反対意見があるのに、
なぜ、無理やり「合意」として扱うのか
〜「住民参加シンポジウム」の成果がまったく生かされない〜
鈴木良雄
(2003年)5月29日に第13回三番瀬円卓会議が開かれた。会議では、市川側護岸に関する「3点セットの合意事項」をめぐって紛糾した。紛糾の内容は、大浜清委員(千葉の干潟を守る会代表)が反対しているにもかかわらず「合意」とされていることである。
大浜委員が、護岸・陸域小委員会や市川ワーキンググループ(護岸・陸域小委員会の下部組織)で「3点セット」に強く異論を述べていることは、会合に参加した人は誰でも知っていることだ。
〈護岸に関する市川ワーキンググループの3点セット「合意事項」〉
- 海岸保全区域を現在の水際線(海岸線)の位置に移し、幅をもった形で設定する。
- 護岸の高さは海に親しめるような高さ(6mくらいか)とすることを要望する。
- 自然再生の実験の場とする。
●少数の委員が強く反対しているものを
無理やり「合意」として扱ってよいのか
問題ははっきりしている。それは、一人や二人の委員が強く反対しているものを無理やり「合意」として扱ってよいのかということである。
大浜委員は、「3点セット」を市川ワーキンググループや護岸・陸域小委員会の「意思決定事項」として円卓会議(親会議)にあげることについては反対していない。ただ、「3点セット」そのものについて自分はどうしても納得できないから、「合意事項」ではなく、少数意見を付した「決定事項」あるいは「多数意見」として扱って欲しいと述べているのである。
これは、会議のあり方にかかわる問題である。論議をつくし、最終的には多数決で決めるという方法は別におかしくない。しかしその際、「合意」として扱うことに多数の委員が賛成すれば、合意にしてよいかという問題がある。それは許されることではない。あくまでも、多数決は多数決である。一部の委員が反対しているのに、「全員が賛成した」と多数決で決めることは許されないのである。
「合意」の意味を辞書で引くと、「意志が一致すること」と書いてある。だから、「合意」と扱われると、大浜委員もそれに賛成したことになる。
それをなぜ、倉阪秀史委員(千葉大学助教授)などは、無理やり「合意」として扱おうとするのか。
●「決定事項」などとし、少数意見を付記すればすむこと
第13回円卓会議では、清野聡子委員(東京大学大学院助手)が、「少数意見があったことを記載すればいい。この問題は、文章の書き方ひとつで解決できることではないか」とアドバイスした。これは、まったくそのとおりである。
「3点セット」を「合意事項」ではなく「決定事項」などとし、できれば少数意見があることを付記すればすむことである。これは、民主主義のルールである。こんな基本的なルールが守られないために、それをめぐって、何時間も、そして何回も議論がつづくというのが、三番瀬円卓会議のひとつの問題点でもある。
昨年11月、千葉県の主催で「今なぜ住民参加なの?──三番瀬円卓会議から政策提言型の民主主義・千葉モデル」と出した住民参加シンポジウムが開かれた。円卓会議のようなコンセンサス会議の運営方法などについて、その道の専門家などが話をしてくれた。しかし、じっさいの三番瀬円卓会議をみると、こうした勉強会やシンポジウムの成果がまったく生かされていない。
(2003年5月)
★関連ページ
- 護岸・陸域小委員会の「合意事項」をめぐり再び紛糾〜第13回三番瀬円卓会議(2003/5/29)
- 異論があるのに強引に「合意」としてまとめる〜第12回三番瀬「護岸・陸域小委員会」(2003/5/22)
- 三番瀬・市川塩浜地区の海岸保全区域移設問題(石井伸二)
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- 「自然が大切か、人間が大切か」〜三番瀬円卓会議に持ち込まれた“開発側の切り札”(公共事業と環境を考える会)
- 三番瀬「護岸・陸域小委員会」に県自然保護連合が再意見書(2002/9/12)
- 県自然保護連合が三番瀬「護岸・陸域小委員会」に意見書(2002/8/13)
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