〜三番瀬市民調査〜
「三番瀬市民調査の会」は(2005年)4月10日、2005年度第2回目の「猫実川河口域市民調査」を行いました。参加者は約20人です。カキ礁研究の第一人者である鎮西清高さん(京都大学名誉教授)も参加してくださり、カキの生態などについてアドバイスをいただきました。
この日は、次の4つの調査を行いました。
- 酸化還元電位測定
- アナジャコ調査
- カキの重量調査
- カキ礁の生物調査
●酸化還元電位は全体的にはプラスの値
酸化還元電位は底質に酸素がたくさんあるかどうかを表すモノサシです。電位の値がプラスを示せば酸素が多いということを、マイナスは酸素が少ないということを表します。
5地点を調べた結果、1地点で値がマイナスとなり、酸素が少ないという結果がでました。しかし、ほかの4地点はすべて値がプラスです。
これまでの調査結果と同じように、「猫実川河口域は、全体的には酸素が豊富」ということが実証されました。
●アナジャコが無数に生息
アナジャコ調査では、1平方メートル四方で約150の巣穴が確認されました。アナジャコの巣穴は上部がYの字になっていますので、1平方メートル四方に約75(150の半分)のアナジャコが生息していることになります。
アナジャコの巣穴の深さは約3メートルです。この巣穴とアナジャコは、海水の浄化に大きな貢献をしています。
●さまざまな生き物を確認
市民調査ではこれまで、猫実川河口域で100種類以上の生き物を確認しています。今回も、イシガニ、ナミイソカイメン、シロボヤ、マハゼ、ケフサイソガニ、イボニシ、ヤドカリ、ワレカラ、ニホンスナモグリ、アナジャコ、ウロコムシ、イソコブツムシなどを確認しました。
また、県のレッドデータブックに掲載されているウネナシトマヤガイやエドガワミズゴマツボ、マメコブシガニも確認しました。
●“生物共同体”“生物の群集”という点でとても重要
今回調査の柱は、約5000平方メートルのカキ礁です。
このカキ礁は、市川塩浜護岸の沖合約500メートルの海域に広がっています。生きたカキが高密度で重なり合っています。
カキ礁の表面積は普通の干潟の約50倍に相当するそうです。すき間が多く、直射日光がさえぎられるので、普通の干潟には棲めない生き物も生息しています。要するに、いろいろな種類の生き物に“快適なすみか”を提供しているのです。
カキ礁はまた、
- 強い波を抑える
- 漁礁効果
- 他の生き物にエサを提供
- 海水の浄化
日本では、カキ礁の研究はあまり行われていませんが、米国ではカキ礁の役割が注目されており、研究が進められているそうです。
今回参加された鎮西清高・京都大学名誉教授は、こんなふうに感想を述べられました。
-
「ここのカキ礁は、何重にも積み上がっていて、タワー(塔)のようになっている。東京都心部の高層ビル群を上空からみたような感じがし、そのすごさに圧倒された。こんなカキ礁ははじめて見た。“生物共同体”あるいは“生物の群集”という点でとても重要なものであり、大切に残すべきだ」
「このカキ礁をぜひ子どもたちに見せてあげたい。というのは、今の子どもたちは本当の自然をあまり見る機会がないからだ。このカキ礁をみれば、自然のすばらしさやすごさがわかる。さまざま生き物が共同して一つの生物社会をつくっていることもわかる」
◇ ◇
今回の調査で、猫実川河口域に広がるカキ礁の重要な意義や役割がいっそう明らかになりました。この海域について、「瀕死状態」などという宣伝がされたり、「土砂を投入して人工干潟を造成すべき」ということが声高に叫ばれていますが、とんでもないことです。
(2005年4月)
猫実川河口域に広がる約5000平方メートルのカキ礁
カキ礁の大部分は生きたカキです。目視調査で、1平方メートルあたり300〜600個体が確認されました。
ウネナシトマヤガイ。千葉県のレッドデータブックに掲載されていますが、ここのカキ礁にはゴロゴロいます。
カキ礁研究の第一人者、京都大学名誉教授の鎮西清高さん。「ここのカキ礁は、何重にも積み上がっていて、タワー(塔)のようになっている。東京都心部の高層ビル群を上空からみたような感じがし、そのすごさに圧倒された。こんなカキ礁ははじめて見た。規模も全国最大級である。“生物共同体”あるいは“生物の群集”という点でとても重要なものであり、大切に残すべきだ」と述べられた。遠くに見えるのがカキ礁です。
カキ礁周辺でさまざまな生き物を確認
カキ礁周辺の泥干潟にはアナジャコが無数に生息しています。この日も、数匹を採取しました。
ニホンスナモグリもいました。
★関連ページ
- カキが支える多様な生態系〜カキ礁の役割(高島 麗)
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