肝心な対策は棚上げ

〜三番瀬漁場改善策〜


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 (2010年)12月20日、第21回「三番瀬漁場再生検討委員会」が船橋市漁業協同組合の会議室で開かれました。この委員会は県知事の諮問機関です。三番瀬の漁場改善策を審議しています。
 議論されたことをかいつまんで紹介します。


◆アマモ移植は困難であることが確認
  〜「透明度を高めることが先」の意見も〜

 県は2003年から藻場造成試験(アマモ移植)をつづけています。場所は船橋側と市川側の2か所です。しかし、移植したアマモは毎年のように枯死です。県はこう報告しました。
     「播種、株移植によるアマモ場造成試験にとりくんだが、三番瀬では夏季の高水温(28℃以上)や透明度の低下からアマモは枯死し、通年の繁茂は困難であることが確認された」
     「現在の三番瀬の環境ではアマモの越夏は厳しい状況にあり、アマモ場の維持にあたっては、毎年度、株や種を移植する必要があるなど、事業効率が悪いことが改めて確認された」
 委員からはこんな意見がだされました。
     「水温が28℃以上で透明度が低いとアマモが育たないということがわかっているのなら、アマモ移植はやるべきでないということではないか。透明度を高めることを先にやるべきであり、そのほうが合理的である」


◆県がやろうとしているのは対処療法ばかり
  〜青潮・出水・塩素対策が緊急課題なのに〜

 今年9月に青潮(貧酸素水)が襲来した際、三番瀬のアサリは9割が死亡したとのことです。大野一敏委員(船橋市漁協組合長)はこう言いました。
     「県は青潮を防ぐ対策をしっかりやってほしい。“それは不可能”みたいなことを言うが、カネをかければできるはずだ」
     「三番瀬の漁業は、青潮と江戸川放水路からの出水によって甚大な被害をこうむっている〈注〉。きょうの報告では、江戸川放水路からの出水対策はまったくふれられかった。出水対策はやめたのか? 行徳可動堰を管理する国交省に強く働きかけてほしい」

      〈注〉江戸川放水路からの出水被害というのは、ふだんは閉め切られている行徳可動堰(放水路の上流部に設置)が台風時に開放されるため、淡水と汚泥が三番瀬に一挙に流入し、アサリなどの二枚貝を死滅させることです。

     「県は漁場改善策として、覆砂や人工澪(みお)の浚渫・開削をやるというが、これらは対処療法だ。そういうもので青潮の被害を防げるのか」
     「かつての三番瀬は真水が流れ込んでいたので、たいへん豊かだった。江戸川の真水を三番瀬に常時流すことを国交省に働きかけてほしい」
 大野委員は、3つの下水処理場(高瀬、西浦、茜浜)から塩素混じりの下水処理水が三番瀬に直接放流されていることも問題にしました。
 「塩素は生物に大きな影響を与えている。この対策も講じてほしい」と。


◆肝心な対策はやる気がなさそう

 ところが、県は言い訳や“逃げ”に終始です。青潮対策は「すぐにはできない」。行徳可動堰を管理する国交省に働きかけて江戸川放水路からの出水対策や真水の常時導入を講じることについては、「三番瀬再生会議のワーキンググループで検討中」──という具合にです。
 青潮が1回襲っただけでアサリの9割が死滅するのです。また、台風時に行徳可動堰が開放されれば、大量の淡水や汚泥が一挙に三番瀬に流れ込み、アサリなどに甚大な被害を与えます。これらの問題をなんとかしないと、覆砂や人工澪の浚渫・開削をしてもほとんど意味がありません。これは子どもでもわかることだと思います。
 ところが、県はそんな肝心な対策はやる気がなさそうなのです。
 肝心なことをやろうとせず、対処療法に終始──。そんな県の姿勢が浮き彫りになった委員会でした。





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