三番瀬円卓・再生会議の欠陥をつく発言も

〜第20回「三番瀬再生会議」〜




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 (2007年)8月1日、三番瀬再生会議の第20回会合が開かれました。前回の会合(第19回、6月8日)で、浦安市埋め立て地の湿地再生や暗渠水路の開削化をめぐる議論が不十分だったことから、緊急に開かれたものです。
 議題は次の3点です。
    (1) 浦安日の出地区における自然(湿地)再生
    (2) 三番瀬再生実現化推進事業の検討組織等
    (3) 行徳湿地と三番瀬を結ぶ暗渠水路の開渠化


■「県の姿勢に憤りをもっている」

 (1)と(3)については、県が前回とまったく同じ見解を示しました。
 つまり、浦安日の出地区(埋め立て地)における湿地再生は、浦安市が0.2ha(2000m2)の干潟観察舎用地を確保してくれた。これが精一杯である。県がこのほかに湿地再生用を確保することは、県の財政状態からいって無理である。また、行徳湿地と三番瀬の海水交換能力を向上させるために暗渠水路を開削にすることは、水路の経路の土地利用状況から経費が多大になるため、早期事業化は困難である──というものです。

 委員からは、
     「土地利用計画案が決まる前に、なぜ再生会議に相談しなかったのか。県の姿勢に憤りをもっている」(後藤隆委員)

     「今回の一連の説明を聞いていると、県は腰がひけているという気がしてならない。地元市の意向を尊重するのは当然のことだが、それと県の関与は違うと思う。県の姿勢に懸念を抱かざるを得ない」(本木次夫委員)
 などの意見がだされました。しかし結局、日の出地区の湿地再生用地の確保も暗渠水路の開削化も不可能ということで県に押し切られてしまいました。


■「再生」目標などがあいまいなまま個別事業が進む

 三番瀬再生実現化推進事業の検討組織(仮称「三番瀬再生実現化試験計画等検討会」)の設置をめぐる議論では、三番瀬円卓会議や再生会議の致命的欠陥を突く重要な発言もだされました。三番瀬の再生を検討することが目的に掲げながら、肝心の「再生とは何か」とか「三番瀬をどういう環境にもっていくか」という根本問題があいまいにされているということです。
 そういう肝心要の問題をあいまいにしたまま、護岸改修工事とか、三番瀬海域(猫実川河口域)の干出域形成(=人工干潟化)の実験などが「三番瀬再生」の名でどんどん進んでいます。
 このことを何人かの委員が指摘しました。

◇後藤隆委員(公募)
     「私にとってすごく気になっているのは、(三番瀬再生事業が)非常に小さくなっていることだ。三番瀬の再生にとって目標の生物はどういうものかとか、生物の生活史とか、生態系における位置づけなどを議論して共通認識をもち、そのうえでどういうことができるかという大きな枠組みがないまま個別の事業がどんどん進んでいる。再生を全体としてどのように進めるかという本質的な問題の議論や検討をすべきだ。そうでないと、非常に問題になってくると思う」

◇清野聡子委員(東京大学大学院助教)
     「私も後藤委員と同じ意見だ。再生の目標生物をわかりやすく県民に提示し、共有することから着手しなければ再生は進まない。このことを過去に2回提起したができていないので、今後これを進めたいと思う」

◇大西隆会長(東京大学教授)
     「漁業者にとっての再生と一般市民にとっての再生、そして自然保護にとりくんでいる人たちにとっての再生は、それぞれ違っている。そこで、再生会議の中で議論しながら、そのへんのところを整理していくことが必要だ。その前提として、基礎的な整理が必要となる。評価委員会の中でもいちど議論してもらいたい。県もそれに協力してほしい」

◇吉田正人委員(江戸川大学教授)
     「円卓会議のときの反省になるが、本当は再生イメージワーキングでやったような話をいちばん最初におこない、どういう目標生物にもっていきたいのか、(三番瀬を)どういう環境にもっていきたいのかという話からはじめるべきだった。そうすれば、漁業者とも一致できた。しかし、青潮や護岸という緊急問題とか、いちばん対立点の多いところからはじめたために、将来的に合意できるところをさぐることができなかった。そこで、今後は再生イメージワーキングでやったことの続きをやってほしい。三番瀬再生実現化試験計画等検討委員会では、将来的な三番瀬全体の再生をにらんで広い視野で議論していかなければならないと思う。このままピンポイントの試験の話だけにしないでいただきたい」

◇竹川未喜男委員(千葉の干潟を守る会)
     「個別の問題だけでなく全体の問題を議論してほしい。事を急がずにしてほしい」


■本質的な議論を回避しつづけたのは会長ら

 まったくそのとおりです。三番瀬円卓会議も再生会議(円卓会議の後継組織)も、三番瀬をどのように保全・再生するかという、最も大事な根幹の部分をあいまいにしたまま個別の公共工事をどんどん進めています。「青潮対策の実験」と称して三番瀬海域の一部にエアレーションを設置してみたり、海をつぶす石積み護岸の建設を進めたりです。
 その一方で、三番瀬の自然がどうなっているかとか、三番瀬が東京湾の漁業や環境保全に果たしている大きな役割などは、あまり議論していません。
 また、三番瀬には、全国ワースト1の春木川やワースト3の国分川など、たいへん汚れた川が流れ込んでいて、流入河川の水質浄化が大きな課題になっています。ところが、この問題は一度も議論されたことがありません。そもそも、円卓会議や再生会議の委員の大部分は、流入河川の現場を見たことがないのです。

 今回の会合でだされた意見はそういう致命的欠陥をつくものでした。しかし、大浜清さん(円卓会議委員)や三番瀬保護団体などの再三にわたる要請を無視し、再生の目標とか、焦点となっている猫実川河口域の評価などの議論を回避してきたのは会長などです。
 自分たちの責任を棚上げにしておいて、「評価委員会の中でもいちど議論してもらいたい」などといういうのは噴飯ものといわざるをえません。
 今回出された意見が今後の議論に生かされるかどうかはまったく不透明です。





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