〜テレビ朝日「ニュースステーション」〜
千葉県自然保護連合事務局
1.はじめに
9月2日のテレビ朝日「ニュースステーション」が三番瀬のアマモ移植実験を放映しました。タイトルは「環境立国(13)甦れ!海の草原」です。水中リポーターの須賀潮美(すがしおみ)氏が現地報告しました。
●「アサリ漁獲高が10分の1に落ち込んでいる」はウソ
〜今年は十数年ぶりの豊漁にわいている〜
「ニュースステーション」の放映は事実を歪曲しています。
ひとつは、アサリの漁獲高が10年前の10分の1に落ち込んでいるという点です。須賀氏はこう述べました。
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「2001年、千葉県は三番瀬の埋め立て計画を白紙撤回しました。しかし、手放しでは喜べません。渡り鳥の姿は激減し、名産であるアサリの漁獲高も10年前の10分の1に落ち込んでいます」
●アマモ移植によってアサリの稚貝がわいた?
したがって、アマモ移植によってアサリの稚貝がわいたというのもウソです。須賀氏はアサリの稚貝を水中カメラで映し、こう語りました。
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「三番瀬に40年ぶりにアマモがよみがえりました。(中略)アマモの根元には小さなアサリの稚貝がわいていました。移植されたアマモは三番瀬に豊かさをもたらしはじめています。わずかなアマモだが、なんと2カ月で江戸前の魚が定着しました」
●「猫実川河口付近は環境の悪化が著しい」も大ウソ
〜近年は非常に安定した環境にある〜
つぎは、猫実川河口域(三番瀬の市川側)の評価です。須賀潮美氏はこう言いました。
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「猫実川河口付近は環境の悪化が著しく、このままの状態が続けば、さらなる悪化が懸念されます」
それでも、自然の豊かさを維持しています。ハゼの子どもなどがたくさん泳ぎ回っていて、稚魚の楽園となっています。魚のエサとなるアミ類なども泳ぎ回っています。市民調査では、アナジャコの穴もたくさん確認されています。それほど、ここは生命力豊かな浅瀬です。
そして重要なことは、91年に下水処理水の放流先が旧江戸川に変更されて以降(大雨時は今も猫実川河口域に放流)、この海域の環境は安定していることです。
県の補足調査を手がけた県立中央博物館副館長の望月賢二氏は、この海域についてこう述べています。
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「補足調査の委員会は、猫実川河口周辺がマイナス的な存在であるという認識は全く持っていない。(中略)特に猫実川河口周辺、あそこがヘドロの堆積、有機物の堆積等で今どんどん悪くなっているのだという発言があるが、補足調査のほうでまとめた三番瀬の推移のデータから見ても、少なくとも平成に入った前後からそれ以後は全体としては非常に安定した環境にある。ということで、補足調査のまとめの中でも、いろいろなデータを使って、かなり安定した状況にあると実感しながら進めた経緯がある。そういう意味で、今後、周辺の状況等が大幅に変わらないかぎり、あの自然環境はある程度安定した状態で推移するということは、補足調査全体のデータを見ていただければ理解いただけるのではないかと思う」(千葉県が設置した「環境調整検討委員会」にて)
「猫実川河口域はつねに議論されるが、ここは、底泥データでみると平成に入ったあたりからほぼ安定している。この部分は三番瀬の水生生物の最後の生き残りの部分になっている。こういう点では、非常に貴重な部分である」(第7回三番瀬専門家会議にて)
「(三番瀬は)水循環系の仕組みが失われたため、放置した場合、大部分が中長期的には砂浜海岸化するとともに、それに対応した生態系に移行する可能性が高い。ただし、猫実川周辺は、波や流れの点での静穏性が高いことから、泥質域として維持され、干潟特有の生き物の生き残り場所になる可能性が高い」(同)
●「魚の姿はみあたりません」に呆れる
須賀氏は猫実川河口域にもぐり、こう述べました。「魚の姿はみあたりません」と。
冗談ではありません。この海域は、ハゼやスズキ、フッコなどの魚やカニがたくさん採れます。ハゼ釣りやカニ釣りのメッカとなっていて、土曜や休日はたくさんの家族連れがやってきます。
たくさんの魚がいることは市民調査でも確認されています。
それなのに、須賀氏は「魚の姿はみあたりません」と言い、この海域には魚がいないことを印象づけました。正直いって、須賀氏がここまでヒドイとは思いませんでした。
◇ ◇
須賀潮美氏はともかくとして、「ニュースステーション」にはがっかりしました。無知や意図的誤認を充満させたリポートを事実確認もせずに放映したからです。
おまけに、須賀氏のリポートのあと、コメンテーターは「こういうのをどんどん公共事業でやったらよい」と述べました。「ニュースステーションもこの程度か」というのが率直な感想です。
これを見て、本多勝一氏(ジャーナリスト)の次の言葉を思い浮かべました。
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「ジャーナリズムの堕落や退廃は、事実の無視あるいは意図的歪曲からまず始まる。戦争中の『大本営発表』新聞時代を考えるまでもなく、こんなことは今さら強調するのもおろかであろう」(本多勝一『事実とは何か』朝日文庫)
(2003年9月)
須賀潮美氏は猫実川河口域にもぐり、「魚の姿はみあたりません」と言いました。しかし、実際には、ハゼの子どもなどがたくさん泳ぎ回っていて、稚魚の楽園となっています。魚のエサとなるアミ類なども泳ぎ回っています。
水中を網ですくうと、たくさんのアミがかかります。アミは魚の大切なエサとなっており、この海域が魚の大切な成育場となっていることを実感できます。
大潮のときに現れる干潟の周辺は水がたいへんきれいで、透き通っています。穴から顔を出しているのはハゼのようです。
巣穴を「コアサンプラー」で採取すると、アナジャコを何匹も採取できます。
★関連ページ
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