〜市民調査の報告会〜
(2004年)11月28日、三番瀬市民調査の報告会が和洋女子大(市川市)でありました。
報告会は、三番瀬の猫実川河口付近の海域が「生物のたくさんいる豊かな海」であることを、多くの市民に知ってもらおうと開いたものです。2002年3月から継続的に調査をおこなっている「三番瀬市民調査の会」のメンバー7人が、この海域に生息している生物やカキ礁の役割などについて発表しました。
■多種多様な生き物が生息
青山一さんは、「猫実川河口域は命のゆりかご」というテーマで、3年間におよぶ調査の状況や内容を映像(動画)で発表。アナジャコ、ヤマトオサガニ、アナゴ、ゴカイ、アメフラシ、マメコブシガニなど、たくさんの生き物を映像で見せながら、「猫実川河口の近くは範囲が狭い割りには多種多様な生き物がすんでいる。この海域は、護岸、泥質、シルト質、カキ礁と、狭い範囲にいろいろな環境があり、それぞの環境に適した生物が生息して三番瀬の生物多様性をささえているようだ」と述べました。
■酸化還元電位は多くの地点がプラスの値
竹川未喜男さんは、酸化還元電位と底質の調査結果を発表。酸化還元電位は海底に酸素がたくさんあるかどうかを表すモノサシです。電位の値がプラスは酸素があること、マイナスは酸素がないことを示します。
竹川さんは、10地点以上を継続的に調べた結果、一部の地点で、「赤信号」であるマイナス200mV以上となったものの、多くはプラスの数値となったと述べました。とくにアナジャコの穴の内側はかな高いプラスの値(巣穴3センチ径の10センチ深部でプラス300mV以上など)がでています。
竹川さんは、「酸素の供給が不十分で還元的な底質環境となっている地点は、この海域の中の一部にすぎないことが分かった。そういう場所でも、海水に十分酸素が含まれているために生き物がすんでいられるのではないか」と述べました。
■アナジャコが無数に生息
伊藤恵子さんは、この海域にアナジャコが無数に生息していることを報告。2004年の調査(3回)では、1平方メートル四方に52〜234、平均121のアナジャコの巣穴を確認したとし、「アナジャコは、海底で水中の有機物を食べることにより、海水や泥をきれいにしている」「アナコジャコの穴には、アナジャコといっしょに多数の生き物がすんでいる」「猫実川河口域は、三番瀬の中で貴重な泥干潟である」などと述べました。
■多様な生き物生息と水質浄化にカキ礁が大きく貢献
高島麗(うらら)さんは、猫実川河口域に存在するカキ礁について報告。約5000平方メートルにわたるこのカキ礁は、大部分が“生きたカキ”であるとし、カキ礁が多様な生き物の生息や水質浄化などに重要な貢献をしていることをわかりやすく説明しました。
カキ礁の役割は次の6点です。
- いろいろな種類の生き物に快適な“すみか”を提供している。
- 直射日光をさえぎるので、普通の干潟には少ないウミウシ、ホヤ、イソギンチャクのような“乾燥に弱い生き物たち”も棲めるようになっている。
- 波の影響を抑えることで、泳ぐ力の弱い稚魚が「流れのゆるやかなカキ礁の裏側」に集まっている。
- 稚魚やエビが大型の魚から逃れるための「緊急避難所」ともなっており、漁礁の効果もある。
- カキが出す“栄養たっぷりのギフン(偽糞)”が、カニ、ヤドカリ、イソギンチャク、アミの群れなどの貴重な栄養源となっており、多くの生き物の命を支えている。
- カキは、有機物を濾(こ)しとって食べ、海水中の沈降物を取り除いて海水をろ過している。
■カキ礁は“生物生産の場”
名古屋から市民調査に参加している小嶌健仁さんも、カキ礁の大切な役割について報告。
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「猫実川河口域のカキ礁は大部分が“生きたカキ”である。自然にカキ礁が存在しつづけていることはたいへん価値のあること。これをはじめて見たときは、鳥肌がたった」
「カキ礁と周辺まで含めた“カキ礁生態系”は、栄養塩類からデトリタス(生物の破片・死骸・排出物、ならびにそれらの分解物)までを処理する総合浄化システムであり、海と陸の物質循環の要となる浅海域において、重要な役割を持つ場である」
今回の調査報告会は、猫実川河口域が多種多様な生き物の生息地であり、水質浄化能力の高い豊かな海であることを実証するとともに、この海域を保存することの大切さを明らかにしました。
三番瀬市民調査の会のメンバー7人が、猫実川河口域に生息している生物やカキ礁の役割などについて発表した。
名古屋から市民調査に参加している小嶌健仁さん
高島麗(うらら)さんは、カキ礁の重要な役割を報告。
約5000平方メートルの広さをもつカキ礁
猫実川河口域の生き物写真集
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