〜第17回「三番瀬漁場再生検討委員会」〜
(2010年)1月12日、第17回「三番瀬漁場再生検討委員会」が船橋市漁協の事務所で開かれました。10人の委員中8人が出席です。
大野一敏委員(船橋市漁協組合長)が傾聴に値する発言をしました。
大野委員の発言を2点紹介します。
◆三番瀬漁場改善策の優先課題は…
ひとつは、三番瀬漁場再生検討委員会の根幹にかかわる発言です。
大野委員はこう述べました。
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「三番瀬再生会議もそうだが、この委員会に対して“議論ばかりしていて少しも先に進まない”という批判がされている。もう少し効果のあがる調査や方法はないのか。たとえばアサリ漁についていえば、青潮(貧酸素水塊の湧昇現象)と江戸川放水路からの出水(江戸川放水路からの淡水と泥の一挙流入)が大きな影響を与えている。ところが、そういうものにたいする抜本的な対策は何もされていない。対症療法ばかりを議論しているように感じる」
まったくそのとおりです。この日も、アサリ漁の問題点として、青潮と出水によって斃死(へいし)量の多いことがあげられました。ところが、その対策はほとんど議論されないのです。議論の対象は「流れづくり」と藻場造成、アオサ対策がほとんどです。
このうち、藻場造成は、数年前からアマモの移植試験が進められていますが、なかなかうまくいきません。2008年度までは、移植したアマモが毎年、夏季にすべてが枯死です。今年度(2009年度)は昨年10月に移植株の残存が見られたものの、うまくいくかどうかは不透明な状況です。
アオサ対策については、ここ数年、アオサの発生量が少ないため、自走式潜水トラクターの出番もありません。
要するに、三番瀬漁場再生検討委員会は、三番瀬漁業にとって緊急性のないことばかりを議論しているようにみえるのです。大野委員が指摘するように、「対症療法的なことばかり」といっても過言ではありませす。
人工干潟造成をにらんでの「流れづくり」や藻場造成、アオサ対策は後回しにし、とりあえずは江戸川放水路からの出水対策を優先して議論すべきだと思います。
◆カキ礁の評価
もうひとつは、カキ礁にかんする評価です。
こんなやりとりがされました。
◇榎本保委員(南行徳漁協組合長)
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「カキ礁ができたと喜んでいる人もいるが、最近、カキがものすごい勢いで増えている。猫実川では、カキが山のようになっている。カキが増えると水の流れが止まってしまう。どうして増えたのかを聞きたい」
◇工藤盛徳委員(東海大学海洋学部名誉教授)
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「カキは増える。しかし、表面しか増えず、中身は死んでしまう。カキ礁の問題はやっかいだ。カキ礁が漁業に対して悪影響をおよぼしていることは間違いない。カキ礁はアオサの付着基盤となるため、ほっておくと三番瀬がアオサだらけになる。逆にいえば、そこに着目し、カキ礁に付着したアオサをどうにかすれば、三番瀬のアオサを除去する必要はなくなる」
◇小埜尾精一委員(NPO法人三番瀬環境市民センター監事)
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「怖いのは、カキが死んでしまうことだ。ほかの二枚貝とちがって、カキは中身が殻の中にくいこんでいる。腐った中身が外に出ない。そこにリン・チッソとかオイスターオイルを蓄えるのだが、それらが腐ったまま外に出ていかない。カキは毎年、腐っていく。生きているうちにカキを撤去すればきれいになる。しかし、そのままほったらかしておくと、オイスターオイルを出しながら次々と昇華されていく。三番瀬では、こうやってカキ礁が悪いスパイラルをつくりあげている」
◇工藤盛徳委員
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「まさにそのとおりだと思う」
◇大野一敏委員(船橋市漁協組合長)
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「この委員会では毎回毎回、カキ礁の話がでてくる。そこで、この問題をきちんと研究することが必要だ。カキ礁は三番瀬にいい影響をあたえているのか、それとも悪い影響を与えているのかということを調べるということだ。というのは、有明海では、カキ礁を増やすというとりくみがされているからだ。チェサピーク湾(アメリカ)でも、カキ礁がなくなったために環境が悪くなったとされていて、カキ礁を増やすとりくみがされている。そういうとりくみをみると、カキ礁が本当に悪い影響を与えているのかどうか疑問である。はたして真実はどうなのか、と思う。この問題については賛否両論があるので、きちんと調査してほしい」
◇工藤盛徳委員
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「それはそのとおりだ」
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以上です。
「カキ礁が悪いスパイラルをつくりあげている」という見解は、はじめて聞きました。カキ礁が三番瀬に悪い影響を与えているというのなら、大野委員が指摘するように、それを調査すべきです。調べもせずにカキ礁を有害物扱いするのは、おかしいと思います。
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