県の三番瀬施策「真剣さがまったくみられない」

〜大野一敏・船橋漁協組合長さんが発言〜



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 (2011年)11月13日に開かれた県主催「三番瀬ミーティング」で、大野一敏さん(船橋漁協組合長)が県の三番瀬施策について発言しました。
 県の無策ぶりをズバリ指摘していると思いますので、紹介させていただきます。



大野一敏さんの発言



◆意見書を出しても、県は何もしない

 三番瀬の生態系を左右する大きなファクター(要因)が2つある。一つは貧酸素水の青潮である。もう一つは、市川可動堰(行徳可動堰)だ。
 船橋漁協は、可動堰の運用について考えてほしいという意見書を千葉県知事に提出した。三番瀬再生会議が開かれている時期のことである。これに対し、県は何もしていない。


◆「県農林水産部は何もしないの?」

 ここに集まられた方々は、三番瀬をなんとか再生しようという熱意をもっておられる。それは県の方々もおなじだ。今回の台風12号、15号のさいに可動堰が開放されたことについて、船橋漁協は国交省江戸川河川事務所(野田市)を訪れて「なんとかならないか」という要望を出した。

 その前には、抗議文と意見書も出した。なぜかというと、可動堰を開放すると、三番瀬は浅い海なので一瞬にして真水化する。塩水がなくなってしまう。4、5時間でアサリが死んでしまう。こういうことが一瞬にして起こる。アサリが死ぬと、船橋のアサリ漁師は1年間失業する。これは命にかかわることだ。仕事がなくなるからだ。

 そういうことで抗議すると、河川を管理している江戸川河川事務所の職員は、「江戸川沿岸の住民の生命と財産を守るために可動堰を運用している」と言う。回答はその一点だけだ。「私たちは、決められたことを粛々(しゅくしゅく)とやっている。けっして法律にそむいていないし、みなさんにも迷惑をかけていない」と言う。

「それでは、江戸川河口にある漁場はどうなるのか。どこが守るのか」と質問すると、「千葉県の農林水産部は何もしないの?」という答えがかえってきた。


◆可動堰が開放されると、アサリ漁師は1年間失業

 彼らは、彼らの職務を担っている。それは何かというと、「関宿から可動堰までは真水の貯水場になっている。それを利用する人たちの水利権を守るのが我々の使命である」と、彼らははっきり言っている。それを粛々とやっている。そこにある程度の真水を貯めないと、上水道にも影響するし、灌漑用水や工業用水にも影響するということだ。

 しかし、田畑はものすごく減少している。そういう中で、水利権だけが存在している。そのために、江戸川の水を確保しておく。そして、水位が2.5メートルを超えると可動堰を開放する。そうすると、河口域のアサリは全滅する。アサリが死ねば、北朝鮮や中国からアサリを輸入する。我が国では、そういうことは法の中におさまっていない。これを50年も60年も70年もつづけている。

 可動堰が開放されると、川下の三番瀬のアサリ漁師は1年間失業するということが起こっている。こういうことはいつになったら改善されるのか。真剣に考えているのか、いないのか。それを、いつも疑問に思っている。


◆同じ湾の中で、片方で埋めて、片方で掘っている

 それから青潮の問題だ。「青潮を改善するため」ということで、穴(埋め立て用土砂の浚渫跡)を埋め戻している。「穴に貧酸素水塊がたまっているために青潮が発生する」と言う人がいる。ところが、東京港も千葉港もすごい。すべての港湾から青潮が発生している。

 東京湾は河口域であるために砂が埋まる。埋まると浚渫し、深くしている。大型船を入れるために深く掘っている。同じ湾の中で、片方で埋めて、片方で掘っている。これは矛盾している。

 学問として話す先生方は大勢いる。しかし、そういうことについての研究は進んでいない。みんな経済を考えて、そういうことを発言することも憚(はばか)っている。


◆河川をよくしないかぎり、三番瀬の環境は改善できない

 そういう中で東京湾の環境をどうやって改善したらよいのか。三番瀬は東京湾の一部だ。

 たとえば、アメリカのサンフランシスコ湾では、湾に流入する河川や湿地帯もすべて対象にして、科学的に湾の環境改善策を講じようとしている。そころが、東京湾の場合は、そういう真剣さがまったくみられない。片方で埋めて、片方で掘るということをやっている。そして、埋め立てもいまだやっている。

 そういう中で三番瀬だけをよくしようとしても無理だ。江戸川や利根川の上流に位置する群馬県や埼玉県も対象にし、河川をよくしないかぎり、三番瀬の環境は改善できない。

 東京湾は河口湾だ。だから、川がよくなれば、東京湾もよくなる。小さな川の一部は改善しようと計画をたてている。しかし、大きな川は分水嶺まで検証にしなければダメだ。

 可動堰も、ふだんから開けていれば、真水が河口域に常に流れ込む。ところが、1年に1回とか2年に1回ぐらい開けるだけだ。これが実態である。三番瀬を真剣によくしようと思っているのかと、いつも疑問に思っている。

 そういう疑問を河川管理者(国交省江戸川河川事務所)のほうから逆に突きつけられた。「本当に三番瀬を守るのですか?」と。







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