〜この国家はとんでもないペテン国家〜
公共事業と環境を考える会
ルポライターの鎌田慧氏が、自著『心を沈めて耳を澄ます』(創森社、2008年7月発行)で、成田空港問題についてこう書いています。
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《政府はかつて、三里塚の農民にたいして、これまでの権力をカサに着たやり方を反省し、謝罪し、対等に話し合うことを約束したはずだ。それがただ、第2期工事を進めるための偽計だったとしたなら、この国家はとんでもないペテン国家ということになる。》
■「話し合いによる解決」はペテンだった
〜成田空港問題のシンポと円卓会議〜
そのとおりです。1991年秋から3年あまり、成田空港をめぐって公開シンポジウムと円卓会議が開かれました。
その中で、運輸省(現国土交通省)は過去のやり方を謝罪しました。また、未買収地の強制収用を断念するとともに、「話し合いによる解決」を打ち出しました。
しかし、それは、反対派農民をだまし、懐柔するための策略でした。
成田空港反対同盟が2006年8月に撒いたチラシにはこう書かれています。
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《現在、空港会社は地元住民の声を押しつぶして、滑走路を北に伸ばす計画を進め、「へ」の字も直線化しようとしています。「強制的手段による空港建設はやめる」と公約した国と空港会社が、ふたたび力ずくで農地をとりあげようとするのが今回の事態です。》
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《一部の反対派農家と国が話し合いの席に着いた成田空港問題シンポジウム、同円卓会議で、国はそれまでの強制的な手法を謝罪した。しかし、国側は円卓会議に出した調査団の「所見」(1994年)に「平行滑走路の整備は必要という運輸省(現国土交通省)の方針は理解できる。ただし、用地取得は話し合いにより行う」との文言を盛り込むことを反対派農家にのませた。反対派農家は「これで平行滑走路はできない」と信じたが、国はその後、新滑走路計画を発表。農家にとってまさに「寝耳に水」だった。》(『東京新聞』千葉版、2002年5月2日)
《空港会社は先月、国に北延伸建設の許可を申請し、9月にも着工する構え。住民合意のないまま“見切り発車”の着工となる可能性もあり、成田市が独自の案を出すなど、ぎりぎりの調整が続いている。(中略)
空港会社は先月10日、住民との合意のめどが立たないまま、国土交通省に飛行場変更申請に踏み切った。黒野匡彦社長は、滑走路の2009年度末の運用スタートは「事実上の国際公約といえる」と指摘。「これ以上合意を待っていては間に合わなくなる」と訴える。》(『東京新聞』千葉版、2006年8月20日)
■千葉県も三番瀬で偽計を駆使
千葉県(堂本知事)も、そういうペテンを三番瀬で駆使しています。
三番瀬埋め立て計画を2001年9月にいったん白紙撤回し、自然保護団体や県民を安心させたうえで、さまざまな偽計や懐柔策を駆使し、三番瀬の一部(猫実川河口域)を埋め立てようとしているのです。
かつての埋め立てと違うのは、「埋め立て」という言葉を用いずに、「自然再生」とか「里海再生」という詭弁を弄したり、意味を逆転させた「生物多様性の回復」などの言葉を使っていることです。
その内実は、猫実川河口域を埋め立てて人工干潟をつくり、その下に第二東京湾岸道路(有料高速道路)を通そうとするものです。ですから、本質はかつての101ヘクタール埋め立て計画と同じです。
私たちは、堂本知事が2001年9月に埋め立て計画を白紙撤回したときから、こういうネライがわかっていました。知事は就任当初から、「埋め立て計画は撤回するが、第二湾岸道路はつくる」「(猫実川河口域は)手を付けざるを得ない」ということを言い続けていたからです。
ですから、知事が2002年1月に発足させた「三番瀬円卓会議」についても警鐘を鳴らし続けました。
円卓会議は、当初から最後まで、猫実川河口域の人工干潟化が最大の争点でした。三番瀬や東京湾の環境を悪化させている流入河川の汚濁負荷削減などはまったく議論されませんでした。船橋漁協の漁業者たちは三番瀬漁業の恒久免許化(現在は1年更新の短期免許)を求めていましたが、そんな問題もいっさい議論なしです。
そのため、私たちは円卓会議の運営や議論内容をきびしく批判しつづけました。(くわしくは「三番瀬円卓会議」を参照)
その批判は的を射ていたと確信しています。その後の展開をみると、猫実川河口域の人工干潟化に向けた事業が着々と進んでいるからです。
県(堂本知事)の本当のネライは、猫実川河口域に第二湾岸道路を通すことです。それをきちんと見抜くことが大切です。
(2008年7月)
★関連ページ
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