危うし三番瀬!

古井利哉



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 2001年、堂本知事誕生により埋め立て中止となった三番瀬は一躍、全国にその名を知られ、堂本知事も環境派知事として脚光を浴びるところとなった。
 そして、住民参加のもとに「三番瀬再生計画検討会議」(仮称三番瀬円卓会議)が翌2002年1月に発足した。


●「三番瀬条例」は未制定

 しかし、2年におよぶ三番瀬円卓会議では、堂本知事がその実現を確約している第二湾岸道路(三番瀬を通る)についての議論が意識的に避けられたり、猫実川河口域の評価やラムサール条約への登録など、重要事項について意見が別れるなどの矛盾を包含しつつ、2004年1月に「三番瀬再生計画案」を堂本知事に提出して解散した。
 この再生計画案では、再生計画の確実な実現を担保すべく「条例要綱」がまとめられているが、県議会に提案されるどころか、事務局で条例案の策定作業もなされず、堂本知事も任期中は議会にかけないと断言している始末である。


●「公共事業の説明会」と見まごう「再生会議」準備会

 このような中で、円卓会議の後継組織「三番瀬再生会議」については、半年が過ぎようとする8月末にようやくその準備会が開催された。
 この準備会は8月と9月に都合2回開かれたが、重要なポジションを占める漁業関係委員が全員欠席するという異常なものであった。
 議題は県があらかじめ用意した「市川市塩浜護岸の改修」「市川漁港の整備」などを先発事業とする旨の、まるで「公共事業の説明会」と見まごう会議が繰り広げられたのである。
 先発事業の説明が県の所管部署から逐一説明されたが、そこには三番瀬を再生すると言う唯一の目的に照らした横断的な整合性はまったく見られず、役所としての行政的役割分担が醜悪にさらけ出されたのみであった。
 つまりこの会議は、「三番瀬再生と言う名の公共事業」を役所の都合に沿って実施する説明会以外のなにものでもないように思われた。
 なぜなら、「塩浜護岸」を先発事業とする合理的理由としては、「今年度予算(調査のための)を確保したから年度内に使う」ことと、「漁港の移転」は第一次埋め立ての際の行徳漁協との約束以外に考えられないからである。


●ラムサール条約登録は軽視

 このように、少なくともこの2つの公共工事は、三番瀬の再生とはまったく関係のない事業であって、行政の都合のみを優先した単なる公共事業であると断ぜざるを得ない。
 (1)「市川市塩浜護岸の改修」、(2)「市川漁港の整備」につづく他の先発事業をみてみよう。(3)「環境学習および利用・管理に関する検討会議の設置」、(4)「自然環境のデータベース構築、継続的な観測・記録調査(モニタリング)などの科学的な情報の集積」、(5)「三番瀬漁場再生調査」となっている。
 これをみれば明らかなように、(3)〜(5)の課題は、いわば(1)〜(2)の公共工事を実現するための付け足しであり、自然保護の観点からの批判を免れるためのアリバイづくりといわざるを得ないものである。
 また、2005年に迫った「ラムサール条約への登録」が環境省によりノミネートされたにもかかわらず、また円卓会議の「再生計画案」で上記5項目と同列のアクションプランに盛り込まれたにもかかわらず、先発事業に入ってないのは誠に不自然というほかはない。
 このようにみてくると、三番瀬は、当初の目的であった「保全と再生」から大きくはずれ、防災のための護岸工事や漁港の移転新設といった公共工事に流れが移ってしまった観がある。
 また、「再生会議」の位置づけは「知事の諮問に対して(のみ)答申を行う」とされ、先発事業の具体的検討は、ほかに県が設立する検討委員会で行い、再生会議はこの報告を受けるのみとなっている。


●保全運動を強めることが必要

 つまり、再生会議は何の権限もなく完全に形骸化している点をわれわれは見逃してはならない。われわれはこのような動向をしっかり見守りつつ、再生会議への積極的参加・県担当部署に対する意見発信などの公的活動はもとより、現在実施中のラムサール条約登録促進署名運動や、上記の「塩浜護岸工事」に代表される拙速な公共工事を中止するように反対運動を強力に展開していく必要がある。

(2004年10月) 





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