「幕張の浜」見学記
千葉の干潟を守る会 杉本秀樹
幕張の浜をまだ見たことがなかったのと、天然の干潟と比較したいということで、見学にいった。
浜に着いた最初の印象は、外房の海岸に似ていることだった。風が強い日で波が荒かったので、よけいにそう見えたのかもしれない。
傾斜がきつい浜は、波打ち際からゆるやかになり、100メートルにつき2〜3メートルの勾配に見える。それでも海に入ってみると、足元の砂が波で流されて足がだんだんと沈んでいく。波による浸食はかなりのものらしい。毎年、大金をかけて砂を補充しているそうだが、なるほどと納得できた。
その砂も山砂だそうで、目が粗く、三番瀬のものとはかなり違う。底生生物がいるようには思えないが、試しに掘ってみると、やはり何もいなかった。転がっている石を拾ってみたが、フジツボが付着していないのが不思議だった。三番瀬では、干潟に異物があると、ほぼ1年でフジツボやイソギンチャクなどが飽和状態になるほど付着する。海水が違うわけではないので、波や潮流、また砂の補充などの物理的・人的な撹拌が原因かもしれない。
浜に埋もれていた流木を持ち上げると、その下にヒメハマトビムシが2匹隠れていた。ノミのような形で、ふだんは砂の中に住み、打ち寄せられたアオサを食べる虫である。見たのは結局、それだけだった。振り返ると、波の上をコアジサシとアジサシが風に逆らって飛んでいった。
風土に似つかわしくない風景と言ったらいいだろうか。経済力にものをいわせて建造した人工の自然が、いま、歴史の波に洗われているようである。それは、かつての幕張の浜が自然の中で果たしてきた水質の浄化という役割を担うものではない。そんなことを考えていたら、幕張の高層建築群がゴシック建築に見えてきた。指向した神は経済の神である。
(2000年9月)
写真に写っている浜は、昨年まで海水浴場として一般開放していた部分である。
背後の建物は、幕張新都心の高層ビル群。
★関連ページ
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