海洋生物学者の干潟研究のために
国民は何十億円もかけて人工干潟
を造ってあげるのでしょうか
〜人工干潟造成派の学者をカキ礁研究会が批判〜
三番瀬・猫実川河口域の人工干潟化を盛んに主張している海洋生物学者を「カキ礁研究会」が批判しています。
研究会は、猫実川河口域は生物生産や水質浄化の能力が非常に高いとしています。そのうえで、ここをつぶして人工干潟をつくることをきびしく批判しています。
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「川から砂が供給されないところに砂質の干潟を造ったら、波に持っていかれる砂を補うために毎年何千万円もかけて砂を供給しつづけなければなりません」
「学者さんというのはすごい世間離れした発言をするものですね。この海洋生物学者先生の干潟研究のために国民は何十億円もかけて人工干潟を造ってあげるのでしょうか」
また、ウネナシトマヤガイは外来種ではないかという主張についても反論しています。
以下は、カキ礁研究会の見解です。
カキ礁研究会の見解 |
三番瀬
〜真の自然再生とは〜
カキ礁研究会
いま三番瀬の自然再生の問題を考えるとき、猫実川河口の現状をどう捉え、そしてどうするのかということが議論の中心になってきています。そこで私たちは主な論点を整理してみました。
●猫実川河口はヘドロの海か
「猫実川河口はヘドロの海だ」という主張があります。
「ヘドロ層」というのは、本来「軟弱沖積粘土層」という風化作用などで岩石が非常に細かい粒子となり、川から海に運ばれて積もった泥のように柔らかい粘土層のことをいうのですが、一般には酸素が乏しい有機汚濁物に富む「クサーイどろ」という意味のようです。
猫実川の河口は悪臭もなく、ドロドロに濁っているというわけでもありません。特にカキ礁とその周辺の水はきれいに澄んでいます。
●猫実川河口には生きものがいないか
現在、猫実川河口とカキ礁周辺では、市民による生物調査が行なわれていますが、100種類以上の生きものの生息が確認されています。
●猫実川河口には普通の生きものしかいないか
猫美川河口で生息が確認された生きもののなかには、千葉県の指定した希少な絶滅危惧種がたくさん見つかっています。
例えばウネナシトマヤガイは平方メートルあたり300個体もの生息が確認されています。ほかにカワグチツボ、エドガワミズゴマツボなど絶滅危惧種が生息しています。
●猫実川河口には干潟性の生物はいないか
アナジャコの巣穴がいっぱいあります。ヤマトオサガニ、ニホンスナモグリ、ヨコヤアナジャコ、マメコブシガニ、アシナガゴカイなどなど干潟性の生きものはたくさんいます。
●干潟としての機能はほとんどないか
干潟の機能というと、水質浄化能力が注目されていますが、猫美川河口のカキ礁の水質浄化能だけとっても、年間何千万トンにもなります。
また、アナジャコなど他の生息生物の水質浄化能もあり、水質浄化能は十分にあります。
干潟の生物生産機能についても、ハゼの稚魚のすさまじい数、川が黒く見えるほどのイサザアミなどアミ類の大量発生など、ヒラメやワタリガニなど有用な漁業資源の涵養にとり重要な機能を猫実川河口は有しています。
昨年のスマトラ沖地震ではサンゴ礁に囲まれた島での被害が小さかったことが注目されていますが、カキ礁にも同じ機能が期待できそうです。波消し効果は防災機能にもつながります。地震のとき発生する津波から陸地を守り、人命や財産を守る効果が期待できるのです。
●全国でも有数のカキ礁
猫実川河口には全国でも有数のカキ礁があります。マガキが泥質干潟に株状に生息するカキ床(オイスターベッド)は各地にその存在が認められますが、猫美川河口のようにカキが礁(リーフ)を形成している場所は滅多にありません。
5000平方メートルという広さにカキが密集して林立している様子は生態学的にも、歴史的にもたいへん貴重なものです。熱帯のサンゴ礁と同様、「いのちの揺りかご」としてのカキ礁は漁業にとっても大変大切な場所です。
●人工干潟の価値
ある海洋生物学の専門家が人工干潟について礼賛しています。
1.人工干潟を造って猫美川河口沖に塩性湿地を取り戻すべきか
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どうして猫実河口沖でなければならないのでしょうか。
自然再生事業として湿地を回復しようとすることは、とてもいいことですが、世界では再生・回復する際には、それまでに埋め立てたりした場所、つまり現在は陸地になってしまっている場所を掘り返して元に戻すのが再生事業です。「とり戻す」という以上は、埋めてしまったところを掘り返して元に戻すべきではありませんか。
塩浜地区を海に返して、行徳・新浜との連続した塩性湿地を回復させてはどうでしょうか。
2.ウネナシトマヤガイも外来種?
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ウネナシトマヤガイが外来種ではないかという議論がなされているそうです。そうだとすると、千葉県はとんでもない誤りを犯したことになります。千葉県はこのウネナシトマヤガイを千葉県の絶滅危惧種に指定してしまっているからです。
こうした議論は正確に根拠を示して行なうべきではないでしょうか。例えば、アサリにしても、東京湾内で発生したものは湾内で幼生が拡散して各地に定着して成長しますが、他県の領域で発生したものが定着したら、このアサリは外来種なのでしょうか。
まして、外国生まれのアサリを国内の海で蓄養するなんてとんでもない外来種の導入ということになります。
3.研究しやすいから人工干潟をつくる?
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学者さんというのはすごい世間離れした発言をするものですね。この海洋生物学者先生の干潟研究のために国民は何十億円もかけて人工干潟を造ってあげるのでしょうか。
4.定期的に砂を供給して干潟を造る必要がある
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これは事実です。川から砂が供給されないところに砂質の干潟を造ったら、波に持っていかれる砂を補うために毎年何千万円もかけて砂を供給しつづけなければなりません。
この国民の経済的負担に耐えるだけの価値が、猫実川河口沖に造られるべきとされる人工干潟にあるでしょうか。
また、供給される大量の砂をどこから持ってくるのでしょうか。それがどこかの山を崩すとか、有害な外来種を拡散してやることになるような新たな自然破壊につながらないでしょうか。
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〈注〉
- 広島県の五日市市で造られた人工干潟は、面積24haで建設費42億円、毎年砂を供給しており、その費用は数千万円。
- サキグロタマツメタガイというアサリを捕食する外来種の貝が住む地域の砂を、アサリ養殖のためにとサキグロタマツメタガイのことを知らずに入れてしまったために、かえって砂入れした地域のアサリに被害が出たという実例もあります。
猫実川河口の干潟は、カキ礁という内湾生態系の要石を中心にして、豊かな自然の一部を形成しています。かつて人間が壊してしまったところこそ自然再生しようではありませんか
(2005年6月18日)
カキ礁研究会 連絡先:TEL・FAX O52-651-3029 小嶌
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