「東京湾・ハゼサミット」参加記




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 2000年6月10日(土)、東京、千葉、神奈川の約30の自然保護団体が連携し、「いのちの海、東京湾を市民の手にとりもどそう!」と、私たちに身近なハゼを縁結びにしたシンポジウム「東京湾・ハゼサミット」を開きました。
 以下は、大浜清さんと田久保晴孝さんの参加記です。







今後の東京湾保全にエネルギーを与えるものとなった

千葉の干潟を守る会代表 大浜 清



 6月10日、東京芝浦サービスセンターに自然保護団体、遊漁船、つり人など170人が集まり、「東京湾・ハゼサミット」が開かれました。主催はハゼサミット実行委員会で、後援・協力団体は31団体でした。
 この集まりは、東京都江東区の旧有明北貯木場(通称・十六万坪)埋め立て反対運動をすすめている団体が核となって企画されました。十六万坪の埋め立ては、東京都が臨海副都心計画の一環として埋め立て手続きを進めているものです。さらに、このサミットは、東京湾奥部を代表する魚、ハゼの宝庫であるこの「江戸前の海」を守り残す運動をきっかけにし、千葉の三番瀬・盤洲干潟も神奈川の海も、この東京湾を1都2県の市民が手をたずさえて守っていこう、という気持ちからの結集の場として企画されました。
 注目すべきことは、つり人の間で、“自然を守ろう”とか、“魚も漁場も生態系も環境の質も歴史的遺産も守らなければならない”という意識がここ数年、急速に高まり、この集会を生み出す力となっていることです。このことは、ラムサール条約が水鳥保護から漁業基盤保全や生命を支える水系、水域の保全へと大きく発展しつつあることとあわせて、今後の湿地保護や東京湾保全にエネルギーを与えるでしょう。
 実行委員会の中心となった「東京湾・十六万坪の自然を守る会」の田巻さん、そして「江戸前の海十六万坪(有明)を守る会」などを核として働かれた皆さん、御苦労さまでした。







いのちの海、東京湾を市民の手にとりもどそう
  〜「最後の江戸前」有明北十六万坪の埋め立てを見直せ!〜

三番瀬を守る会会長 田久保晴孝



●豊かな自然が残る「有明北十六万坪」

 かつて東京湾には1万3千ヘクタールもの干潟と、それにつづく浅瀬が広くあり、生き物が豊富で、漁業も盛んに行われていた。しかし、干潟や浅瀬の埋め立てにより、湾の20%(2万5千ヘクタール)、干潟の90%が失われ、残った干潟や浅瀬は、三番瀬と盤洲などだけになってしまった。今では市民が触れられる自然の水辺は限られ、湾岸地区の多くが、高速道路や工場・倉庫群にさえぎられている。
 そんな東京湾の奥部にも、東京都の臨海副都心開発予定地の有明旧貯木場(通称・十六万坪。谷津干潟とほぼ同じ面積で、江戸湾の浅瀬の一部分)が残っている。明治時代に築かれた石垣堤防と埋め立て地に囲まれた閉鎖的な水域で、ハゼ、スズキ、ボラなどの魚類(特に稚魚の生育場)やゴカイやトビムシなどの底生生物が豊かに生息している。とくに「ハゼの楽園」として知られ、夏から秋にかけて、多くの釣り舟や屋形船でにぎわう。
 パネラーの工藤孝治さんの調査では、一網(ひとあみ)で2キログラムものハゼがとれていたが、なぜか都のアセスでは、ハゼは秋にはいなかったり、巣穴がないことになっている。再調査が必要であろう!
 最近、国のレッドデータブックにのっているエドハゼが当地で採れた。ハゼサミットの会場でも、生きたエドハゼを水槽で展示していた。
 石原知事は、埋め立てられてもハゼはどこかにいくだろうと発言されたが、身近な魚ハゼの一大生息地を失ってしまったら……?
 鳥類も多く、特に冬季のカモ類(ホシハジロなど)は、不忍池にいる以上の個体数が、当地を含む貯木場で記録されている(日本野鳥の会・東京支部調査)。夏季は、カルガモの大繁殖地になり、冬には希少種のオオタカも記録されている。


●埋め立ては不要

 埋め立ての目的として、道路建設、住宅建設、まちづくりが示されている。臨海副都心開発計画(448ヘクタール)の一部(40ヘクタール)。道路は、埋め立て、高速晴海線や幹線道路4本(計20車線)を建設するというもの。
 臨海部は、今でも大気汚染がひどく、全域で環境基準を超えており、交通騒音を含め改善が求められている地域である。住宅建設計画(1000戸)についても、周辺で建設中・計画中が1600戸あり、必要性が乏しい。上記の大気汚染も心配であるので、海浜環境を破壊し、埋め立てをしてまでの住宅用地はいらない。
 埋め立て事業は、関連事業費を含め1319億円かかる予定である。これまで都は臨海関連事業費で1兆7千億円も使っていて、これが都の赤字の原因の一つになっている。このまま臨海開発を進めていけば、新たに3兆5千億円を都民が負担することになる。


●パネラーの話

 当日は、工藤孝浩さんから「ハゼを中心にした東京湾の魚について」の講演があった。工藤さんは、「ハゼは、東京湾を見直す(開発・保全・復元)のにいちばん身近でよい魚である」「神奈川県では、ハゼを活かして水辺のある街づくり運動が始まっている」と話された。
 パネラーの開発法子さんは、三番瀬の調査からわかったこととして、干潟や浅瀬を生態系としてとらえることの重要性を強調し、また、有明地区の開発の様子を古い地図を重ねながら話された。
 谷津干潟(千葉県習志野市。40ヘクタール)が、住民運動などによって残され、ラムサール条約指定地になり、広い視野からものごとを捉え、多角的に考え、市や県や国の宝になったように、「有明北」が保全されれば、都民や未来の子どもたちの宝になるだろう!
 パネラーの安田進さんは、都(港湾局)や都議会等の言動や姿勢のほか、エドハゼなどについて話された。遊船業をいとなむ安田さんが「こんなに多種多数の生き物がこの海にいたのかと、この運動を通じてはじめて知った」と語ることばには、力がこもっていた。
 パネラーの前田直哉さんは、前出の臨海副都心問題について話された。


●今後に向けて

 東京都、千葉県(盤洲、三番瀬など)、神奈川県(干潟など)の約30の自然保護団体や市民団体が一堂に会して東京湾の開発と保全について話し合ったことは、大変意義深い。今後もこの集会を引き継ぎ、東京湾の問題について集まりをもつことが確認された。
 都から国(運輸省)へ上がった埋め立て計画が許可されると工事が始まる。いのちの海、東京湾を市民の手にとりもどそう! 江戸前の海(有明)十六万坪の埋め立て反対の意思を広げていこう。
 なお、当日採択された「東京湾・ハゼサミット宣言」は、6月28日に東京都、環境庁、運輸省に提出された。




東京湾・ハゼサミット







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