三番瀬公金違法支出訴訟の

提訴報告集会



トップページにもどります
「訴訟」のページにもどります




 三番瀬埋め立て計画をめぐり、県企業庁が金融機関を介して市川市行徳漁協の組合員に対して「転業準備金」の名目で約43億円を融資し、その利息56億円の支出を1999年度補正予算と2000年度当初予算に計上した問題で、埋め立てに反対する牛野くみ子さんら21人は、利息支出の返還などを求める訴えを2000年6月29日、千葉地方裁判所に起こしました。そして7月4日、「提訴報告集会」を船橋市内で開きました。
 報告集会には原告・弁護団など約50人が参加。「千葉の干潟を守る会」「三番瀬を守る会」など、三番瀬埋め立てに反対する市民団体や、知識人、専門家、環境保護運動家、ルポライター、一般市民など、多方面の人々が集まりました。
 集会では、原告団代表の牛野さんのあいさつのあと、弁護団事務局長の植竹和弘弁護士が訴訟の概要を説明。融資を決めた「三者合意」(契約)や県による利息肩代わりは、(1)契約自体が違法であり無効、(2)公有水面埋立法に違反、(3)地方自治法に違反、(4)地方財政法に違反、(5)計理手続き上も違法、と五重の違法行為であることを指摘しました。
 なお、訴状の内容については、三番瀬公金違法支出訴訟の訴状をご覧ください。









最初に、「三番瀬公金違法支出訴訟原告団」代表の牛野くみ子さんがあいさつ。牛野さんは、「地方分権が現実のものとなった今、これまでの千葉県のあやまった姿勢を明らかにし、正してゆかねば、県に未来はない」「自然を食いつぶして借金だけを子孫に残すことにならないようにしたい」「なんとしてでもこの裁判を勝ち抜くために、力を合わせましょう」などと述べた。








超党派の国会議員からなる「公共事業チェックを実現する議員の会」を代表して佐藤謙一郎衆議院議員(民主党。「議員の会」事務局長)が激励にかけつけてくれた。
 佐藤議員は、「この闘いは生態系を守る運動の先鋭的なもので、裁判の行方は全国各地の公共事業をめぐる市民運動に大きな影響を与える。注目していきたいし、議員の会としても協力していきたい」などと語りました。








この集会で「三番瀬公金違法支出訴訟を支援する会」が結成された。支援する会は、原告団や弁護団に協力して、裁判勝利のために広く世論に訴えたり訴訟費用の支援などをおこなう。
演壇で話しているのは、支援する会の代表に選ばれた桜井英博さん(千葉の干潟を守る会。早稲田大学教授)。








「県がやっていることの違法性がよくわかった。県の不正行為にはっきり審判を示そう」などと、奮闘をちかいあった。











原告団あいさつ






   私たちが裁判にふみきった理由

三番瀬公金違法支出訴訟原告団 代表 牛野くみ子



 本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。私は「三番瀬公金違法支出訴訟原告団」の代表になりました牛野です。
 私たちは、6月29日に21名の名をもって裁判所に訴状を提出しました。その内容につきましては、このあと、弁護団のほうから説明があります。

 私たちが裁判に踏み切った理由は、大きく分けて2つあります。
 一つは、裁判を通して、千葉県のこれまでのあやまった姿勢を正していきたいということです。
 すなわち、行徳漁協が「潮まわりが悪くなったので何とかして欲しい」と要求をしました。本来なら、漁場の回復・改善をし、水産業の振興をはかるのが県のつとめです。まして、三番瀬埋め立て計画は凍結中であるのに、県はお金をちらつかせて漁民を転業へと追いやりました。
 その先には、大規模埋め立てによる土地転がしや、土地造成に伴う利権という構造が待っているからです。東京ディズニーランドも例外ではありません。金権千葉といわれる所以です。が、こういった構図は断ち切らねばなりません。それには、埋め立てと手を切ることです。
 “過去に目をつぶるものは、将来においても盲目である”というのは、ドイツのヴアイツゼッカーの言葉ですが、不正やあやまちを知ったとき、黙っているのは、人間として生きている意味がないとさえ私は思っています。
 地方分権が現実のものとなった今、これまでの千葉県のあやまった姿勢を明らかにし、正してゆかねば、県に未来はないと考えます。

 そして二つ目は、三番瀬を守ろうということです。
 三番瀬は、東京湾で数少なくなった渡り鳥の渡来地として、世界中から注目されている湿地です。とくに、オーストラリア、ニュージーランドからわたってくるシギ・チドリ類。これらは、大半が泳げないのです。ですから、干潟、浅瀬が重要で、外国で手厚く保護されても、日本の干潟、浅瀬が開発の危機にあれば、鳥の減少につながります。
 いま、世界の動きは、すでに埋め立てたところの回復をはかるのが先決で、新たなる埋め立てはしないという方向にあります。このことは、昨年、コスタリカで行われたラムサール会議で、2000年には今まで埋め立てたところの面積の目録を提出すること、その3年後には現在の登録地を倍にするという「潮間帯湿地保全の決議」が採択されたことが証明しています。
 世界的視野で物事を進めていく千葉県にならないと、世界の恥となるでしょう。
 三番瀬の自然を守っていきたい。自然を食いつぶして借金だけを子孫に残すことにならないように。そんなことが、裁判に踏み切った二つめの理由です。

 千葉県民でないから原告になれなかった方、また、千葉県民であっても原告になる機会のなかった方は、どうか支援する会にお入りになってください。
 千葉県に立ち向かっていくという点では、原告団も、弁護団も、支援する会も一つです。
 なんとしてでもこの裁判を勝ち抜くために、力を合わせましょう。
 本日ありがとうございました。






メッセージ






   公共事業の闇の部分に鋭いメスを入れる突破口

日本湿地ネットワーク 代表 山下弘文



 三番瀬公金違法支出裁判の提訴に心から賛同いたします。
 自民党が大敗した総選挙後も、自民党を先頭に公共事業への闇雲(やみくも)な税金の投入は止まるところを知らないようです。
 海をめぐる開発は、漁民が漁業権を放棄すると、国民はほとんど法律的には対抗することができないという状態が続いています。だからこそ私たちは、あらゆる手段を駆使して、残された自然環境を保全することに全力をあげざるをえないのです。
 三番瀬開発問題をみると、開発側のなりふりかまわぬ実態が明らかになっています。千葉県のやり方は、法律的にいっても違法であり、かつ、不当なもので、問題が多いことはだれの目にも明らかです。
 今回の公金違法支出裁判は、市民の当然の権利である監査請求の却下にもとづく提訴であり、公共事業の隠された重要な闇の部分に鋭いメスを入れる突破口を開くものになると信じます。
 全国各地の「自然の権利裁判」に続いて、こうした裁判が始まったことは、私たち国民が、たとえ負け続けたとしても、決して抵抗を止めないという心意気を、政府や自治体に見せつけることになると思います。
 東京湾に残された貴重な干潟生態系を保全するために、ぜひ全力をあげて闘ってください。
 集会の成功を心から祈念してメッセージに代えます。




   三番瀬の保全を大きく前進させる力に

博多湾の豊かな自然を未来に伝える市民の会
事務局長 堀 良一(弁護士)


 提訴報告集会にお集まりのみなさん。
 わたしは、福岡の博多湾にある和白干潟を守る運動に従事している弁護士の堀といいます。
 三番瀬も和白も、日本の干潟が無駄な公共事業によって破壊されようとしている事例の典型です。そういう意味で、三番瀬の問題はずっと関心をもって見てきました。
 和白では、すでに人工島埋め立て工事が着工され、現在、地元では湿地再生の観点からの運動をねばり強く繰り広げています。
 和白では、人工島埋め立てへの公金支出差し止めの住民訴訟を提起し、1997年3月に判決がおりています。この裁判では、差し止めの結論を勝ち取ることはできませんでしたが、判決は、「その内容において決して軽視することのできない問題点があるものといわざるを得ない」などとアセスメントのあり方などを厳しく批判し、結論として、「この際、本件整備事業を抜本的に見直すというようなことさえ一つの政治的な決断として考えられないではない」と異例の指摘をしました。
 この判決は、その後の運動の大きな根拠を与えました。
 皆様方の裁判が、より大きな成果を勝ち取り、三番瀬の保全を大きく前進させる力となることを願ってやみません。




   非公共的・反社会的な行為に鉄槌をくだすもの

藤前干潟を守る会 代表 辻 淳 夫


 大先輩である千葉のみなさまの粘り強い、そして、より問題の本質をとらえた運動に深い敬意と共感を覚えています。
 私たち人間が、もっとも大切な糧を得てきた海、そして幸ゆたかな内湾は、それゆえに、その保全こそ、最も高い公共性をもつはずです。しかし、東京湾をはじめ、過去の乱開発の歴史は、自治体自らが不動産屋になり、公金を使って、公共財である海の破壊と私権化を進めてきたことを明らかにしています。
 このたびの三番瀬ヤミ補償裁判は公共性の名のもとに行われた、非公共的・反社会的な行為に対して、市民みずからが、鉄槌をくだそうというもので、日本社会のなかに蔓延している幾多の理不尽な公共事業を正すことにつながると考えます。
 藤前干潟も、みなさまのお力を得て、正しい社会のありように気づいた世論の力で守られました。しかし、伊勢湾と、それにつながる川や森の破壊は依然として続いており、「公有水面埋立法」のような、時代遅れなしくみは、いま現在も生きつづけています。そうした状況を一日も早く、市民みずからの手でつくりかえていくために、私たちも、心からの連帯と支援の気持ちを表明いたします。




   三番瀬問題の歴史に光りをあてることは非常に意義がある

ルポライター 永尾俊彦


 最近の三番瀬問題についての行政、マスメディア、一部市民団体の論議は歴史的視点が弱いように感じます。いかに漁民が海から追い立てられていったか、三井不動産をはじめとする大企業が、いかに埋め立てで大儲けし、みんなの海を私物化したか、それを千葉県がいかに手助けしたか、などの埋め立ての罪深い歴史の反省なく、環境面の是非のみが論じられる傾向があるのではないでしょうか。
 その意味で、「三番瀬公金違法支出訴訟」で三番瀬問題の歴史に光りをあてることは非常に意義があると思います。皆様のご健闘を祈念いたします。










 ★「三番瀬公金違法支出訴訟支援する会」の入会案内 ★


 ●目 的:三番瀬公金違法支出訴訟を支える

 ●活 動:原告団の活動を支援し、広く世論に訴える。
      (1) 裁判の傍聴
      (2) 訴訟費用の支援
      (3) その他

 ●構 成:会の趣旨に賛同する個人および団体で構成する。

 ●会 費:年額 個人  1口  1000円
         団体  1口  2000円

 ●連絡先(事務局)
     〒261-0003 千葉市美浜区高浜6−5−4
                      鈴木恵子方
           TEL 043-278-5607

     Eメール:sanbanze@ma2.justnet.ne.jp 
           (千葉の干潟を守る会)



★関連ページ

このページの頭にもどります
「訴訟」にもどります

トップページ | 概 要 | ニュース | 主張・報告 | 行政訴訟 |
資 料 | 自然保護連合 | リンク集 |