現場を見ない三番瀬再生会議は“ダメ会議”

〜シンポジウム「どうなる、どうする千葉の干潟」〜

千葉県自然保護連合事務局


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 (2007年)2月3日、シンポジウム「どうなる、どうする千葉の干潟」が千葉県立中央博物館で開かれました。「千葉の干潟」展(1月27日〜2月18日)の関連行事として企画されたものです。


《シンポジウムの概要》
 ◇午前 現地報告会 
      三番瀬グループ、盤洲グループ、外房グループ 
 ◇午後
  ・基調講演「干潟からみた生物多様性」 
    講師:秋山 章男氏(元東邦大学理学部教授) 
  ・パネルディスカッション 
   <パネラー> 
    田久保 晴孝氏(千葉の干潟を守る会) 
    御簾納 照雄氏(小櫃川河口・盤洲干潟を守る連絡会) 
    中村 俊彦氏(千葉県立中央博物館副館長) 
    吉田 正人氏(江戸川大学社会学部教授) 
   <コメンテーター> 
    秋山 章男氏(元東邦大学理学部教授) 
   <進行役> 
    福川 裕一氏(NPO法人千葉まちづくりサポートセンター) 
 




■三番瀬護岸改修は「再生になっていない」

 シンポでは、三番瀬再生事業も議論になりました。
 県が三番瀬再生の先行事業として進めている護岸改修は、多種多様な生き物が生息する猫実川河口域の一部をつぶして石積み傾斜護岸を建設するものです。すでに一部が完成しており、今後もどんどん工事を進めることになっています。
 石積み護岸では「市民が海に親しめない」「三番瀬の再生にならない」として、猫実川河口域を人工海浜(人工干潟)にすべきという主張も、市川市や地元漁協、一部環境NGO、産業界などから声高にだされています。
 この石積み護岸について、中村俊彦さんがこう述べました。
     「あの石ころ護岸は再生になっていない。第一に千葉にはあんな石ころはない。第二に危険である。再生とはなにかということをきちんと議論すべきだ」



県が「三番瀬再生」の先行事業として進めている護岸改修




■三番瀬再生会議はなぜ現場を見ないのか

 そこで、Nさんが会場からこう発言しました。
     「私も、護岸改修は再生になっていないと思う。中村さんは、再生とはなにかということをきちんと議論すべきと話されたが、これはそのとおりだと思う。その際に重要なことは現場を見ることだ」

     「2002年1月に三番瀬円卓会議が発足してから5年がすぎたが、円卓会議も再生会議(円卓会議の後継組織)も、議論の焦点となっている猫実川河口域の現場を一度も見たことがない。何人かの委員は現場を見ているが、委員の大半はいちども見ていない。そういう委員は、この海域に生息するアナジャコを見たことがない。大潮の干潮時に現れる広大な面積の泥干潟やカキ礁も見たことがない。そのため、猫実川河口域について『死んだ海』とか『ヘドロの海』『たいした生き物はいない』『泥干潟は存在しない』などと言いつづけている」

     「したがって、猫実川河口域をどう評価するかについては、いまだに決着がついていない。泥干潟が存在するかどうかついてさえ、いまだに『存在しない』という意見を声高に主張する委員がいる。こんな具合だから、石積み護岸をつくることが再生ということになったりする」

     「干潟や浅瀬の現場を実際に見なければ、その大切さなどはわからないはずだ。そこで、吉田正人さんと中村俊彦さんにお聞きしたい。三番瀬再生会議の副会長を務めている吉田さんには、なぜ三番瀬再生会議が猫実川河口域の現地見学会を実施しないのかをお聞きしたい。中村さんには、対象現場を見ない再生会議をどうみるのかをお聞きしたい」


■現場を見ない会議は“ダメ会議”

 この質問にたいし、中村さんはこう答えました。
     「現場を見ない会議は“ダメ会議”と言いたい」
 一方、吉田さんの答えはこうです。
     「再生会議では猫実川河口域の現場を見ていないが、円卓会議ではいちど見学会を行った。しかし、見学会に委員が参加することを強制することはできない」
 しかし、吉田さんは質問にまともに答えていません。見学会をいちど行ったと言いますが、それは満潮時の船上見学です。これでは、泥干潟やカキ礁、アナジャコの穴などはまったく見ることができません。猫実川河口域がどういう海域であるかはまったくわかりません。

 Nさんはこう言いました。
     「泥干潟やカキ礁などは干出のときでないと見ることができない。だから、干出時に見学会を実施しなければ、見学会をやったことにはならない」
 そうしたら吉田さんは、その事実を認めたうえで、「しかし、私は現場を見ている」と述べました。

 やりとりは以上です。


■「現場を見ないのはとんでもないこと」

 シンポの最後に秋山章男さん(元東邦大学理学部教授)がこうコメントしました。
     「『現場を見ていない』という意見が出されたが、これはとんでもないことだ。三番瀬にかかわる人はひんぱんに現場を見なければならない。私は毎日、一宮河口干潟(太平洋に面した外房の干潟。千葉県いすみ市)を歩きながら観察している」
 中村さんと秋山さんの意見はごもっともです。三番瀬の現場を見ない人は、三番瀬再生を云々する資格がないと思いますが、どうでしょうか。


■円卓会議の多くの委員は現場を見ないで議論した

 ちなみに、三番瀬円卓会議や再生会議の議論を傍聴しつづけている永尾俊彦さん(ルポライター)は、岩波ブックレットでこの点も指摘しています。
    《三番瀬の現状の共通認識を持つために、現地を見てほしいと自然保護団体の人々は円卓会議の委員に何回も呼びかけた。ところが、02年5月に一度「視察会」が開かれたが、問題の猫実川河口域を歩くことはなかった。円卓会議の多くの委員は、何と現場を見ないで議論したのである。》

    《市川塩浜地区の護岸は船橋市寄りの塩浜1丁目から浦安市寄りの塩浜3丁目まで約3.3キロあるが、前述のように護岸が老朽化し、危険だから早く改修してほしいと行徳漁協や市川市、地元企業でつくる市川塩浜協議会などは円卓会議の当初から要望している。しかし、自然保護団体は陥没箇所などは市川市がすでに補修工事を行っており、補修した業者から「10年は持つ補修はしたつもりである」との証言を得ている。
     この問題も、猫実川河口の評価と同様に委員全員で護岸を歩き検証すれば現状は確認できるはずなのに、「現場検証」は行われなかった。そして現状認識がくいちがったまま、議論が続いた。》(永尾俊彦『公共事業は変われるか――千葉県三番瀬円卓・再生会議を追って』岩波ブックレットNo.705)

(2007年2月)




シンポジウム「どうなる、どうする千葉の干潟」




シンポのパネリスト




「千葉の干潟」展は1月27日から2月18日まで県立中央博物館で開かれた




三番瀬の猫実川河口域は、大潮の干潮時には広大な泥干潟が現れる。
ここに踏み入れるとたくさんの生き物を確認できる。
だが、三番瀬再生会議の委員でここを見た人はわずかしかいない。





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