第二湾岸道用地はすでにあちこちで確保されている

 「第二湾岸道の計画はどこにも存在していない」とうのが、国や県、関係市の立場である。しかし実際には、ところどころに第二湾岸道の道路ができている。
 たとえば羽田空港の近くに城南島という埋め立て地があるが、そこからお台場へ渡るのに大きなトンネルができている。これは現在は「東京臨海道路」という名称がついているが、第二湾岸道の予定道路にもなっている。また、船橋市と習志野市の間のサッポロビール工場の前にも8車線の道路予定地が確保されている。千葉市では、マリンスタジアムと幕張メッセの間に4車線(プラス4車線)の道路があるが、これも第二湾岸道の予定地だ。浦安の埋め立て地にもベルト状の用地が確保されている。
 これらの用地について、国土交通省関東地方整備局東京湾岸道路調査事務所に話を聞いたところ、「(第二湾岸道が正式な計画になると)その有力な候補地のひとつになる」とのことだった。


●ジャンクションは巨大なものに

 第二湾岸道の起点は東京都大田区の城南島、終点は千葉県市原市の約50kmとなっている。当初は6車線になっていたが、その後8車線になった。設計は時速120kmとなっている。通常の高速道路は100kmである。基本的には陸上部分は掘り割りで、ほかは架橋やトンネルとなっている。
 ジャンクションは時速100kmで走れるような設計となっているため、巨大なものになる。たぶん今まで日本にないような道路ができるのではないか。景観も大きく変わる。かつては、私も、こんな道路ができるといいなと思っていた。


●第二湾岸道はどうして必要か

 こんな道路がどうして必要なのかというと、千葉県の東京湾岸には、浦安市から君津市まで鉄に関係した企業がたくさん立地しているからだと思う。君津市には新日鉄、千葉市は川崎製鉄、浦安には鉄鋼団地、船橋・習志野市にも鉄の流通会社がたくさんある。それらに関連する会社は莫大な数になる。


●第二湾岸道計画の背景に土地バブル

 6車線から8車線に規模が大きくなった背景には土地バブルがあると思う。
 三番瀬円卓会議は、市民レベルの人、環境団体、行政関係、産業界、漁民など、いろいろな人で構成されている。私は市民代表となっているが、立場が変われば、自分の利益を代弁する形で円卓会議にのぞむと思う。市民の利益は何かということは別にして、そういうものがぶつかりあいながら1年半がすぎている。
 しかし、全国でこんなことをやっているところはほかにはない。それで見えてくるものがあれば、時間のムダではないと私は思っている。早く決めてほしい人は、「こんなムダなことはやめろ」と言っているようだが。
 これは私の勝手な独断と偏見だが、円卓会議で頑固に自分の主張を恥も外聞もなく主張される方は、土地バブルでかなりいい思いをした人だと思っている。再び土地の価格が高騰すればなんとかなると思い、その夢が捨てきれないのではないか。
 日本は、資本主義ではなく地本主義というのが私たちの業界(不動産業)で言われていた。それが大きく影響しているのではないか。バルブの当時は、一億総不動産化と言われていた。多くの企業に不動産部ができた。企業が不動産業をはじめると、銀行がどんどん金を貸してくれた。
 図をみればわかるように、1960年から1990年(バブルのピーク)までの30年間で、消費者物価は約10倍、勤労者所得は約30倍近くになった。これに対し、土地の価格は134倍である。この数値は全国平均なので、首都圏はこれよりずっと高い。
 いま道路公団の民営化が問題になっている。今朝のテレビにも、道路公団の藤井総裁が登場していた。こういう人たちをつくったのは、たぶん土地バブルだと思う。


●土地バブルのマイナス面

 土地バブルのマイナス面として、不良資産がたくさんでていることがとりあげられている。しかし、土地バブルのもっと大きなマイナス面は、頭の部分だ。
 私が子どもの頃は、「お天道さまと米のメシ(おまんま)はついてくる」という言葉があった。あたり前に働いて、あたり前に生きていれば、あたり前に生きられるという意味だ。逆にいえば、米のメシがついてこれるような人になれ、ということだ。しかし、こういう部分がなくなってしまった。
 土地バブルのそのいちばん大きな後遺症は一億総不動産屋化だ。最近の言葉でわかりやすく言えば、モラルハザードだ。
 そういうことではなくて、自分以外のものももう少し大事にしようよというあたり前の気持ちがなくなってしまった。そのことによって、こんなことになっているのではないかと思う。
 私はそういう目から三番瀬をみている。これまで環境破壊に手を貸してきたので、少しでも罪ほろぼしができたらと思い、忙しいにもかかわらず、ほとんどボランティア状態で円卓会議に出席している。


●敗戦の責任をとるべき人が温存された

 最初におことわりしておくが、私は天皇制反対ではない。しかし、戦争に負けて責任をとるべき人が責任をとらなかった。天皇のことである。天皇が責任をとらないからオレも責任をとらなくてもよいという人が温存されてしまった。
 要は、天皇制を残すこととひきかえに、日本はアメリカの植民地となったのではないかと思う。というのは、そろそろ60年たつのに、まだ米軍がいるからだ。沖縄なんかひどいものである。本来、戦争に負けたことに対して反省し、責任をとらなければならない人たちが責任をとらないために天皇制を残したのかなと思う。そのほうがアメリカにとっても都合がよかったのではないか。
 第二湾岸道と埋め立て行政を考える場合に、なぜこういう話をするのかわかっていただけると思う。


●三番瀬のど真ん中に巨大ジャンクションの計画

 建設省(現国交省)の第二湾岸道関係機関が発行していた広報紙『湾岸人』を読むと、「環境にも配慮した」「景色もいい」などと書かれている。「この道路ができると夢が広がります」ということも書いてある。しかし、私はひねくれているので、夢をいっぱい売られると夢のウラを考えてしまう。
 とくにジャンクションとかインターチェンジは、生活者の視点からは利用できる場所ではない。第二湾岸道と外環道がつながるジャンクションは、三番瀬のど真ん中の江戸川放水路の河口の少し南側に計画されている。まさに、三番瀬を再生するのにいちばん大事な場所である。そんなところに巨大なジャンクションをつくる計画になっている。これとラムサール条約登録はどういう関係にあるのかと思う。
 昨日はラムサール条約に関する学習会が開かれたが、このへんのところがよくわからない。  第二湾岸道のルートをみると、前述のように、起点の東京都大田区城南島からお台場までは、すでに8車線のトンネルと道路がすでにできている。浦安にも用地が確保されている。
 肝心な三番瀬はどうかというと、航路部分は橋を架け、あとは埋め立て計画地を通ることになっていた。埋め立て計画は白紙撤回になったので、今後どうするのかと思う。


●第二湾岸道の事業費は1メートル5億円?

 第二湾岸道の費用を道路公団の職員に聞いたところ、「1メートル5億円ぐらいかかるのではないか」と言っていた。「ただし、時速120kmで走れるので快適な道路になる。夢の道路ができる」とも 言っていた。
 『湾岸人』の18号にはこんなことが書いてある。
 「WANGAN2(第二湾岸道)では、東京湾の自然を育むとともに、訪れる人が自然を身近に感じることができる施設、たとえば、海の中に造る橋脚は、海中の岩場のように魚が集まってくる人工魚礁にしたり、家族そろって楽しめる海釣り公園などが考えられます」
 サービスエリアでは、海におりて釣りができる施設も考えられている。人工干潟をつくるとも書かれている。こういう施設を含めると、1メートル5億円になるのかもしれない。
 国交省東京湾岸道路調査事務所(船橋市浜町)はたいへん立派なパンフレットを発行している。これには、「自然を楽しむ」とか「高速でアクセスできる」などと書かれている。しかし、鉄との関係などはどこにも書かれていないが、私にはそのウラに鉄という文字が見える。
(文責・千葉県自然保護連合)




















千葉市美浜区の幕張メッセ(写真右の建物)と千葉マリンスタジアム(左の建物)の間に確保された第二湾岸道用地。ここはすでに「通称・第二湾岸道」とよばれている。4車線の道路のほかに、4車線の拡幅用地(写真左。マリンスタジアム側)が確保されている。








幕張新都心から習志野側の方向に撮った第二湾岸道用地。左側は4車線の拡幅用地。








第二湾岸道の4車線拡幅用地








浦安市の埋め立て地にも50メートル以上の幅をもつ第二湾岸道の用地が確保されている。








浦安市の第二湾岸道用地は猫実川河口域の護岸につきあたる。








猫実川河口域の護岸からみた第二湾岸道用地。








第二湾岸道用地がつきあたる護岸からみた猫実川河口域。第二湾岸道が建設されればここを通ることになる。









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