風呂田利夫・東邦大教授が

 三番瀬・猫実川河口域の人工干潟化を主張

    〜第16回「市川市行徳臨海部まちづくり懇談会」〜



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 第16回「市川市行徳臨海部まちづくり懇談会」が(2005年)3月9日に開かれました〈注〉。

 この懇談会は、三番瀬を含めた行徳臨海部のまちづくり(再開発)計画を作成するため、市川市が発足させたものです。学識者のほか、自治会、市民団体、漁協、企業・関係機関の代表も加わっています。
 第16回の会議では、東洋大学の風呂田利夫教授(海洋生物)が三番瀬・猫実川河口域を人工干潟にすることの必要性を主張しました。風呂田教授の主張を、大半の委員が支持し、その結果、同海域の人工海浜(干潟)化が方向づけられました。
 以下は、風呂田教授の主張を要約したものです。



風呂田利夫教授の主張(要約)





第16回「市川市行徳臨海部まちづくり懇談会」における

風呂田利夫氏の発言要旨






●私たちの周りには人工干潟が山ほどある

 私たちの周りには人工干潟(人工的に造られた干潟)が山ほどあって、むしろ本当の自然の干潟はほとんどなくなっている。
 たとえば、三番瀬の船橋側(ふなばし三番瀬海浜公園の前)には人工海浜と干潟が広がっている。江戸川放水路も人工である。行徳鳥獣保護区にも「非意図的な人工干潟」がある。谷津干潟も覆土をしており、非意図的な人工的干潟と言えなくもない。さらに、東京都の葛西にも人工干潟がある。
 そういうところでは、希少といわれている生物がようやく生き残っているので、一概に人工干潟を否定しないでほしい。人工的に造ったものには何らかの効果が生まれていることをきちんと評価すべきだ。
 猫実川河口沖に人工干潟を造って塩性湿地を取り戻すということは、すでに1988年に本に書いている。最近ふって湧いたような話ではない。


●硬いものを減らすためにも人工干潟を造成すべき

 猫実川河口には、置き石とか浅瀬とか干潟の一部がある。カキ礁もある。付着生物としての外来種も非常にたくさんいる。ウネナシトマヤガイも国内の外来種ではないかと学会で審議されており、外来種の可能性がある。
 そのときに私たちが期待するものは何かというと、生態系のレジームシフトである。レジームという言葉は、最近フセイン大統領を追放するときによく使われた、政権という意味である。
 つまり、もともと干潟のところに硬いものができると、そこになかったものが入ってくる。それが外来種であり、そういうものがたくさん増えているのが東京湾の現状である。だから、できるだけ硬いものを減らしていかなくてはならない。
 そういうなかで、例えば、もとの干潟の形状に戻していくと、トビハゼとかクロベンケイガニという東京湾で非常に貴重になっているものが住みうるだろう。地域内に環境の多様性を回復させることでレジームとして上に上がっていって、おさまるところにおさまっていくだろう。期待をもって基本レジームを向上させるのが生態系の改修の目的になっていく。しかし、回復ができなければ、この程度の低いままでいくことになる。


●総合評価では、人工干潟の方が高得点

 総合評価をしてみると、自然の歴史的過程、環境の連続性、生物の多様性、希少種保全、外来種の排除という保全生物学的評価では、私自身の採点で、どう考えても人工干潟の方が高得点と思う。


●船で行かなくてはいけない場所よりも、カキで足を切るよりも、
  人工干潟のほうが研究しやすい

 環境研究の場所としても、立入禁止にして船で行かなくてはいけない場所よりも、また、カキで足を切るよりも、このような自然形状の場所の方が研究しやすい。安全確保も優れている、塩害防止にもつながるということから、こういう評価をせざる得ない。
 そういうことからすると、そんなに人工干潟を嫌わないでいただきたい。人工干潟は、もっとたくさんいろいろないい面がありますよということを結論にさせていただきたい。
 三番瀬の社会的価値、共有財産の活用、環境修復として、あるいは皆で働いて楽しい歴史を作るという意味で、人工干潟を積極的に評価すべきである。


●定期的に砂を供給して干潟を造ることが必要

 三番瀬は、今は砂があるが、通常は砂なんて出てこない。砂の供給でさえなくなっている状況なら、定期的に砂を供給して干潟を造ってあげる必要がある。





《コメント》

 以上です。  くわしくは、議事録をご覧ください。

 「環境保全派」とみられている学者や「専門家」がこんなことを堂々と主張し、埋め立て推進派(市川市、漁協など)のバックボーンとなっています。また、彼らを勇気づけ、「環境修復」あるいは「自然再生」という名の自然破壊に荷担しつつあります。

 環境保護にかかわっておられる方々は、こういう現状をどうみておられるのでしょうか。私たちは、「日本の自然は新たな受難の時代を迎えている」と考えていますが、いかがでしょうか。

(2005年6月18日、千葉県自然保護連合事務局)









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