千葉県自然保護連合事務局
三番瀬再生計画素案の中でいちばん問題なのは、市川市塩浜2丁目の直立護岸を改修して、海に大きく張り出した石積み護岸をつくる。そして、その前面に土砂を投入して「干出域」をつくるということです。パブリックコメントもこの点に批判が集中しました。
しかし、現時点では、環境派委員の吉田正人委員(日本自然保護協会常務理事)らもこれに賛成しているため、このままでは土砂投入がそのまま最終案に盛り込まれそうです。
●アセスとモニタリングの実施に期待するのは甘い
吉田正人委員は、船橋市で11月27日に開かれた三番瀬再生計画素案説明会で、この土砂投入について別記のように説明しました。土砂投入に対する参加者からの疑問に答えたものです。
吉田委員は土砂投入について、環境アセスメントとモニタリングを実施すると素案に明記されているので大丈夫、という趣旨の説明をしています。
しかし、はっきり言ってこれは甘い考えです。県は護岸改修や土砂投入の予算を国交省に要求しています。それが確保されたら、もう実施です。環境アセスメントやモニタリングをおこなうといったって、それは事業者(県)がやります。吉田委員が期待するようなことが本当にできるのでしょうか。
そもそも、公共事業を途中で止めることは、今のシステムではかなり困難です。いったんもらった予算を国交省に返すというのも不可能に近いというのが実態です。そんなことは国交省がなかなか認めません。
また、吉田委員は、県が国に要求したのは調査予算だと言っていますが、これも甘いと思います。堂本知事は、先の12月県議会で、「市川塩浜の護岸改修はすぐに実施したい」と明言しています。
●約150回におよぶ円卓会議の議論はなんだったのかとなる
そもそも、いったい何のために土砂投入をするのかが明確にされていません。“はじめに土砂投入ありき”です。環境アセスメントやモニタリングが実施されるはずだから大丈夫だなどと甘い考えでそれを認めたら、とりかえしのつかない事態をまねきます。130回以上におよぶ三番瀬円卓会議の議論はなんだったのか、さらに、長年にわたる三番瀬保全の運動はなんだったのかとなります。
吉田委員らには再考をお願いしたいと思います。
《三番瀬再生計画素案の船橋説明会の議事録より抜粋》
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議事録は千葉県庁のHPに掲載されています。
【吉田正人委員の説明】
やはり護岸の部分がいちばん懸念事項としてあると思います。しかし、素案の151ページに、順応的管理の前にアセスメントとモニタリングを実施するということが課題としてはっきり書いてあります。これまで書いてあればちゃんとやらざるを得ないのだろうなと思います。
つまり、たとえば自然に配慮した設計を行っている類似の事例を視察する。それから、簡素化、シミュレーションなどによって得られた科学的知見にもとづいて検討する。さらに、現在の自然環境を悪化させないことを最優先としつつ、砕波帯をつくるなどの自然環境の改善に寄与する構造とする努力を行う。こうしたことが109ページの図面(護岸のイメージ)では表現できていないようなところ をかなり言葉として書いてあると思います。
その下にも石積み護岸となる部分では砂泥地の基礎による影響、素材の選択の影響、砂を入れる場合のどこの砂をどのように、どのぐらい、どこに入れるか、そういったことをいくつかの案を比較検討する。それから、透水性が鋼矢板によって絶たれている部分についても透水性を確保する方策も検討する。ほとんど無理難題という感じのものをいっぱい書いてあります。これをきちっとやるというなので、相当な課題がこの護岸にはくっついているということだと思います。
ですから、これをきちっとやっていくということです。先ほどHさんのほうから、1.7キロの護岸改修予算が要求でつくのではないかという意見がありました。しかしこれは、国に対して予算要求していますが、それは調査していくという予算です。その中でこういったことも解決することも含んだ調査をしていただくということを、委員としては期待したいと思っております。素案からもそういうふうに読み取れます。
(2003年12月)
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