重要種に関する呆れた議論
〜第33回「市川海岸塩浜地区護岸検討委員会」〜
(2010年)11月8日、「市川海岸塩浜地区護岸検討委員会」の第33回会合が船橋市内で開かれました。この委員会は、三番瀬に面する市川市塩浜地区の護岸改修のあり方を審議しているもので、県知事の諮問機関です。
◆工事対象周辺で重要種4種を確認
同委員会には、猫実川(ねこざねがわ)河口域(浦安寄りの市川側海域)の人工砂浜化を強く求める人が何人も加わっており、毎回のように信じられないような発言がとびだします。
今回も呆れることを発言しました。塩浜1丁目の護岸改修工事に関する環境調査結果についてです。
県が提示した「事業対象範囲周辺の重要種確認状況」では、工事対象周辺海域でアカニシ、オオノガイ、マメコブシガニ、アマモが確認されたと記載されています。このうち、貝類のアカニシとオオノガイは、WWFJapan(世界自然保護基金日本委員会)のサンエンスリポートに「危険」(絶滅に向けて進行しているとみなされる種)と記載されていることも明示されています。
◆「三番瀬で通常見られる生物は
重要種からはずすべき」
これに、市川市行徳漁協の代表委員が異議をとなえました。
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「アカニシとオオノガイは三番瀬で通常見られる貝である。三番瀬にはいくらでもいる。それなのに、なぜ重要種となっているのか」
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「アカニシは三番瀬にたくさんいる。食べ過ぎてお腹をこわすくらいだ。そういうものは重要種からはずすべきだ」
◆学識経験者委員も同調
学識経験者の委員もこれに同調です。
東海大学の名誉教授(漁業)はこう言いました。
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「これは一つの資料である。三番瀬にはアカニシやオオノガイがいっぱいいるので、三番瀬に限っていえば重要種として適用できない」
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「アカニシやオオノガイが三番瀬にいっぱいいるということであれば、工事をしても影響がなく、問題ないということになる」
◆こんな理屈がまかりとおったら、
絶滅危惧種はいなくなってしまう
このやりとりと聞いていて、「そんなバカな!」と言いたくなりました。
たとえば瀬戸内海の周防灘周辺は、アオギス(魚類)の最後の生息地といわれています。
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《人間世界でアオギスがどうのこうの議論しているうち、アオギスが生き残るのは大分県から福岡県にまたがって広がる豊前海沿岸を中心とした瀬戸内海の周防灘周辺のみになってしまったようである。平成22年(2010)もアオギスは健在で、地元の魚市場では初夏の時期には相当数が水揚げされ、ギス(アオギス)は初夏の味として地元でいまも食されている。》(尾上一明「江戸前漁業小史・消えゆく江戸前の魚たち」、小松正之ほか『東京湾再生計画』雄山閣)
「事業対象範囲周辺の重要種に影響が極力およばないように工事を進めるべき」というのなら話がわかります。そうではなく、たとえ全国的には絶滅危惧種であっても、三番瀬で通常見られる生物は重要種として適用できない。だから、工事をしても影響がなく、問題ない──と言うのです。
こんな理屈がまかりとおったら、絶滅の危険に瀕している生物は日本からいなくなってしまいます。
2漁協の代表委員は仕方ないとして、2人の学者委員の見識のなさには口をあんぐりでした。
★関連ページ
- 砂付けを執拗に提起〜第32回「市川海岸塩浜地区護岸検討委員会」(2010/10/12)
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