人工干潟に関する市川市のウソ
〜市川市行徳漁協がつくった「養貝場」〜
中山敏則
市川市塩浜1丁目の地先に人工干潟がつくられています。これは、市川市行徳漁業協同組合(漁協)が1982年から83年にかけて「養貝場」として造成したものです。
この人工干潟「養貝場」について、行徳漁協の関係者が興味深いことを話してくれました。
■みかけは立派な人工干潟だが、アサリはまったく育たない
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「養貝場はみかけは立派な人工干潟だが、アサリはまったく育たない。なぜかというと、波によって砂が動きつづけているからだ。砂が動くところではアサリは育たない。」
「養貝場は、漁船が通る澪(みお)の浚渫(しゅんせつ)土砂を用いて造成した。しかし、沖側の方がどんどん浸食されている。それは、波の影響だ。」
「養貝場は潮干狩り場にする目的で造成した。アサリは、ほかの所から持ってきてまいた。ところが、陸地に駐車場を確保できなかったため、潮干狩り客は少なかった。それで、すぐにやめてしまった。」
■「毎年春にアサリ採取が行われている」と
平気で大ウソをつく市川市
ところが、市川市の三番瀬担当部局(行徳臨海部)は、養貝場ではアサリが育たないということを否定しています。市は、猫実川河口域(三番瀬の浦安寄り海域)に土砂を入れて人工干潟をつくることを盛んに主張しているからです。
たとえば2002年、市川市は古井利哉さん(市川市民)とこんなやりとりをしています。
◇古井さんが市川市に送ったメールより(2002年2月18日)
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「漁協が造成した人工干潟は、他から大量に持ち運んだ稚貝が全く育たずに大失敗に終わり、わずか2年でとん挫したと聞いております。また、この場所が現在アサリ漁場として利用されているとは、地元の漁業従事者の誰一人として首肯するものはおりません。むしろ、人工的に盛り土をしたために、潮の流れが変わりサヨリなどの回遊が全く見られなくなったと釣り人の多くは語っております。」
◇市川市の回答(2002年2月21日)
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「塩浜1丁目前面の人工干潟は、市川市行徳及び南行徳漁業協同組合に与えられている漁業権漁場で両漁組のアサリ漁業者により、毎年秋に稚貝が放流され、翌年春に成貝の採取が行われています」
「今の三番瀬は、昔のように自然にアサリが湧き育つ海ではなくなってしまったかもしれませんが、人工干潟は三番瀬に残された貴重な干出機能を有する場として、アサリの養貝、藻場の造成、種貝の育成、青潮の避難場など大切に利用されています。古井さんがおっしゃる『この場所が現在アサリ漁場として利用されているとは地元の漁業従事者の誰一人として肯定するものはおりません』との発言はどのような事実に基づいてのことなのでしょうか。」
今回、行徳漁協関係者の話を聞き、市川市の言い分は大ウソであることが改めて実証されました。
「毎年秋に稚貝が放流され、翌年春に成貝の採取が行われています」などというのは真っ赤なウソです。そんなウソを市民に平気で言う行政というのはいったいなんでしょうか。
(2009年9月)
航空写真は千葉県ホームページ掲載より
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