異論があるのに強引に「合意」としてまとめる

〜第12回三番瀬「護岸・陸域小委員会」〜




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 (2003年)5月22日、三番瀬「護岸・陸域小委員会」(円卓会議の下部組織)の第12回会合が船橋市内で開かれました。感想を含めながら、議論の一部を紹介します。

 議題は次のとおりです。
(1)護岸・陸域小委員会の新規委員の選出
(2)ワーキンググループ(WG)の検討状況
 ・浦安WG
 ・市川WG
 ・船橋WG
(3)海域小委員会への報告
(4)今後の検討の進め方(各WGでの議論のまとめ)
(5)海域小委員会からの報告
(6)その他
 ・河川ゾーンの検討委員
 ・再生制度検討小委員会の委員
 ・その他





●浦安WGの合意事項

 浦安WG(ワーキンググループ)から報告された合意事項は次のとおりです。

(1)直立護岸部分
  • 護岸は背後の人と建物を守る強固な構造にする。
  • 海岸線は基本的に海側へ出さないこととするが、補修などのために必要最小限、海側へ出す場合もある。
  • 「水に触れる」親水性については、全面的に確保するのではなく、スポット的に1、2個所、小段を設けて確保する。
  • 「目で見える」親水性については、子供が海が見れる構造(高さ)の遊歩道を設けて確保する。
  • WGで合意したイメージ図を小委員会に提出する。
(2)階段護岸で背後が売却済みの部分
  • 護岸は今のままで手をつけない。
  • 遊歩道を整備し、直立護岸部分とつなげる。
  • 海へのアクセスは考えない。
(3)階段護岸で背後が未利用地の部分
  • 護岸は後背地の施設の設計に合わせ、施設が魅力あるものになるような検討を行う。
  • 干潟の適正な管理ができるように、アクセスのあり方を考える。
(4)宿泊施設を含む環境学習施設の整備の検討
  • 背後地の自然の干潟と連携した自然環境施設を作る。
  • 宿泊施設については、当面考えないこととするか、将来的には考える必要がある。
  • 複合的な施設で公園化したものにする。
  • 駐車場、駐輪場を含めた大きな面積の確保。
  • 利用の指導など干潟の適切な管理のための施設、自然体験のための施設、自然再生の実験のための施設とする。
(5)猫実川河口部についての検討
  • 猫実川については「干潟的環境の回復・創造WG」で議論してもらうようにする。
(6)背後の土地の利用についての検討
  • 未利用地において、自然再生の試みを行っていく。
  • 土地の確保を要望する。
(7)自然の干潟の活用についての検討
  • 利用のルールをつくる。
  • 干潟の適正な管理ができるように、アクセスのあり方を考える。


●市川WGの合意事項

 市川WG(ワーキンググループ)から報告された合意事項は次のとおりです。

(1)護岸
  • 以下の3点をワンセツトとし、検討する。
     1) 海岸保全区域を現在の水際線(海岸線)の位置に移し、幅をもった形で設定する。
     2) 護岸の高さは海に親しめるような高さ(6mくらいか)とすることを要望する。
     3) 自然再生の実験の場とする。
  • 緊急の課題として護岸を考える。この場合、
     1) 地権者の合意のもとに進める。
     2) 現在の海岸線の位置で護岸形状を検討する。
  • 海岸保全区域について、その制約条件を加えて検討する。
  • 塩浜協議会まちづくり委員会も交え、三番瀬のあるまちづくりを検討する。
(2)行徳内陸性湿地帯との連係
  • 三番瀬と行徳内陸性湿地帯とを開水路などで結びつける。
(3)市川市所有地付近の湿地再生
  • 現在の暗渠部の出口付近を自然再生の実験の場とする。
(4)より良い漁港
  • 漁港の移転
     1) 現時点ではとりあえず突堤ゾーンへ移転する。
     2) 漁港の移転場所は泊地と水産用地とを一体となって検討する。
     3) 水産用地は陸上で確保するよう努める。
  • 現在の漁港が移転された場合、人工澪を埋め戻すことは海域の環境面から望ましいとの意見が出されたので、海域小委員会で検討してもらう。
(5)猫実川河口
  • 猫実川の猫実水門から河口部の間で自然再生のための実験の検討を行う。
(6)鳥獣保護区との有機的な連係
  • 市川塩浜駅から三番瀬と鳥獣保護区への動線の確保をめざし、湾岸道路をまたぐような歩行者道路の確保を検討する。


●船橋WGの合意事項

(1)環境学習施設の検討
  • 可能な限り現在の建物等を活用する。
  • 生態系の学習ができる場、自然再生の体験学習ができる場、漁業や港町の歴史、文化が分かる場として、海浜公園全体を環境学習の場としていく。
  • 環境学習施設とそのコンセプトについて、小委員会で専門家の意見を聞きながら話し合う。
(2)船橋海浜公園と人工海浜の有効利用の検討
  • 海浜公圏全体について、自然再生の観点で見直し、利用の多いものは予算面からも残すことも含め、シーズンを通して集客が見込めるようにする。
  • 現在の海浜を十分活用する。
  • 護岸の景観向上、海との連続性を確保するため、海浜公園の前はマウンドにし、松林などとする。
  • 地域本来の植生を考えた景観づくりにつとめる。
  • 東浜地区の海浜植物群落を保護育成することとし、市で代替を検討し、野球場をなくしていく方向とする。
(3)護岸及び後背地の利用、あり方の検討
  • 護岸については、現在のままとする。
  • 港湾部分や周辺の企業庁用地(三角地等)の活用を図る。
(4)旧航路跡地前面の浅場(貝穀島等)の検討
  • 底生生物、稚魚、烏などへの影響を考慮し、航路跡地全体について漁業者の意見をききながら、また、海域小委員会の見解も聞いて深傷をなくすことを検討する。
(5)船着場としての可能性の検討
  • 船着場は実現不可能ではないようなので、経済面と環境も考慮し検討する。


●反対意見があるのに、シャニムに「合意」としてまとめる

 市川WGの合意事項のうち、「3点ワンセット」について、大浜清委員(千葉の干潟を守る会代表)は強く反対しています。
 大浜委員は、今回もこの点を問題にし、次のように述べました。
 「反対意見や異論があるものについて合意として処理していいのか。反対意見があったことを補足的に記述してもらいたい。合意事項とすると、少数意見が消されてしまう」
 しかし、何人かの委員から「(反対意見があっても)合意事項とするのは問題ない」という意見がだされ、強引に「合意事項」として処理されることになりました。
 ちなみに、これは、多数意見をなんとしてでも合意事項としてまとめたい倉阪秀史委員(アドバイザー)の意向にそったものです。倉阪委員は、大浜委員の主張に対し、「市川WGに属している者が市川WGのまとめについておかしいと言うのは、私には理解できない」とまで批判しました。
 しかし、この倉阪委員のやり方こそ理解できないものです。強い反対意見があるものを強引に「合意」(全員賛成と同じ)としてまとめるやり方は決して許されません。「合意」ではなく「決定事項」などとし、反対意見を付記すべきです。こんな最低限のルールがなぜ守られないのでしょうか。


●工業地域の用途変更がすべて
  〜三番瀬の保全・再生とは無縁〜

 市川塩浜地区では海岸保全区域が工業地域の後背地に設置されています。したがって、防潮堤もそこに築かれています。これを現在の海岸線、つまり工業地域の前面に移し、そこに強固な防潮堤を築くというのが市川WGの「合意事項」です。これについては大浜委員が反対してきましたが、今回は三橋福雄委員も強く疑問を提示しました。やりとりは次のとおりです。


◇三橋福雄委員(NPO法人不動産コンサルティング協会理事長)
「後背地の土地利用をどうするかがわからないのに、前面護岸の形を決めるのはおかしい。市川WGの議論内容をみると、市川市塩浜協議会まちづくり委員会(地権者)から、工業専用地域を用途変更して高さ100メートルの建物を建てるなどのイメージが出されている。高さ100メートルの建物といえば、住居(マンション)しか考えられない。結局、海岸保全区域を前面に移すというのは、そうしないと住居系の地域に用途変更できないからではないのか。そういうことを3点セットなどとしてまとめるのは、円卓会議にふさわしくないと思う」


◇倉阪秀史委員(千葉大学助教授、護岸・陸域小委員会アドバイザー)
「住居系をメインにした土地利用にはしないことになっている。しかし、まったく人が住まないとか、人がいない街にはしない。住居系をメインにしないというのは、小学校などは設置しないということだ」


◇三橋福雄委員
「人が住むようになれば、結局、小学校を建てたりしなければならなくなる。住居系にはしないというが、それなら、高さ100メートルの建物はいったい何に使うのか」
「佐藤委員に質問したいが、佐藤委員は、以前、この会議で、マンションなどを建てるつもりはないと言われた。話がちがっているようだが、どうなのか」


◇佐藤フジエ委員(市川商工会議所会頭)
「そんなことは言っていない。しかし、用途変更をしないと、マンションも建てられない。三橋委員は、工業専用地域はどうすればいいと考えているのか」


◇三橋福雄委員
「具体的には言えないが、後背地の土地利用は三番瀬の再生にふさわしいものにすべきだ。つけ加えると、市川塩浜地区の地権者たち(立地企業)は、海岸保全区域が後背地に設置されていることを前提に土地を購入したはずだ。住宅のあるところとないところは命の守り方が違う。このことは県も認めている」


◇落合一郎委員(市川市行徳漁協組合長)
「用途変更の話は、市川二期埋め立て(三番瀬埋め立て)計画の白紙撤回ということから生まれた問題だ。だから、この場でそんなことを議論するのはふさわしくない」


◇佐藤フジエ委員
「地権者たちは三番瀬にふさわしいまちづくりにしたいと考えている。この問題は、市川二期埋め立て計画やその白紙撤回と絡んでいる。三橋委員の話を地権者が聞いたら怒るところだ」


◇倉阪秀史委員
「今回の合意事項は、前向きな議論のなかでまとまったものだ」


 ご覧のように、市川塩浜地区に関する護岸・陸域小委員会の議論は、三番瀬の自然環境をよくするとか、三番瀬の保全・再生のために陸域をどのようにするかなどはあまり考慮されません。工業専用地域のままでは土地の価格が低く、転売や賃貸で儲けることができないので、なんとしてでも用途変更してもらいたい。そして、住宅などを建てられるようにしたい──というものです。これを批判すると、「地権者が聞いたら怒るところだ」などと恫喝します。これには、呆れてしまいました。

(文責・千葉の干潟を守る会)   







 

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