千葉の自然保護団体が抗議
東京湾深奥部に残された貴重な江戸前の海として知られる旧有明貯木場(通称・十六万坪)が、東京都の埋め立て計画で危機に瀕しています。
ここは、江戸前ハゼの貴重な生息地です。絶滅危惧種のエドハゼが発見されたのをはじめ、20種近いハゼやさまざまな魚の幼魚が生息しています。そのため、自然保護団体や釣り人、釣り船業者などの反対運動が広がり、計画を見直せとの世論も強くなっています。ところが、こうした世論の高まりに逆行し、運輸省は(2000年)8月17日、都が申請した埋め立て事業を認可しました。
この暴挙に対し、東京湾の自然環境を守るために活動している千葉県内の自然保護団体が8月21日、抗議文を運輸大臣と東京都知事あてに提出しました。提出したのは、千葉の干潟を守る会、千葉県自然保護連合、三番瀬を守る会、市川緑の市民フォーラム、三番瀬を守る署名ネットワークの5団体です。
抗議文の内容は以下のとおりです。
運輸大臣あて |
2000年8月21日
運輸大臣 森田 一 様
千葉の干潟を守る会
千葉県自然保護連合
三番瀬を守る会
市川緑の市民フォーラム
三番瀬を守る署名ネットワーク
「有明十六万坪」の埋立認可に抗議し、撤回と再検討を求める
東京湾の干潟・浅瀬の9割以上がすでに埋め立てられてしまった。今残る干潟・浅瀬はそれぞれに助け合って、ようやく生きものを養っている。東京湾は言うならば「五体不満足」の状態に追い込まれている。それにもかかわらず埋め立てが許されるのか。
東京都は新海面処分場を埋め立てるのに際し、東京港港域が不足する事態となり、検疫錨地を千葉県海域から借り入れている。そのような事態に至っているのに、なけなしの水面を埋め立てることをなぜ許すのか。埋立を行うなら港域を千葉県に返すべきである。
私たち千葉県の市民は埋立をやめ干潟・浅瀬を保全することを県に強く求めている。「環境先進自治体」東京都が野放図に埋立を進行させることを許すことは出来ない。保全は千葉県に、埋立は東京都に、というのでは筋が通らない。
埋立造成後の土地利用計画は12年前のものであり、周辺部には未利用地が少なくない。住宅地には代替地があるが、生物相豊かな有明地区の水辺環境に代替地はない。運輸省は有明地区の現状に即して調査・再検討を行い、「十分に審議をつくしていない」という、私たちの批判に対し、積極的に応えるべきである。
また運輸省はエコポ−トを政策として掲げている。エコロジーを破壊する今回の認可はエコポート政策と相反するものではないのか。それともエコポート政策は埋立を容認する隠れ蓑に過ぎないのか。
「公有水面」は私たち全ての国民が潜在的に所有しているものであり、また将来の国民もその権利を有しているものである。国や省、地方自治体の所有物ではない。公物である。そして「公有水面」は人間以外の生物のものでもあり、全地球的財産である。このことはラムサール条約が示す湿地保全の理念である。
その上、東京都の環境基本条例には「よい環境を有する権利とよい環境を次の世代に引き継ぐ義務を負う」ことがうたわれている。希少な有明地区の水辺環境の改変には、慎重の上にも慎重に、市民の意見を十分に聞いた上で対応すべきである。
以上の点から、私たちは「有明十六万坪」の埋立認可を承服することが出来ない。今回の運輸省の埋立認可に抗議し、認可の撤回と再検討を強く求めるものである。運輸省の回答を求める。
東京都知事あて |
2000年8月21日
東京都知事 石原慎太郎 様
千葉の干潟を守る会
千葉県自然保護連合
三番瀬を守る会
市川緑の市民フォーラム
三番瀬を守る署名ネットワーク
「有明十六万坪」の埋立着工を停止し、計画を再検討せよ
東京湾の干潟・浅瀬の9割以上がすでに埋め立てられてしまった。今残る干潟・浅瀬はそれぞれに助け合って、ようやく生きものを養っている。東京湾は言うならば「五体不満足」の状態に追い込まれている。それにもかかわらず埋め立てが許されるのか。
東京都は新海面処分場を埋め立てるのに際し、東京港港域が不足する事態となり、検疫錨地を千葉県海域から借り入れている。そのような事態に至っているのに、なけなしの水面を埋め立てることをなぜ許すのか。埋立を行うなら港域を千葉県に返すべきである。
私たち千葉県の市民は埋立をやめ干潟・浅瀬を保全することを県に強く求めている。「環境先進自治体」東京都が野放図に埋立を進行させることを許すことは出来ない。保全は千葉県に、埋立は東京都に、というのでは筋が通らない。
埋立造成後の土地利用計画は12年前のものであり、周辺部には未利用地が少なくない。住宅地には代替地があるが、生物相豊かな有明地区の水辺環境に代替地はない。親水護岸の造成で批判をかわそうとしているが、埋立の害に比べ申し訳にもならない。有明地区の実状を調査・再検討し、「十分に審議をつくしていない」という私たちの批判に対し、積極的に応えるべきである。
「公有水面」は私たち全ての国民が潜在的に所有しているものであり、また将来の国民もその権利を有しているものである。国や省、地方自治体の所有物ではない。公物である。そして「公有水面」は人間以外の生物のものでもあり、全地球的財産である。このことはラムサール条約が示す湿地保全の理念である。
東京都の環境基本条例には「よい環境を有する権利とよい環境を次の世代に引き継ぐ義務を負う」ことがうたわれている。希少な有明地区の水辺環境の改変には、慎重の上にも慎重に、将来に禍根を残さないよう対応すべきである。私たちは「有明十六万坪」の埋立認可を認めることは出来ない。着工を停止し、計画そのものの再検討を強く求めるものである。
★関連ページ
- 「有明十六万坪」埋め立て認可で千葉の自然保護団体がアピール(2000/8/26)
- 「東京湾・ハゼサミット」を開催(2000/6/10)
- 「東京湾・ハゼサミット」参加記(大浜清、田久保晴孝)
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