第4次署名提出。署名総数は22万人に
埋め立て計画は「縮小」ではなく「撤回」し、
三番瀬を保全せよ!
〜計画策定懇談会の審議続行を要求する〜
千葉の干潟を守る会 大浜 清
(1999年)12月17日、「三番瀬を守る署名ネットワーク」のメンバー16名は千葉県企業庁におもむき、沼田武知事あてに第4次署名提出を行った(第1次提出は、1998年4月14日の「干潟を守る日」)。
署名数は次のとおりである。
・三番瀬埋め立て計画撤回要求署名………2万5000
累計………22万
・見直し案の白紙撤回要求ハガキ…………1668通
(7405人)
県側は、中川和義企業庁技監(企業庁ナンバー3)や滝口臨海建設課課長補佐らが出席し、署名を受け取った。中川技監は、「署名の重みはよくわかっています。必ず知事に伝えます」と答えた。
ネットワーク事務局は、「愛知県はがんばっています。計画の撤回はけっして県政の失敗ではありません」「人工干潟は無謀すぎます」など、署名に添えられたメッセージのいくつかを紹介した。
また、代表の大浜は、9月25日開催の「99 国際湿地シンポジウム in 三番瀬」で、アメリカ合衆国魚類野生生物局のピーター・ベイ氏が、サンフランシスコ湾の干潟保全と、干拓地の湿地回復の試みの成功例・失敗例を紹介したうえで、「しかし、東京湾は、もうこれ以上開発の手を加えては生態系が保たれるか生きのびられるかの保証はない。新しく人工干潟を造るというが、(開発で)三番瀬(の生き物)が残るかどうかの賭けをして、さらに補償をするための回復措置という賭けを二重にしたいのだろうか」と述べたことなどを紹介し、「さしあげてある資料集に目を通しているか」と質問したところ、「読んでいる」と答えた。
続いて、千葉県が、今年度内の計画決定を意図して、第4回計画策定懇談会を年末の12月25日(土)に強行のうえ、審議打ち切りを図っていると伝えられていることを質問し、抗議した。「第3回策定懇では、縮小案の根拠についてはげしい批判を浴び、再提出を求められているのに、1週間前になってもまだ資料も示されておらず、とうてい1回で審議がつくせる状況ではない。まだ議論にも入らぬのに、中身より前に審議打ち切りを宣するのは、策定懇軽視もはなはだしい。本当に打ち切る気なのか」とただした。
中川技監は、「企業庁としては、今回の策定懇で審議をまとめていただければと望んでいるが、それはあくまで委員の先生方が決めることである」と述べた。
「しかしそれならば、一方で知事が行っているという審議打ち切りの意向表明は、委員への圧力ではないか」と抗議すると、中川技監は、「県議会などの公約発言の場で、知事がそのような発言をしたことはない」と答えた。また、「国も赤字、県も赤字、これをどう考えているのか」と財政問題に迫ったのに対しては、「そのような事実のあることは知っている」と答えたのみだった。
私たちは、次のように述べ、策定懇の審議継続を強く要望した。
「これまで県は、県側が行った線引き(基本計画および縮小案)を委員に示して意見を求めてきた。しかし、それはデータ不足、根拠・理由不足として批判を浴び、やり直し中であり、審議不足であって、議論はまだ内容的に始まったばかりである。
それだけではない。県の計画提示によって、市民の間からの批判と提案がしきりに出され始めた。県はさらに情報を提供し、市民の意見を育て、これをとりあげて吟味すべきである。そのような機会が今、熟しつつあるのではないか。策定懇こそ、それを行うことのできる場として重要であり、その意味でも、議論はこれから発展させられるべきである。
そうすることによってはじめて、環境会議提言による補足調査が開いた先進的な努力が、国土計画において科学的にも民主的手続きのうえでも実現されることになる(中川技監も、補足調査が計画アセスにあたることを認めた)。
線引きは、諸問題における合意点が見えてきた段階で行うべきである」
◎解 説
本年6月、第3回計画策定懇談会に示された縮小案と論議の概要は次のとおり。
埋め立て面積 …………………市川二期地区90ha、京葉港二期地区11ha、計101ha
人工海浜(人工干潟)造成……60〜70ha
用 途……………………………第二東京湾岸道路(東京外郭環状道路ジャンクション
を含む。両地区)。流域下水道処理場用地、街づくり
支援用地、公園緑地(以上、市川二期地区)、港湾拡
張(京葉港二期地区)。
埋め立ての理由
(1) 都市計画上、これらの土地が必需であり、内陸部に求めがたい。
(2) 海域環境の改善(猫実川河口域のヘドロ化が、他海域に悪影響をおよぼして
いる。とくにアサリとノリで。埋め立てて改善)
(3) 海浜環境と海浜利用の改善(垂直護岸を解消し、「パブリック・アクセス」
を改善するために埋め立てる。また、ゴミの不法投棄、廃船・廃車放置、不
法係留などの無法地帯化を埋め立てによって解消)など。
●策定懇委員からの批判と対応
- 縮小案の影響予測は補足調査にもとづいておらず、お粗末である。(これに対しては、補足調査委員メンバーに委嘱してまとめ直し中。概要のみ提出の予定)
- 有用な浅瀬をつぶして人工干潟を造成することは、無意味である。(これに対して企業庁は、藤前干潟に関する環境庁見解などに抗し、「千葉県は人工干潟を造成技術をもっている」と主張。なお、人工干潟の面積は13.2haに縮小予定と伝えられる。)
- 第二湾岸道の影響にふれていない。(これについては、高架式とトンネル式の並論併記)
- 計画の必要性が不明瞭
●私たちの批判と提案
- 猫実河口域の汚濁は進行しておらず、事実に反する。汚濁の主な原因は、過去の流域下水道処理水放流(1981〜91年)によるものである。また、沖へのノリ漁場移動の主たる原因は漁法の変化(ノリひびからベタ流しへ移行など)によるものである。
- 猫実川河口域は、砂質が基調である三番瀬の中で泥質域として生物多様性を生んでいる。とくに幼魚の生育場として重要な海域となっている。
- 9割以上の干潟を埋め立ててしまった傷だらけの東京湾を、これ以上破壊してはならない。ことに、三番瀬は盤洲と並んで最も生命豊かな海域であるが、環境条件はきわめてきびしく、危機的である。
- 海洋環境の回復は、まず、これまでに加えた破壊の修復(例:埋め立て用の浚渫跡を埋め戻す、垂直護岸の形状変更は埋め立て地側で行う、埋め立て地を削る、などを可能な限りおこなう)から着手し、浅場をつぶすことを避けるべきである。
- 第二湾岸道に関しては、橋梁式かトンネル式かのみを論じていて、自然環境への影響は論じつくされていないばかりか、周辺都市における公害問題、都市環境への影響(道路による分断と車の絶対的な増加など)はまったく論じられておらず、住民無視である。渋滞解消については、ほかの対策が必要である。
- 財政についてまったくふれていない。しかし、県財政はすでに破滅的であり、借金総額は1兆8000億円、県民1人あたり30万円近くに達している。国家財政における借金総額にいたっては360兆円、すなわち国民1人あたり300万円に達する。その最たる原因は公共事業の乱発である。この点からだけでも、事業費が数千億円と予想される三番瀬計画は直ちに凍結しなければならない。海を埋めては、土地に換え、金に換える投機的発想は亡国的である。
- 埋め立て理由は、いずれも本来、陸域で解決すべきものである。陸域における国土計画・都市計画・土地利用の不合理をそのままに海に解決を押しつけている。また、それは、資源・土地・海の使い捨て思想に発している。
埋め立てをやめるという前提に立たないかぎり、諸矛盾の根本的な解決は放置されよう。
このような観点から、私たちは、
- 水循環にもとづき、下水道計画の再編(三番瀬地域研究所による提言)
- これまでの工業中心の臨海開発計画の見直しにもとづく、市民主体の街づくりと自然環境回復(市川緑の市民フォーラムによる「市川塩浜地区プラン」など)
をすでに提案している。
また、
- 第二湾岸に代わり、公共交通を充実と道路システムの再点検
- 都市基盤整備と自然環境回復において、原風景の尊重と提起、および自然の力とサイクルを活用した伝統的工法に学ぶこと。
を提唱したい。 さらに、次の促進を望む。
- 自然環境保全と漁業基盤保全のために、三番瀬を中心とした東京湾のラムサール条約湿地登録、シギ・チドリ重要生息地ネットワークおよびガンカモ類重要生息地ネットワークへの参加、それらにともなう保護措置の整備
- 三番瀬・谷津干潟・行徳保護区を核として結ぶ臨海自然保護区ベルトの一体整備と市民利用の促進。
- 水循環にもとづき、下水道計画の再編(三番瀬地域研究所による提言)
(1999年12月)
★関連資料
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