船橋市の下水道事情

〜『市民の目からみた船橋市政白書』より

公共事業と環境を考える会

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 レポート「海老川の水循環と生物多様性をめぐって」で船橋市の下水道整備がたいへん遅れていることを書きました。
 そこで、同市の下水道事情を知っていただくために、船橋市役所職員労働組合が発行した『市民の目からみた船橋市政白書 第4版』から転載させていただきます。
 同書には、こんなことが書かれています。
  • 2002年3月末現在の下水道整備状況は、人口普及率で44.5%であり、関係者の努力で工事は急ピッチで進められているが、計画通りにいっていないのが実状。

  • 下水道整備事業に対する市からの繰入金と起債は事業費の30%以上を占め、一般会計からの繰出金と下水道債の累積額の返済が、市財政ひっ迫の原因の一つとなっている。

  • 人口が減少するなどということは、20年前には予測すらできなかったこと。そのため、現在の下水道整備事業は、現状と乖離((かいり)した計画で進められている。

  • 公共下水道の供用が見込めない地域に対しては、合併浄化槽の普及推進に力を入れたまちづくりを進めていく必要がある。

 「公共下水道の供用が見込めない地域に対しては、合併浄化槽の普及推進に力を入れたまちづくりを進めていく必要がある」というのはまったくの正論です。そういう見直しをしなければ、船橋市の下水道整備は、あと何十年たっても計画どおりにいかないでしょう。
 海老川も汚れたままです。水循環再生も生物多様性回復も絵に描いた餅です。「市民一人ひとりが汚さない努力をしましょう」とキャンペーンされても、市民にできることには限度があります。

 以下は、白書からの抜粋です。

(2007年8月)






船橋市役所職員労働組合発行『市民の目からみた
船橋市政白書 第4版』(2003年1月)より抜粋


    〔船橋市の下水道事業〕

      大きな財政負担と人口減時代の下水道事業の課題


    ●下水道普及率が遅れた原因

     船橋市は東京に近接しているため、昭和30年代後半から人口流入が急激に進み、山林や田畑等が宅地化され、大量の雨が降ると低地部に水害が頻発していました。また、家庭からの雑排水による水源地や海・河川の汚濁も目立つようになりました。
     そのため、市は1961(昭和36)年6月に下水道条例を制定し、下水道事業に着手しています。しかし昭和30年代後半から50年代半ばころまでは人口増が続いたため、市財政の多くを学校建設や保育園、ごみ処理施設、道路整備等に投入せざるを得ず、下水道整備は近隣他都市と比べて遅れた状態のまま今日を迎えています。

    ●現在の普及率44.5%

     市の下水道整備計画は、1978年3月に決定された「船橋市下水道全体計画」に基づき、市域面積8564haのうち6973ha(81.4%)、処理計画人口67万3000人分を処理可能なものにするとなっています。現在その計画に基づき、市内を5処理区に分けて整備を進めています。すべてが整備されるのは2010年とされています。しかし、2002年3月末現在の整備状況は、人口普及率で44.5%であり、関係者の努力で工事は急ピッチで進められていますが、計画通りにいっていないのが実状です。

    ●莫大な費用がかかる下水道整備事業

     下水道整備事業は、地下に本管(大きなものでは直径数メートル)・枝管の埋設や汚水桝(ます)の設置、また終末処理場を建設するため莫大な費用がかかります。そのため、その整備を市の一般会計予算で行なうのは無理があるため特別会計で行なわれ、63年の事業開始以来、整備5カ年計画に基づいて行なわれています。

     この間、どのくらいの事業費が使われたか調べてみると、1962〜2001年度の40年間で約600億円となっています。そのうち、国からの補助金は18%(01年度予算)くらいで、その他は一般会計からの繰入金と借金(下水道債)・下水道使用料等です。
     しかし、何といっても市からの繰入金と起債が事業費の30%以上を占め、一般会計からの繰出金と下水道債の累積額(00年3月現在)の返済は、市財政ひっ迫の原因の一つとなっています。

    ●人口減と今後の下水道事業の課題

     遅れていた船橋市の下水道整備は、平成に入ってからの十数年間の努力で、現在では40%台まで普及しました。二十数年前に決定された「下水道全体計画」では、2010年の最終年度に67万3000人分を処理するとされています。しかし、00年4月に策定された「船橋市新総合計画」では、2020年の人口は51万3000人と推定されており、現在55万人の人口は今後緩やかに減少していくと予測しています。
     人口が減少するなどということは、20年前には予測すらできなかったことです。そのため、現在の下水道整備事業は、現状とかい離した計画で進められるものとなっています。

    ●未処理地域に対する方策は

     公共下水道の普及により、汚水・雑排水が終末処理場で浄化されて放流されることは環境の改善に寄与します。しかし、この先長い期間、公共下水道の供用が見込めない地域に対しては、合併浄化槽の普及推進に力を入れたまちづくりを進めていく必要があるのではないでしょうか。


    〔船橋市の財政危機の原因〕

    ●公営企業会計等への繰り出しの増加

     公営企業、とりわけ下水道事業の起債残高は増加を続け、00年度ついに一般会計の起債残高を抜きました。普通会計から下水道事業への繰出金累積は99〜01年度で920億円です。国の補助率が、管きょ敷設費用は4分の3から86年度に3分の2、01年度から2分の1に削減された影響も大きいです。
     02年3月末の下水道普及率(人口比)は44.5%です。11年後、下水道事業債の返済はピークに達し、下水道だけで年100億円の返済が5年続く見通しです(財政課の話)。






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